2003年からセルスターター装備でビギナーにも対応……

ホンダは2001年10月、空冷単気筒のトラディショナルなルックスのCB400SSを発売した。
1978年から延々とロングランが続くヤマハSR400/500への対抗機種で、400ccクラスの主力は4気筒ネイキッドという中、性能よりこだわりの単気筒でベーシックスポーツを求める幅広い年齢層がターゲット。

ホンダにはかつて1985年に発売したマン島T.T.を想起させる、カフェスタイルのシングル・スポーツが存在、レトロな雰囲気を売りにしていたヤマハSRとは異なり、低く幅の狭いハンドルが象徴するビギナーには向かない硬派なモデル。
CB400SSではそこまで硬派を求めないコンセプトと、クラシカル路線とは一線を画したあくまでベーシックロードスポーツを標榜していたのだ。
エンジンは当時と同じオフロードモデルのXR400系がベースで、RFVC(放射状に配置した4バルブ)と2本のエキゾースト、さらにはいかにもオフ専用が漂うドライサンプ潤滑(不整地の衝撃に備えクランクケース下にオイル溜めを持たない)の本格的な単気筒で、CL400として1998年に復活を果たしたばかり

この同じ轍を踏むまいと、CB400SSはホンダ自身の'70年代CB350のグラフィックを踏襲。
旧すぎず適度にレトロ、そんな当時の流行りを身に纏いデビューした。



ボア×ストロークは85.0mm×70.0mmで、最大出力は29PS/7,000rpm、最大トルク31Nm/5,500rpm。
ただCL400譲りの趣味性が濃いオートデコンプ装備のキック始動のみと、ここはビギナー向きではなかったが、ドライサンプのコンパクトなシングルが功を奏して400ccとは思えない乾燥重量が139kgに収まっていた。
エンジン前のダウンチューブが1本のセミダブルクレードル・フレームは、各部の熔接痕がウエスなど引っ掛からない仕上げを目指し、鋳造部材や鋳造後の熱処理に時間をかけ炭素を除去した白心可鍛鋳鉄を採用するなど、単気筒モデルでも400ccクオリティが感じられるよう留意。
鋼管の持つしなやかさと剛性を両立させ、扱いやすく走りも良いスポーツ性を備えていたが、ヤマハSRへの意識からかデザインを旧すぎず適度にレトロ、そんな当時の流行りでホンダの'70年代CB350のグラフィックを踏襲、これが却って意味の伝わらない曖昧さに繋がり、特徴のある評価に繋がらないまま過ぎていった。


そんなCB400SSも、2003年からビギナーが敬遠する要素だったキックのみの始動から、一般的なセルフスターター方式との併用とし、車体色もシングルスポーツらしさとビンテージな両面でアピールしようと様々なグラフィックが投入された。
さらには「ヨンフォア」人気にレッドとイエローの個性的でお洒落なモノトーンも展開、クラシカルな演出を抑えたラインナップへと変わっていった。

いっぽうではおしゃれなグラッフィックを抑えたカラーリングが登場したり、また'70年代を彷彿とさせるホンダ歴代CBの懐かしい塗り分けも加わり、旧くからのファンの目を楽しませてはくれたが、若い層を中心にピンとこない受け止め方を益々広げてしまった。



こうした紆余曲折を繰り返して落ち着いた先として、2007年からは依然として好調なSR400を意識したのが明白な、再度ビンテージな雰囲気を漂わせたグラフィックが投入された。
この品がある落ち着いたデザインに好感を抱くファンが少なくなかったが、結局はヤマハSRの対抗軸でしかないのかという辛口が目立つ状況となってしまった。

そして最後のモデル、スペシャルエディションでは濃いクラシカルトーンにシートも2色と豪華で、ベテラン且つ熱いハートのライダーをターゲットに展開。
その走りの良さを惜しむ声もあったが、消え行く運命を辿ったのだ。


もちろん'90年代から20年以上もCB400スーパーフォアが席巻していた背景もあって、シングルスポーツがマイノリティな位置づけだったのも大きい。
しかしここまでターゲットを拡げたグラフィック展開をした機種も珍しく、ユーザーの好みを絞り込んだイメージでアピールしないと、バイクのキャラクターが伝わらず却って支持を得にくいのを明確にした例といえる。
バイクとしての機能が着実で優秀な機種だけに、惜しまれる存在だった。



