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スーパースポーツで車体を深くバンクさせずに楽しむには?【教えてネモケン071】

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A.タイヤを潰す操作で曲がる能力と安定性を生かして走ろう

スーパースポーツで主に
ワインディングを楽しんでいます。
公道では無理しませんが、
たとえば浅いバンク角の走りを楽しみたいなら
どんなことを意識するといいでしょうか?
ネモケンさんがワインディングを走るとき
どこに楽しさを見出しているのでしょうか?

タイヤがスリップしないエンジンの回転域を活用する

ワインディングでは、膝を擦るほどフルバンクしてのコーナリングは自殺行為です。通い詰めてすべてのコーナーに慣れているからと、攻め続けるのもNGなのはいうまでもありません。万一スリップダウンしたら、対向車も来るし壁に激突か千尋の谷へ真っ逆さま……そんな末路、バイクファンとして全面否定ですよネ。

しかしスーパースポーツで走るのなら、その最高峰ならではのパフォーマンスを楽しみたいと思うのは当然のことでしょう。ではトップエンドのコーナリングマシンは、フルバンクで限界時の旋回力だけが他と差のつく部分なのでしょうか。もちろん、そうではありません。

軽量なため鋭いリーンや、ワイドでハイグリップなタイヤと高性能なサスペンションによるコーナリングポテンシャルに関心がいきがちですが、ボクに言わせればむしろエンジン特性、それもパワーバンドを下回る低い回転域でのトラクション特性にこそ、他のカテゴリーのバイクに思い切り差をつけるとっておきのポテンシャルが存在するのを忘れてはなりません。

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最新スーパースポーツのポテンシャル

最先端テクノロジーを満載する最新のスーパースポーツが本領を発揮するのはやはりサーキット。しかし、公道で多用するエンジンの低回転域においても、他のカテゴリーに差をつけるポテンシャルを秘めている。写真は2021年11月のミラノショーでヨーロッパ向けモデルとして発表された2022年型のホンダCBR1000RR-R FIREBLADE 30th Anniversaryだ。誕生30周年を迎える同社のスペシャルモデルであり国内販売も予定されている

スーパースポーツは最高出力や最高速度にフル加速といった、絶対性能至上主義で開発されていると思われがちです。ところがMotoGPなどレースシーンで実証されたのは、タイヤが滑らないようトラクションコントロールが介入すると、大事なコーナリングで曲がれる能力まで損なってしまうということ。

つまり旋回しつつタイヤを路面に押し付けながら曲がれる能力と安定性を高めるトラクション効果は、ホイールスピン(タイヤの空転)しないギリギリにしか効率の良さが存在しないのです。

これは電子制御が介入しない回転域で、ライダーが感性でコントロールするのがベストです。そうなればなるほど、旋回初期に閉めていたスロットルを、再び開けて加速のトラクションへ切り換えた瞬間に、唐突でなくスリップのきっかけを与えないスムーズかつすぐ路面を蹴る明確なレスポンスが要求されることになります。

そしてそれは低いギヤを使う低速コーナーほど5,000rpmといった絶対にスリップしない回転域の特性が大事……。ひと昔前には考えられなかった、低回転域でのトルク特性やデリケートなスロットルレスポンスこそが、ハイエンドのスーパースポーツほど高い次元で配慮されている時代なのです。

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浅いバンク角で操る楽しさを味わう

最新スーパースポーツには、コーナーを攻めずとも楽しめる、操作性に優れた低回転域からのトルクがある。その回転域を上手に使って、浅いバンク角のままタイヤに面圧をかけ続けるライディングを試してみよう。操る楽しさを満喫できるはず

ジワッと入力を変化させる繊細な操作を駆使する

そしてこの領域を使いこなせば、一般公道のような路面グリップと速度域では、トラクションで絶えずタイヤを路面に押し付けているほうが、曲がれる能力と安定性を両得できる走り方となるのです。

バンク角は安全マージンのある範囲内で、いかにタイヤを路面に押し付け続けられるか……。一般公道のワインディングでは、ボクはブレーキングでも唐突にならないジワッと入力を変化させるコントロールで路面との関係を強めて乗ります。

そしてブラインドの向こう側で曲がり方が変わろうとも、減速や加速に身体の重心のあずけ方ですべて対応しきれるペースが保てるよう、これまでの経験を生かした走りに徹する醍醐味を楽しんでいます。

Photos:
本田技研工業,折原弘之