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このバイクに注目
KAWASAKI
Ninja ZX-10R/ZX-10RR

【カワサキ ZX-10R/RR】RRとR、たった1ps差なのに車両価格差は99万円……それはなぜ?

ZX-10RシリーズのRRとRのスペックを見て「ん?」と思った方も多いと思う。SBKのホモロゲーションマシンであるRRはさぞかし凄いのだろう! 速いのだろう! と思ってスペックを見たらスタンダードモデルとのパワー差はわずか1psしかないのだから、それは当然のこと。では99万円の差は一体どこにあるのだろう?

エンジンを回せば回すほどにSBKで優位になる

ZX-10RRは、限定500台のSBKのホモロゲーションマシン。SBKなどのレースはこのマシンをベースに戦っている。スタンダードのZX-10Rとの価格差は99万円。見た目は大きく変わらないけれど、実はエンジンの中身はまるで違う。RRは勝つためのエンジン。ブレーキホースやホイールもRとは異なるが、その価格差の大半はエンジンに注ぎ込まれていると言っても過言ではない。

まずはRRとRのスペックを見てみよう!

Ninja ZX-10R 229万9,000円
203ps/13,200rpm[ラムエア加圧時: 213.1PS/13,200rpm]
Ninja ZX-10RR 328万9,000円
204ps/14,000rpm[ラムエア加圧時: 214.1PS/14,000rpm]

パワーはわずか1ps差しかないのだが、最高出力を発生する回転数はRRの方が高い。さらにここではレブリミットの回転数にも注目してみたい。2021年モデルのRRのレブリミットは前モデルから+400rpmアップの1万4,700rpm。スタンダードモデルであるRのレブリミットは1万3,700rpm(前モデルから変更なし)だから1,000rpmも違う。

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2019年モデルでフィンガーフォロワーロッカーアームを採用。これによりアグレッシブなカムシャフトの採用が可能に。当然、レブリミット向上に貢献している

RRはエンジンを1rpmでも多く回したい! 回すほどSBKで優位になる!

RRがレブリミットを少しでも稼ぎたいのはSBKのレギュレーションによるところが大きい。SBKレーサーの回転上限はノーマル+3%(ただし最終的にはドルナが決める)などとなることが多い。()内の1文は、強すぎると回転制限のハンデが与えられ、思ったところまで回転を上げられなくなることがあるのだ。SBK6連覇を達成しているカワサキは、これまでもこのハンデをクリアしつつ勝ってきた。だからスタンダード状態で少しでもレブリミットを稼いでおきたい。ZX-10RRが進化の度にレブリミットを上げているのはこのためである。

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2021年のエンジンの回転上限はまだ決まっていないが、レースのホモロゲーションモデルであるZX-10RRのレブリミットは少しでも上げておきたい。そのためにRRのエンジンはどんどん進化していくのだ

+1ps、+1,000rpmを稼ぐためにエンジンをチューン

+1psと+1,000rpmが99万円の差と考えていいだろう。ZX-10Rシリーズのエンジンは2019年に大幅にモデルチェンジ。フィンガーフォロワーバルブシステムを採用し、アグレッシブなカムシャフトが使えるようになっている。
そして2019年モデルのRRには、パンクル社製のチタンコンロッドが採用された。ちなみにスタンダードのコンロッドはスチール製で、チタンコンロッドは1本あたり102gも軽いのだ。そして2021年モデルからはパンクル社製の軽量ピストンを採用。さらにアグレッシブなカムシャフトが採用できるようになった。
常に勢いよく回っているパーツを軽くすれば、当然エンジンの回転は稼ぎやすくなる。
しかし、+1psというスペックを見ると、この変更が最高出力のためでないのは明らかだ。

2019年モデルに乗った時は、スロットルを開けた際のトラクションのかかり方もRよりRRの方が遥かに良かった。チタンコンロッドはブレーキングからターンインのバイクが向きを変えるハンドリングの軽さにも貢献していた。

当時のハンドリングで印象的だったのは、バイクが自らの意思で曲がりたがっているようなフィーリングがあり、速度が上がっても重さや頑固さがなく、扱いやすかったことだ。

きっとピストンの変更もこういったライバルに競り勝つための進化をしているのだろう。

ZX-10RRは、+1psにこだわるライダー専用のマシン。世界で選ばれた500人だけが堪能できる超スペシャルなのだ。

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2019年モデルの発表だとRRのチタンコンロッドは102g/1本も軽い。2021年モデルはピストンも軽量化することで、さらなるポテンシャルアップを実現している

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RとRRのエンジンキャラクターをグラフで比較。RRが高回転型であることがよくわかる。ただしエンジンパーツの違いは、高回転で伸びるだけなく、ハンドリングの軽さやコーナー立ち上がりでのスロットルの開けやすさなどにも貢献。これがライバルに競り勝つためのエンジンだ

SPEC

Specifications
KAWASAKI Ninja ZX-10R/ZX-10RR
エンジン
水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量
998cc
ボア×ストローク
76×55mm
圧縮比
13対1
最高出力
10R=203ps(ラムエア加圧時213.1ps)/13,200rpm
10RR=204ps(ラムエア加圧時214.1ps)/14,000rpm
最大トルク
10R=115Nm(11.7kgf-m)/11,400rpm
10RR=112Nm (11.4kgf-m)/11,700rpm
フレーム
アルミツインスパー
装備重量
207kg
キャスター/トレール
25°/105mm
サスペンション
F=テレスコピックφ43mm倒立
R=スイングアームモノショック
ブレーキ
F=φ330mmダブル R=φ220mm
タイヤサイズ
F=120/70-17 R=190/55-17
全長/全幅/全高
2,085/750/1,185mm
軸間距離
1,450mm
シート高
835mm
燃料タンク容量
17L
価格
229万9,000円(10R)、328万9,000円(10RR)