SBK絶対王者。それがカワサキNinja ZX-10RR×ジョナサン・レイのタッグだ。2020年もタイトルを獲得し、SBKで前人未到の6連覇を達成。鈴鹿8耐でも常に上位にいるためその最強タッグは日本でも有名だ。
空力を徹底追求。でも「羽だけじゃ面白くない」
2021年、SBK7連覇を目指すため、ジョニーの駆るZX-10Rシリーズがマイナーチェンジされた。その特徴は迫力のフロントマスクで、カワサキは様々なメーカーが近年試行錯誤しているウイングレットの効果をこの顔で得たという訳だ。
「羽だけじゃ面白くないよね」これはNinja H2Rなどで早々から空力特性を追求してきたカワサキ開発陣の声だ。MotoGPでウイングが流行った頃にZX-10Rでも色々とテストしてみたという。カワサキは自社で巨大な風洞施設を持っている。これも強みだ。
ZX-10Rの車体&エンジンのパッケージは、すでにレースでも結果の出ている高バランス。さらにコーナー脱出速度アップ&旋回中の前輪の接地感アップのため、空力を追求。そのためにこのフロントマスクを採用した。
そんな、2021年モデルのNinja ZX-10Rシリーズは、以下の3種類を用意。
Ninja ZX-10R KRT EDITION
229万9,000円
2021年5月28日発売
Ninja ZX-10R
229万9,000円
2021年5月28日発売
Ninja ZX-10RR
328万9,000円
2021年6月25日発売(限定500台)
Ninja ZX-10Rシリーズはカワサキケアモデルで、これは、3年間の定期点検とオイル&フィルター交換費用を車両価格に組み込んだもの。そう考えると、スタンダードモデル2機種はかなりお得なのかもしれない。
ZX-10RRは限定500台のSBKのホモロゲーションマシンで、スタンダードのZX-10Rとの価格差は99万円。スタンダードと異なるのは主にエンジンである。
ZX-10RRのエンジンには2019年からパンクル社製のチタンコンロッドが組み込まれていたが、2021年モデルからはピストンも軽量なパンクル社製に変更。これによりアグレッシブなカムシャフトの採用が可能となり、レブリミットは前モデルから+400rpmアップの1万4,700rpmとなっている。スタンダードモデルのレブリミットは1万3,700rpm(前モデルから変更なし)だから1,000rpmも違うのだ。
RとRRの主な違いはエンジン。RRはパンクル社製のチタンコンロッドとアルミ製軽量ピストン、専用のカムシャフトが採用される。バルブはRもRRもチタン製だ
ZX-10Rの良さは車体にあり!
以前、ジョニーに話を聞いたことがある。「この車体は抜群なんだ。柔らかいピレリ(SBK)も硬いブリヂストン(鈴鹿8耐)も両方履きこなせるんだ。鈴鹿8耐でそれを確信したね」SBKはもちろん鈴鹿8耐を何度も走ったジョニーのその言葉は力強い。そういえばスペインのヘレスサーキットなどでは、シーズンが違うとはいえ、ジョニーはMotoGPマシンに迫るタイムを叩き出しているのだ。
「この車体は、ジョニーのスイートスポットに入っている」これは開発陣の声である。
だから2021年モデルも車体には大きな変更を加えなかった。勝ち続けているマシンだから大きく変える必要はないという判断だ。
2019年モデルのZX-10RRに試乗して感じたのは、車体とハンドリングがとてもコンサバになっていたことと、エンジンや電子制御も過渡特性を丁寧に作り込んでいたことだ。実はそれまでのZX-10Rはある意味でとても前輪荷重のかかり方にクセがあったが、その面影はなくなっていたのである。2021年モデルは、電子制御のアップデートや空力の追求でその素性の良さをさらに引き伸ばしているに違いない。
近々、試乗レポートをお届けしよう!
2021年モデルのシャシーは、2016年にヘッドパイプを手前にしたり、スイングアームを長くしたモノの熟成型。ジョニーが乗りやすさと速さを絶賛する高バランスを約束
メーターはZX-10Rシリーズ初のTFTカラー液晶。視認性と詳細なセッティングが可能。もちろん最先端の電子制御を搭載する
「旋回中のフロントタイヤの接地感が向上し、脱出速度も向上している」とはテスト走行したジョニーの声。フロントマスクの効果は現れているようだ
2021年モデルのZX-10Rはユーティリティも充実。LEDライト、カラー液晶メーター、クルーズコントロールなどを装備。オプションでグリップヒーターも用意される
「この顔を受け入れてもらえるか……」これが開発陣の唯一の懸念だという。しかし、新しいデザインというものは違和感からスタートするモノだ。空力性能は7%向上している
SPEC
- Specifications
- KAWASAKI Ninja ZX-10R/ZX-10RR
- エンジン
- 水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
- 総排気量
- 998cc
- ボア×ストローク
- 76×55mm
- 圧縮比
- 13対1
- 最高出力
- 10R=203ps(ラムエア加圧時213.1ps)/13,200rpm
10RR=204ps(ラムエア加圧時214.1ps)/14,000rpm - 最大トルク
- 10R=115Nm(11.7kgf-m)/11,400rpm
10RR=112Nm (11.4kgf-m)/11,700rpm - フレーム
- アルミツインスパー
- 装備重量
- 207kg
- キャスター/トレール
- 25°/105mm
- サスペンション
- F=テレスコピックφ43mm倒立
R=スイングアーム+モノショック - ブレーキ
- F=φ330mmダブル R=φ220mm
- タイヤサイズ
- F=120/70-17 R=190/55-17
- 全長/全幅/全高
- 2,085/750/1,185mm
- 軸間距離
- 1,450mm
- シート高
- 835mm
- 燃料タンク容量
- 17L
- 価格
- 229万9,000円(10R)、328万9,000円(10RR)