コーナーでリラックスできて熱い走りが楽しめる余裕が嬉しい!


ツーリング・シーズンを前に、メッツラーから新型ロードテックゼロツーが発表になり、試乗もできたので製品の解説とインプレッションをお届けしよう。
メッツラーといえばドイツのタイヤブランドで、ピレリ・グループの一員として開発・製造を共にするが、キャラクターとしてピレリ製品とは一線を画した方向性が与えられてきた。
今回のロードテックゼロツーも「スーパースポーツツーリング」とカテゴリーを称していて、サーキットで優位なハイグリップSPORTEC M9RRや、ツーリング仕様のROADTEC 01SEとの中間に位置づけられている。


メッツラーとしての狙いは、ご存じマン島T.T.レースをパートナーとして支えてきた関係を反映することがひとつ。
60kmもあるコースを雨のエリアと晴れのエリアの両方で路面温度も異なる条件を駆け抜ける、これ以上ない苛酷な中で鍛えられてきたノウハウを注ぎ込んでいるからだ。
それが「スーパースポーツツーリング」のコンセプトへ直結している。
たとえばトレッドのデザインで、路面との荷重で溝が潰されるように部分的に深く開いたパターンが組み込まれているのは、マン島のようにドライ→ウエットなど急激な変化へ対応できる対策としてあるのも注目に値する。



試乗して確認できたのが、元々メッツラーが高速直進安定性に優れていたのを、このゼロツーでは以前のやや直進の方向性に頑固な安定感から、浅い角度の自由度というか、レーンチェンジのような動きを軽やかに感じさせている。
これはコーナーでのリーンも顕著で、とくにリヤタイヤでリーンアングルが深くなる前と深くなった状況での動きが一定なのに驚かされた。
しかも路面のグリップ感が適度にダンピング(減衰)された過敏でない範囲で、一定に押し付けている反応が伝わりやすい。
またフロントも、ブレーキングで撓んだ状態からリーンアングルが増えていくときに、内向性が一定で切れ込む感じなど皆無なままバンク角相応の追従性をみせる安定感が凄い。
従来にロードテックのツーリングスポーツらしい、安定感が先にあって運動性を邪魔しないキャラクターから、安定性と運動性の関係が同じまま操れるという違いがある。
「スーパースポーツツーリング」は、ツーリングスポーツのバイクをスーパースポーツ的な楽しみ方へ拡げてくれるし、ツーリングがメインのライダーならスーパースポーツもこのタイヤでマージンのある楽しみ方ができるというわけだ。



今回は走行条件も一定で距離も長くはないので、本来は最も重要な路面温度が低かったりウエットでのポテンシャルを確認できたはいない。
ただラジアル構造の、ピレリグループならではのスチールベルトを「繊維」といえる極細の素材を縒って「糸状」にし、それを異なる太さ(強度)を並べることでグリップを失うきっかけとなる振動が起きにくい構造や、リヤタイヤのラジアル(放射状の回転方向に対し90°に直交している)カーカスを振動伝播しにくいレーヨンコードを採用するだけでなく、大きな荷重でトレッドが凹んだときに中心付近の面圧を下げないフラット化しやすい繊維の配列など、基本的なサスペンションの役割を高度化しているための路面追従性の良さがすべてに功を奏しているのを忘れてはならない。
もちろんトレッドのコンパウンドで、センター付近と両サイドのショルダー部分で適正な特性を併せ持たせているのはいうまでもない。
こうした先進性こそ、最新のピレリ・メッツラーの二輪タイヤを優位な位置づけとしていて、中国にあるR&DではBio-circular Materials、つまり植物など継続的に入手可能である有機材料の素材開発が急ピッチで進められている。
振動を抑え優れた減衰特性が得られる繊維として、トウモロコシなど研究実用化へと具体的な成果が徐々に組み入れられていくという。
天然ゴムもインドネシアに独自のゴム園を開拓して、タイヤのパフォーマンスにより適合するコンパウンドも開発途上だ。
ピレリ・メッツラーのこの開発姿勢に、今後とも目が離せない。
発売サイズは:
フロント
120/70 ZR17 M/C(58W)TL
120/70 ZR19 M/C 60W TL
110/80 R19 M/C 59V TL
リヤ
150/70 R17 M/C 69V TL
160/60 ZR17 M/C(69W)TL
170/60 ZR17 M/C 72W TL
180/55 ZR17 M/C(73W)TL
190/50 ZR17 M/C(73W)TL
190/55 ZR17 M/C(75W)TL
190/55 ZR17 M/C(75W)TL(O)
順次6月から発売予定とのこと。