圧倒的に高度な加工技術で、絶版車の存続に無限の可能性!
カワサキZ1をはじめ、レジェンドバイクの人気は高まるいっぽうだ。
そんな絶版車を扱うプロや、自分でコツコツ作業するエンスーたちにとって救いの神ともいえる存在が「井上ボーリング」。
井上ボーリングは今年70周年。
自動車産業が、以前は車検の度に摩耗したシリンダーの内径を切削して、新しいオーバーサイズのピストンを入れて性能の劣化に対応していた時代に、このボーリング屋さんが群雄割拠していた頃からの工場だ。
しかしエンジンも耐久性が向上、ボーリングそのものは激減したものの、メーカーでは最新型の開発で高度な複雑化するパーツが増え、これを加工する内燃機製造のフォロー役としてこれまで存続してきた工場のひとつ。
そんな歴史的なノウハウと、最新開発の下請けというより当事者として鍛えられてきたノウハウとが合体、以前は考えられなかった高度な加工技術で絶版車をはじめ様々な可能性を生み出している。
ダイアモンド硬度のシリンダー壁面加工で馴らし運転不要のナゼ?
井上ボーリングのシリンダー加工の基本は、ダイアモンド並みの硬度にできるニッケルカーバイドでシリンダー壁をメッキする技術。
ただそこへ最終仕上げとしてプラトーホーニングを施すのが大きな特徴だ。
これはシリンダー壁表面に、オイル溜まりとなるような微小なキズ?を残し、ピストンが往復する表面は超円滑に、ダイアモンド砥石で研磨する仕上げとする技法。
このため、新車が初期の馴らし運転で潤滑オイルに微小な金属粉が混じる、あの状態を終えた、つまり馴らし運転が不要な状態とすることができるのだ。
これは精度が1/1000ミリで経験から平面ではなく湾曲した3次面を生み出す、コンピューター制御のマシンには不可能な世界。
馴らし運転など時間的に許されない、レーシングマシンの頂点クラスで施される加工レベルと同等ということになる。
この加工技術は、全く摩耗しないと言い切れるに限りなく近い製品となるため、ICBM(井上ボーリング・シリンダー・ボアフィニッシング・メソッド)と最終兵器と同名に名付けたのだそうだ。
シリンダー壁面にポートがある2ストのノウハウで差がつく!
さらに井上ボーリングでは、'80年代のホンダRS市販レーサーの2ストローク・シリンダー加工を一挙に請け負ってきた実績がある。
2ストロークはシリンダー壁面に、掃気や排気のポートがポッカリと穴をあけていて、ここをピストンやピストンリングが高速で往復する過酷な条件に対応するノウハウが必要だ。
これを経験してきた井上ボーリングには、NSR250RやRZ250など一世を風靡した栄光の2ストマシンたちの、レストアパーツなど最も得意とする分野。
とくに難しい温度上昇の著しい排気ポートのノウハウが活かされているので、まさに無敵の再生パーツが可能というわけだ。
これをアルミの無垢の丸棒から削り出し、ポート加工とニッケルカーバイド・メッキ、そしてホーニング加工まで一貫して作業するのでライバルなき状態といえる。
絶版のシリンダーやヘッドにクランク関連など何でもこいの神対応!
こうしたレジェンドバイクのシリンダーを甦らせるだけでなく、シリンダーやシリンダーヘッドそのものが絶版となったバイクでも、すべて削り出し加工でオリジナルを生み出すことも可能だ。
そしてお得意の2ストロークでは、たとえば250cc2気筒で、左右気筒のクランクシャフト中間に位置する、それぞれの1次圧縮を分離して保つためのオイルシールを、レーシングマシンの技術だったアルミパーツの中に迷路を刻み、左右気筒の圧力差が時間的に保てるラビリンスシール構造に交換してまったく減らない状態にするのも、井上ボーリングが得意とするところ。
これに伴いクランクシャフトの分解に組み立て、そして芯出しの作業もお手のモノとなっている。
ホンダNSRやヤマハRZにスズキRGなど、そのメーカーどの年代にも対応可能なので、ぜひ問い合わせてみるのをお奨めしたい。
水素バイク開発で気炎を吐く!
そんな井上ボーリングは、創業70周年を機に以前からコツコツと研究を重ねてきた水素エンジン開発のプロジェクトを、クラウドファンディング(CAMPFIRE)で次のステップを目指して協力を呼びかけている(2023年12月20日まで)。
内燃機関屋としては、脱炭素はすべての内燃機関を葬らないとならないように言われていることへ、エンジン愛を自認する彼らは納得できない!との思いで続けている研究開発なので、ぜひ多くのバイクファンで共有したいものだ。