リーンできるので不都合は感じない、でもどれだけ曲がれるかは様子見になってるとしたら
あなたはどこに入力してリーンをしているだろうか? 上半身を横へ動かす、ハンドルを持つ両腕で倒す、シートにあずけた腰で捻る、内側のステップへ加重する……多くのライダーがこの4つのどれかを答えとしてイメージする。
しかし4つ目のステップは、シートに体重をあずけて着座していたら、内側の下半身を踏ん張るだけで重心移動は全く起きないので車体は傾かない。
残る3つは結果としてライダーの重心が内側へ移動するなどして車体は傾き、バイクはもちろん旋回をはじめる。
ところがそのリーンでどれだけ曲がっていくのか、そこを自分で操れるライダーは極く僅か。
理由は簡単で車体のどこがどう動いて傾いていくのかが掴めていないからだ。とくに上半身を横へ動かすアクションは、曲がりはじめる地点も特定できず、どれだけ曲がりたいのかもなりゆき任せと曖昧。
でも結局は曲がれているので問題とは感じていない。ただ同時にこうして乗っているかぎり、リーンをどれだけしたいのかなど、自分で加減できずに操れている状態にはなれないまま。
様子見のそのとき次第、やってみなければわからない……これに慣れっこになるため、自信はつくわけがない。
でもMotoGPの肘擦りフォームは上半身を思いきり横へ移動?
しかし上半身を横へ動かすアクションは、肘を擦るほど深くバンクするMotoGPライダーもやっていると思いがち。
ところがこれはよく見るとリーンをはじめる瞬間は顔や両肩は車体センターに残していて、曲がっていく先のイン側に構えているのは下半身だけ。
そしてリーンのきっかけは、下半身の体幹を下へ移動ではじまり、リーンがはじまるや上半身は両肩を扇状に移動させながら横ではなく下へ重心が下がるほうへ集中していくのだ。それはさらにアタマの位置も路面に近くなるまで下げて加勢するので、結果として上半身の内側の肘が路面に擦ることになる。
この横にではなく下方向というのはなぜなのか? それはバイクで一番重いエンジンの位置を考える必要がある。
エンジンはライダーの両足首あたりの高さにある。ココが車体の中で一番重く、クランクシャフトが回転する慣性力も加わるため、地球ゴマと同じジャイロ効果が働き、最も動きにくい車体の挙動の中心となる。
この部分がリーンする、つまりエンジンの居場所が扇状に動くのを妨げないのが、素早い旋回、つまり曲がりはじめるタイミングを逃さないポイントとなる。
だからクイックに曲がりはじめたいGPライダーは、体幹を下へ移動をきっかけにするし、そこからもひたすらエンジンの居場所が傾く動きに逆らわない下のほうへ加勢していくのだ。
バイクのリーンは、ハンドル位置が扇状に弧を描くイメージをしがちだが、実際にはもっと下のエンジんの居場所が小さく弧を描くのが正解というのを覚えておこう。