前輪へ覆い被さる姿勢になってないかチェック!
まず前輪から滑って転んでる人は、実は意外に多くいません。停車寸前に砂や濡れた路面に足をとられたりと、ほとんどが低い速度でバランスを失っている状況。30km/hもでていれば、オイルに乗ったとか特別なことがないかぎり、前輪から滑ることは滅多にありません。
ご存じのように、オートバイはハンドルを切って曲がる構造とは違います。後輪が傾いて旋回する軌跡に沿って、前輪が同心円の外をトレースする、いわば支え棒の役割をしています。
なので、ブレーキをかけているとき以外に、フロントタイヤには大きな負荷がかかることはないのです。
しかし車体がスムーズに曲がるために機能しているセルフステアを思いきりハンドルに力を入れるなどして妨げると、思うように曲がらない、もしくはそれをきっかけにフロントタイヤからスリップダウンする可能性はあります。
これが基本的な条件なので、何となく前から滑りそう……という感触や気持ちはとてもわかるのですが、滅多に起きない前提で、そう感じてしまう状態の改善から考えましょう。
一番ありがちなのが、ヘアピンのような小回りで低速のカーブが、下り坂の途中だったりした場合。これだとハンドルに体重が覆い被さるカタチでチカラが入りやすくなります。
しかもハンドルからの情報が曖昧で、小さな路面の凸凹など詳細が伝わってきません。不安になる条件が揃っているのです。
何度もお見せしているオートバイが旋回できる原理で、前輪は後輪が傾いて曲がる旋回軌跡の外側をなぞるように同心円を描きながら追従していきます。これをセルフステアと呼び、ハンドルを引っ張ったり押したりのチカラが加わると、前輪の素直な追従が妨げられ、思ったより曲がらない状態に陥ります
オートバイのフロントフォークが斜めに設定されているのは、この傾きで前輪が直進時は常に前を向く復元力(真っ直ぐな位置が一番遠い)と、ちょっとでも車体が傾くと促されて舵角がつくのも斜めになっているから。その復元力の強さや曲がるときの舵角の追従性などを、フォークの取り付けクランプでオフセット量を調整しています
アウト側下半身で車体ホールド、手はフリーでバンクせず曲がりましょう
前輪側へ体重が覆い被さらない姿勢をとったら、アウト側のステップを気持ち前に蹴るようチカラを入れて、太ももは後ろへ押されるときのシート面とのグリップ、さらにはタンクのニーグリップ側面に膝頭でグリップできる、3箇所で下半身をホールドします。
こうすることで、多少の下り坂でもハンドル持つ両手からチカラをぬくことはできます。
そして曲がりたい箇所で、車体を傾けるのではなく、カーブで内側になる上半身の脇腹を中心にダラッと脱力します。顔も曲がりたい方向へ視線だけでなく全体を向けると効果的です。
これでほとんど傾いてもいないのに、曲がることができるはず。
もちろん前輪からスリップダウンなど起きる状況ではありません。
こうやって徐々に馴染んでいきましょう。
これも何度もお見せしている、セルフステアを妨げないハンドルの持ち方とその違いを実感するためのメソッド。サイドスタンドを出したまま、両足をステップに載せ、前輪をペアを組んでくださる方に左右へ舵を切るように動かしてもらいます。左手首がやりがちな角度がついた体重が載ってしまう状態だと、ペアにとって前輪が動きにくい重さを感じます。これを手首を真っ直ぐにするだけで、舵角は軽くつきやすくライダー側も故意に押えようと思っても押さえることができにくい状態なのがわかります。さらに小さな振動のような動きを前輪に与えると、手首に角度がついた状態だとこの振動が曖昧で伝わらず、手首がまっすぐだと細かなニュアンスまで伝わる違いがわかります。これは前輪のグリップ感にも繋がる感覚なので、とても重要です。必ず体験されておくことを強くお奨めします!