attachmentfile-file-3246.jpg
このバイクに注目
Bimota
TESI H2

【ビモータ テージH2 試乗記】革新フロントハブステアと超絶ハイパーH2が合体!

Photos:
折原弘之

ロケットダッシュを整然と安定させるスーパー車体

イタリアの工房ビモータが開発した革新ハブステアで、ありったけの猛パワーでもおとなしく感じる安心感

前に突き出たスイングアーム……ビモータのテージH2は、威圧的な大柄カウルも異様だが、前輪を支えるフロントフォークが見えない不気味さで異彩を放つ。
これはハブセンターステアといって、フロントホイールの中心にあるハブに、通常のバイクのステアリングヘッドが内蔵され、ハンドルとは細いロッドで結ばれて前輪を操舵する、まさに革新的な機構なのだ。

そしてスーパーチャージドのH2、通常の吸気に圧力をかけ爆発的パワーを生み出すこのカワサキエンジンとの組み合わせが繰り広げる驚愕の異次元体験をお伝えしよう。

bimota_tesi-h2_210201_01.jpg

巨体と思ったのに軽い!!!

走り出してまず驚くのがその軽さ。400ccクラスより軽く感じる、そんなバカな、と思われるだろうが、呆気にとられるほど軽いのだ。
エンジンより上に車体構成がないのと、前輪の支点がホイールハブの中で、すべての動きが下のほうにあり、右に左に大きく重いモノが揺れて動かないからなのだが、ここまでの軽さは想像を絶する。
これまでドゥカティエンジンを搭載していたテージでも、同じ理由で手応えがないほどの軽やかさだったが、大きな塊ともいえるH2エンジン搭載となるとその差も際立ってくる。

もちろんリーンも軽い。さらにテージならではの曲がりはじめた瞬間から前後輪が同時に弧を描くような旋回もインパクトだ。
さすがにH2エンジンの質量・重量で、わずかだが前輪のレスポンスを穏やかに感じるが、このおかげでハブステアが初めてのライダーでも違和感なく乗れてしまうだろう。
それと上下にやんわり動く、サスペンションが感じさせる刺激の少ない安定感が、H2エンジンの緊張感まで和らげてくれる。

bimota_tesi-h2_210201_02.jpg

前に伸びたスイングアームは、前輪のアクスル(車軸)にある左右のリンクで、サスペンションがストロークしたときのアライメントを維持する。フロントのサスペンションユニットはエンジン後ろにあって、下にみえる黒いロッドで作動している。前輪の操舵はサスリンクの下にみえる細いロッドがハンドルとを結んでいる。ホイールのハブにステアリング軸が内蔵される独得の構成。

狂気じみた加速にもまったく動じない安定感

それならばと、せっかくのレーシングサーキットなので遠慮なくスロットル全開。
クワァ~ッ、瞬く間に10,000rpmまでまっしぐら。
しかし同じコースをNinja H2で全開チャレンジしたときは、その凄まじい推進力をまっすぐ前に向けるのに精一杯といった感じで、もちろん暴れたりは皆無の怒濤の加速感だったのに対し、エンジンの漲るエネルギーのはずが、フワーッとしたまま強烈な加速Gだけが脳みそを揺する。
何という安定感、どこかに余裕を感じさせるほどで、ライダーが追い込まれた空気にならない。
いやはや、徹底した低重心とは、かくも異次元な世界を展開するのか……。

bimota_tesi-h2_210201_03.jpg

ハンドルが装着されている通常のアッパーブラケットの下には、いわゆるステアリングヘッドは存在しない。ハンドル操作のために“やぐら”が組まれているだけ。でもステアリングダンパーはここに存在するのか……と妙な感じではあるが。

本領発揮のフルブレーキ、恐怖感は皆無

モーレツなダッシュの先に必ず待っているブレーキング。グイグイと押し付けられる加速Gに酔いながら、頭をよぎるのは高速からのハードブレーキングに伴う緊張感だ。

が、テージはここが別世界。強くかけてもほぼ前のめりせず、瞬く間に減速をこなしてみせる。
この呆気なさは、言葉では伝えられない違いで、こんなにハードブレーキングしているのに、フロントタイヤがグググッと反発する感じさえ皆無。
通常のフロントフォークだと、どんなに太い高剛性なインナーチューブとアウターケースの組み合わせだと、減速Gでたわんで動きにくくなり、フロントタイヤも路面追従性に限度があって、小刻みなバウンド現象をみせたりする。もうABSが機能する寸前だろう。
しかしハブステアは減速Gに耐えるのは頑強な2本のスイングアームで、路面の凸凹を吸収するサスペンションは、リンクを介してまったくストレスなしに働き続ける。
この安心感は他では味わえない種類のもので、まさにハブステア本領発揮のシーンといえる。

bimota_tesi-h2_210201_04.jpg

エンジン後ろに並んで位置する前後のサスペンションユニット。左がフロントでエンジン左下のリンクで結ばれている。右はリヤサス。伸びと圧の前後ダンパーも1ヶ所で調整できる便利さ。

地上高の低いロール軸に慣れる必要が

といった具合に、これまでの概念では説明しづらい、ハイパーマシンの緊張感から解放される夢のような乗り味だが、慣れる必要を感じさせるのがロール軸の低さ。

これは車体の動きが、先にも言った軽さの要因でもある前後輪の車軸を中心としているためで、ステアリングヘッドがハンドルの下にあって、そこから後輪の接地点と前輪の接地点とを三角定規で結んだ、車体の上側が扇のように動作する仕組みに慣れた感性からすると、どうしてもハンドルに無用な入力をしてしまう難しさだ。

リーンしようとするとき、下のほうが中心なので10°も傾くと曲がりはじめるクイックさが感じにくい。通常のバイクだと、セルフステアが10°→20°と傾くうちに促されて前輪がやや遅れて旋回をはじめる……といったパターンではないからだ。
なので、上半身をちょっと内側へ意識して移動しながら、前輪のセルフステアを促す乗り方がスムーズかついつも変わりなく曲がりはじめるコツだろう。とくに難しくはないので、感性として慣れてさえしまえばそれで済む問題だと思う。

といった按配で、革新的異次元なマシンの楽しみ方は、ユーザーによってさらに育まれていくに違いない。
マイノリティな一部の趣味人向けのイメージが強かったハブステアを、コラボレーションを組んだビモータをイメージアップするフィーチャーとして認めたカワサキの太っ腹にも感銘した。

『ビモータ TESI H2 日本初試乗!』

『ビモータTESI H2 宮城光&ネモケンの感動炸裂トーク!』

協力/ モトコルセ
この関連記事が読めるのは

RIDE HI No.3
2021年02月01日発売 / 1,100円(税込)

『ネクストステージは、どのバイク?』

『ネクストステージは、どのバイク?』

RIDE HI No.3(2021年3月号)
RIDE HI No.3(2021年3月号)