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【宮城 光と行く、林道満喫ツアー Vol.2】「転倒あり、パンクあり。翌日は全身筋肉痛……」

さて、前回(「【宮城 光と行く、林道満喫ツアー vol.01】「まさか、そんなに!? なんなんだこのオヤジライダーたちは……」)は、僕が林道ツーリングをすることになった経緯や一緒に走るメンバー、オヤジライダーたちのボルテージの高さを紹介したが、今回はその林道ツーリングの内容を紹介しよう。

休憩は、ヘルメットを脱がない!

雨風で荒れる林道を1本、2本と軽快に駆け抜けるオヤジライダーたち。そして、その後ろをトコトコ・おそるおそる走るRIDE HI編集部の正田。
前回vol.1でお伝えしたとおり、宮城 光さん、大鶴義丹さん、上山 力さんの3人は熟練のマシンコントロールで、僕が運転するCRF250Lよりも重いマシンをまるで野山を駆ける鹿の如く攻略していくのだ。

最初に入った林道からオヤジライダーたちの技術の高さに圧倒された僕は、ちょっとしょげた。集合した時は、自分が乗ってるバイクが一番軽いし、ついていくくらいはできるかなと思っていた自分を引っ叩いてやりたい……

そして、しばらく走ってるうちに普段のツーリングとは何かが違うことに気がついた。休憩がほとんどないのだ。どこまでも走る。林道が終わればすぐさま次の林道へ。脇に林道を見つければ「ここ行ってみようよ!」と新しい目的地が追加される。

少し止まってGPSを確認しているときが唯一の水分補給チャンス。標高の高い林道を走っているのでそこまで暑くは無かったのだが、林道はほとんどスポーツのように全身を使って走っていくので汗もかくし、水分補給は欠かせなかった。
ここで役に立つのがVol.1で準備していたハイドレーションバッグだ。ヘルメットを脱がずにホースを口元に運び、一晩冷凍庫で凍らせた2Lのキンキンに冷えた水を飲む。なんて気持ちの良い瞬間なんだろう。と思うのもつかの間、また次の林道へと走り出す。

先導してくれていたのは、大鶴さんだったのだが、「大鶴さんは休憩しなくなるからハイドレーションバッグ禁止ね!」と上山さんに言われるほど無尽蔵の体力で走り続ける。これには驚愕するしかない。

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ちょっと休憩、でもヘルメットは決して脱がない。このタイミングで水分を補給するにはハイドレーションバッグ1択だ

ついに、林道ツーリングの洗礼を……!

初心者の僕は、自分のペースで走って、腕に力を入れないように意識していても、フロントが跳ねたり滑ったりをどうしても腕の力で抑えようとしてしまう。おまけに大きな岩も怖いので目線もすぐ近くを見てしまう。そんなことをしていると、「岩や溝が怖い→腕に力が入る→うまく岩や溝がいなせない→岩や溝が怖い→……」と負の連鎖が始まった。こうなったらバイクも思い通りに進んでいかないし、腕はどんどん疲れてくるしで集中力も低下してくる。
そんな時には決まって、悲しき結末が待っている。
そう、“転倒”が待っていたのだ。

下りのガレ場に差し掛かり、「正田大丈夫か〜?ついてきてるか〜?」と聞こえてきて「大丈夫です!自分のペースでなんとかやっています!」と元気よく答えた2分後のこと。ライダーの“さが”なのか、1コーナー・2コーナーと離されてしまうとなんとかついていかなきゃ!という思考が働き、ちょっとだけ頑張ってしまう。すると、疲れと集中力の低下も相まって水流で削られた深い溝に前輪をとられ、焦ってフロントブレーキを握ったか何かで気がついたときには転んでいた。

地面に着いた右腕と車体に挟まれた右足が痛かったが、なんとか引き起こし、待っていてくれたオヤジライダーたちに追いついた。
「大丈夫?ケガがないのであれば良かった。まあ、しょうがないよ!」と宮城さんに励まされ、少し休憩をした後にその林道を走りきった。いちばん軽いバイクに乗っているのに、転んでしまって気恥ずかしかったが、怪我して迷惑をかけなくてよかったと一安心。

その後に入った食事処でアドバイスをもらった。
「正田君は、もっとバイクに仕事させる意識で走ると良いと思うよ!押さえたりしちゃうとバイクも予期せぬ動きにになってしまうから。」と言われたが、脳裏に“転倒”の恐怖が焼き付いた僕は、今日は絶対に自分のペースを守り切ることだけを目標にした。

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美味しいごはんが、転倒で傷心した僕を癒やしてくれた

快調なオヤジライダーに異変が!

いちばん走破性が高いバイクに乗っているはずの僕が転倒したり、予定と違う林道に入り大幅に時間が押した以外には、特にトラブルもなく順調に楽しみながら林道ツーリングは進んだ。

この林道ツーリングでいちばん緊張したのは川渡りだ。
大鶴さんが序盤から絶対ここだけは連れていきたいと言っていた林道の途中には川が流れていた。僕にとっては初めての川渡り。川幅は3mくらいだが、川底の丸石は苔のような植物に覆われて、つるつるとよく滑る。

先程の転倒もあったので不安でいっぱいだったが、とにかく途中で余計なことしないで駆け抜けるのがいちばん良いというアドバイスを信じ、一気に駆け抜けた。水しぶきが上がり、タイヤが滑る……。が、なんとか転ばずに対岸までたどり着いた。たった3mの川幅でもその達成感はとても大きかった。

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上手なライダーが大きなバイクで川を渡るととても画になる

そして予期せぬ事件が起きる。

最後の林道を走行しているときだった。
その林道は今まで走ったどこよりも山をどんどんと登っていく林道で、頂上に近づくにつれて転がる岩が大きくなっていくのだ。

最後の林道で皆張り切ってグイグイ登って行ったが、途中で僕が追いついた。何かあったのかなと思っていると、なんと上山さんのハーレーがパンクしていた。

チューブの穴を塞ぐパッチは大鶴さんが持ってきていたので、その場で応急処置をすることに。でもここは険しい林道の途中なのだ。タイヤの修理をしようにもタイヤを外した後に車体を固定しておくスタンドなんて落ちているわけない。しかし、さすがのオヤジライダーたち、経験値が違う。バイクを持ち上げて、エンジンフレームの下に岩を積み上げ簡易スタンドを作ってしまった。

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積み上げられた岩で自立?するハーレー。なかなか見ることができない貴重な瞬間に立ち会えた

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何度見ても見事なバランスで支えられている

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万が一の為のパンク修理用パッチだが、持っていなかったらもっと大変なことになっていただろう

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この写真よりも大きな岩が、ゴロゴロ転がっている箇所もいくつもあった

初めて見る光景に驚いたがオヤジライダーたちの対応力の高さにも驚かされた。
大鶴さんの持ってきていたパンク修理用のパッチやタイヤレバー、空気入れで応急処置を施し、舗装路まで無事に脱出することができたのだった。

結局、舗装路に脱出した後も空気は抜け続け、結局エアバルブの根本にも穴が空いているのが見つかり、これはチューブを交換しなければ家まで帰れないという結論となった。
しかしそこでも、仲間が助けに来てくれた。ボンサイモトの多川さんがチューブを持って駆けつけてくれ、無事に走って帰ることができたのだ。

多川さんが駆けつけてくれるまでの間、地元のコンビニ店員さんやガソリンスタンドの店員さんなど、多くの人がとても協力的にサポートしてくれた。

また、宮城さんも大鶴さんも絶対に上山さんのバイクをちゃんと家まで送り届けるために献身的にサポートをしていた姿が印象的だった。

オヤジライダーの凄さと仲間思いの心を見せつけられ、無事?に林道ツーリングは終了した。

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チューブが来るまでの間停めさせてもらったガソリンスタンドの駐車場では、Vol.1で用意していたカロリーバーが空腹を満たしてくれた

翌朝、宮城さんから「怪我してなかったか?身体痛くないか?」と電話がかかってきて「怪我は無いですけど、全身筋肉痛です!」と伝えると「怪我なくてよかった!俺も久しぶりに全身筋肉痛になったよ!」と、あんなに超人的なオヤジライダーたちも僕らと同じように疲れるし、筋肉痛になるのだなと、ちょっと安心した瞬間だった。

転倒はしてしまったが、とても楽しく、すごい経験をさせてもらった林道ツーリング。次はどこの林道に行こうか、ワクワクする。