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Q.Fフォークの調整は何が変わるのですか?【教えてネモケン118】

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フロントフォークの調整は減速時のノーズダイブ量しかイメージできません。乗りやすさとかどう変わるのですか?

A.リーンの軽快性と旋回初期の前輪追従性が変わります

リヤサスと違い体重差の調整もほぼ必要ありません

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スポーツバイクのサスペンション調整で、リヤサスに関するハウツーはかなり見かけますが、フロントフォークとなるといきなり激減。さしたる情報がありません。
とはいえ’80年代のレプリカブーム時代から、フロントフォームの一番上にマイナスドライバーで回すプリロード・アジャスターが走り屋マシンには必ずついてました。でもその当時から、どう調整するのかとか、やってみたらどうなったといった話題が飛び交った形跡がありません。
なぜなら、ハッキリ言って違いがわからなかったからです。それはメーカー側についてもで、設計したり開発テストに従事したスタッフは当然違いを知っていますが、それはサーキットなど限られた環境でのことで、一般に走るワインディングとなると曖昧な答えしかなかったからです。
そもそもフォークに封入されているスプリングのバネレートは、リヤのスプリングと比べるとフロント側はその30パーセントしかない弱さです。
その理由は前輪の機能で一番重要なのが路面追従性で、後輪が旋回していく方向へ路面をきれいにトレースしていかないと、曲がれないだけでなくスリップすれば容易く転倒するため、路面の小さな凸凹にも舐めるように追従できるよう柔らかいバネを予め縮めるセット荷重(プリロード)をかけ、ストロークしても荷重差がない設定にしています。
なのでブレーキングで簡単に前のめりするノーズダイブが起きやすく、フォークの中にこのノーズダイブでフルボトムしないよう一番奥に特別な油圧が高くなる仕組みが入っています。
このリヤとの設定に違いは、体重に合わせたサグ出し(プリロード調整で乗車時の沈み込み量を適正な位置へ設定する)も、数ミリ変えてもほとんど影響ないなど、大きく事情が異なってきます。
あらためて最新スーパーバイクのFフォークを見てみると、減衰力の伸び側(TEN)と圧縮側(COMP)のアジャスターはあっても昔のようにプリロード・アジャスターがなかったりしています。
’80年代はついてないと販売店に「なぜライバルと同じ装備にしない」と叱られるので仕方なく装着していた……というのが実情でした。
とはいえこのプリロード、違いが出るとしたらどのような状況でかというと、直立から左右へ浅い20°くらいまでのリーンに影響します。

Fフォークは曲がりはじめるとストロークしにくくなります

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フロントフォークはインナーチューブが筒状のアウターケースと、望遠鏡(テレスコープ)のように伸び縮みして作動します。
この筒状にインナーとアウターが嵌合した状態は、ちょっとでもたわむと瞬く間にスティックして動かなくなります。
だから、たわまないよう大径のフォークが多いのです。
それはコーナリングの応力、前輪だと外側へ滑らないよう持ちこたえるグリップになりますが、これが働くと大きな衝撃でもなければ簡単に沈んだ位置で動かなくなります。
つまり最初にストッと軽く沈んだ位置で止まってしまう可能性が高いのです。
しかしこの位置次第で、アライメントが合わないと前輪がズズズッとスライドするか、タタタタッと小刻みに跳ねたりする現象が起きやすく、レースでよくライダーがフロントの問題が……と言ってる状況に陥りやすくなります。
レースでは一気にフルバンクまでもっていくなど動きが極端で、これを按配の良い状態へ設定するのは並大抵のことではありません。
ただ一般のライディングではそういった現象はほぼ起きないので気にする必要はないと思います。

一般的には左右への軽快感や、ステアバランスの調整に伸び減衰で対応します

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ということで、皆さんが一番アジャストして違いを感じられるのはフォークでは伸び減衰です。
この乗車時に沈んだ位置から、たとえば加速するとスッと伸び方向へ動きますが、この動きが減衰を強めに設定していると後輪がトラクションするレスポンスを鈍くしてしまいます。
また左右へのリーンでも、この1G’(乗車で沈んでいる位置)で伸び減衰が強めだと、ホイールやブレーキなどバネ下の動きがバネ上の慣性力へ影響するため重く感じます。
体重が60kg以下だと伸び減衰は最弱に近い位置が、こうした操作感を鈍くするネガティブを減らしてくれます。
リーンしてフロントがフワフワと落ち着きのない動きになれば、やや伸び減衰を強めたほうが良いですが、一般的にはそれは起きにくいと思って差し支えありません。
リーンするとき、前輪がセルフステアに遅れるアンダー気味を調整するには、本来だとフォーク内部のダンパーオイル湯面を変え、ストッと動く初期のストロークをアジャストするのですが、これは分解整備が必要なため伸び側減衰で調整します。エッ、圧縮側じゃないのと思いがちですが、圧縮側の減衰力はもっとストローク量がないと変化しません。
そこで効いてくるのが、フォークの突き出し量といってアッパーブラケットからフォークは顔を覗かせている長さを変える方法です。
要するにエンジン位置が重心としてリーンで動く特性と、もっと高い位置にあるステアリングヘッドとの動きの関係で、そもそもの回頭性を変えてステア追従との按配を調整するのです。
ただ上下のブラケットを緩めて調整、そして締めるというこれもシロウトにはお奨めしない作業が必要です。
ということで、なかなか難しいフロント回りのアジャストですが、伸び減衰をイジってフィーリングに違いを試すのはそこそこリスクもなく楽しめると思います。
ただ最新の電子制御によるフロントフォークのサスペンション自動調整は、たとえばハードブレーキングで深くノーズダイブした状態から、ブレーキのリリースがはじまり減速Gが緩むのを検知して、伸び減衰を一時的に思いきり弱め、前輪のセルフステアをしやすくするなど、とてつもなく高度なサポートをしたりします。
このあたりのノウハウは、圧倒的に海外勢が強く、イタリアやドイツ製マシンの進化ぶりは目を見張るものがあります。
ただこれも基本の動きをハードやソフトのプリセットができるので、基本的な知識がないと使いこなすまでには至りません。
お奨めは日本の道路状況から、どちらかというとソフトもしくは低い荷重でセットしておくのが間違いないと思います。

Photos:
DUCATI,藤原 らんか