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どう乗れば荷重は増やせる?【ライドナレッジ036】

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折原弘之

「荷重をかける」とか「荷重を抜く」を読み解くチャンス!

速く走れるライダーの口からよく出てくる「荷重」という用語。ただ漫然と車上の人でいるより、何か積極的な操作をしたほうが思うように走れそうだけど、チカラづくのアクションじゃないのは想像がつく。
確かにこの「荷重」は走りを左右する鍵を握っていて、うまく扱えば面白いようにバイクを操れるが、ちょっと勘違いすると逆効果で足を引っ張られる側にも作用する厄介な部分も内包しているのだ。

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まず「荷重」は後輪や車体のイン側などに体重を預けるその割合の量を指していると理解しておこう。
ただし後輪に作用する駆動力や、加速Gや減速Gなども増減する荷重のひとつ。何ともややこしそうだが、ライダーの操作次第でもこれが大きく変わるので、その荷重をかけるコツを覚えるか否かはかなり重要になってくる。

ライダーの体重は一定なのにどうすれば荷重を増やせるのか?

確かにライダーの体重は一定だ。それをまるで体重が増えるかのように、荷重として車体へかけていく……スキーやサーフィン、またはスノーボードなどをなさる方には、足にかかる体重の使い方と言えばピンとくるかもしれない。曲がろうとするとき、脚の伸縮を使って体重をエッジに乗せるあの感じと同じだからだ。
エッ、外足やうち足のステップに体重を載せるの?というのは早とちりで、スタンディングで走ればともかく、ステップに荷重を載せてもシートに着座していたら何も起きない。
体重を載せる場所というか方向を与えて、そこへ集中していくアクションが荷重を増やす操作というワケだ。

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荷重をかけるとバイクに何が起こるのか?

では何をするのか、それはまず必要なトコロに体の重心を移動して、タイミングを見計らって必要な部分のチカラを抜き、シート座面へ体重が路面に追従しやすい状態にしていく。
スキーやサーフィンでも、足を突っ張るとエッジに力が入りすぎて横滑りになってしまうのをご存じと思う。かといって抜きすぎると荷重不足で曲がらない。
ここぞというトコロで体重が一定にかかるバランスを保ったままが一番曲がりやすくなる状態になる。
これがバイクだと乗車している身体を硬くすると、本来路面に追従して忙しく上下動しているサスペンションに対し、自然な車体の動きを阻害してしまう、つまりエッジに力が入りすぎて、スキーやスノーボードが横滑りしてしまっている状態と同じになってしまうのをイメージすればわかると思う。身体からチカラを抜けば、車体側の動きでシート座面から突き上げる感じが伝わるものの、サスの動きに車体側が追従しやすい状態、つまりタイヤに対する荷重が変化しにくくなって、グリップ力や安定性を高めてくれるというワケだ。

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荷重をかけるコツとは?

では具体的にどうしていけば良いのか。まずコーナー手前で減速に対して身体が構えてしまわないよう、直前に態勢をイン側の斜め下にへもっていく構えにして重心を移動させ、曲がりはじめる瞬間にシートとお尻の設置面だけを意識して下半身から背筋までのチカラをジワッと抜く。このとき予めお腹を引っ込めて、体重が後ろの背骨と腰が接合した箇所へかかるよう、猫背のような体勢をセットしておくのをお忘れなく。
リーンがはじまり曲がりはじめたら、上半身でバイクを曲げようとせずに、脇腹へ体重を載せる感じでイン側の下方向へ重心を持っていく。上半身はダラ~っと内側に寄りかかる感じに。
そうすることで、結果的に曲げようと身体を横に動かすよりも、曲がろうとする車体に余計なチカラが加わらないため旋回力が増す結果へと結びつく。同じ理由でイン側のステップには足を載せる以外に体重はかけない。慣れるまでは、腰を思い切りイン側へズラす大きなアクションを避け、お尻半分だけ軽く動かす程度に抑え、むしろ腰から上の背中にかけてチカラをジワッと抜く量やタイミングを覚える方に集中した方が覚えやすく効果もわかりやすいはず。
大きなアクションはカタチだけそれっぽく見えるものの、肝心の重心移動や体重をかけたり後輪荷重を増やすという、一番大事な効果を感じたり覚えたりしにくくなるケースが多いので避けるべきだ。
僅かな体勢移動だけで、効率良く体重や荷重を活かしたライディングのほうが、リスクが少ないだけでなく、後輪からグリップした感触やトラクションの足応えが伝わってくるため、間違いなく醍醐味もたっぷりと味わえる。「荷重」をモノにするには、ひたすら脱力のコツを捜すのが早道かも知れない。