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このバイクに注目
KAWASAKI
Ninja ZX-10R/ZX-10RR

【カワサキ ZX-10R/RR 試乗記】SBKチャンピオンマシンを駆る悦び! その優越感が味わえるのは10Rだけ!

Photos:
益田 和久

「凄い顔だなぁ……」カワサキNew ZX-10RRが発表された時の印象だ。しかし、いつの時代も新しい物は違和感を抱くもの。写真を見ながらこうして10Rの記事を何本も書いていると見慣れてきた。さらに試乗会場で実際に対面すると、ダウンフォースを稼ぐ顔は僕の中でシャープな印象に変わっていった。

ウイングレットの役割も果たすフロントマスク。この発想だけでかなり新しい。ヘッドライトを装着する市販車は、レーサーと違いいろいろな制約があるはずだが、10Rはそこに挑戦した。実際に対面すると思ったよりも小顔。でも、とても複雑な形をしている。

久しぶりのリッタースーパースポーツ、試乗コースは愛知県のSPA西浦だ。10Rに限った話ではないが、サーキットで1,000ccスーパースポーツに乗る前は本当に緊張する。200psオーバーのエンジンは、もはや扱うとか乗りこなすとか、そういうレベルのモノでない。
所有する悦び、最高峰の技術を知る悦び、10Rに関してはSBKチャンピオンマシンの片鱗を知る悦びもあるだろう。

公道やツーリングではもっと乗りやすいバイクはたくさんあるが、10Rにはそんな特別感があるからこそ、苦行にも感じる前傾のキツさ、200psもあるのにまったくスロットルを開けられないジレンマがあっても乗りたくなるのだ。

果たして僕は200psに反応できるのだろうか……。散々スーパースポーツに乗ってきているのに、走り出してもその気持ちはなかなか拭えない。とにかく油断大敵なのだ。タイヤも新品だったので、まずはモードを「ロード」にして走り出す。印象的なのはスロットル操作に対する車体の反応が穏やかなこと。4、5、6速をメインに使って身体とタイヤを温めていく。

ちなみに、タイヤの空気圧は冷間で前後1.9キロ。サーキットは内圧が上がるので、標準よりは低めで走り出したい。

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2021年モデルのKRTエディションは雰囲気を一新。229万9,000円。

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スーパースポーツに乗る前は本当に緊張する。まずは優しいモードを選択。そしてきちんと身体が動くよう入念にストレッチ

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インフィールドはペースを上げるとずっと1速。もう少しアベレージの高いところも走ってみたいところだ

「ロード」モードでも十分速い。本当に速い!

SPA西浦のインフィールドはとてもタイトだ。ワインディングよりも小さなヘアピン切り返しもある。そこで10Rのハンドリングはとても軽い。リーンしようと思った瞬間に前輪に舵角が付き、バイクが勝手に曲がっていくような感覚だ。

その感覚があまりにも速すぎて思わず腕に力が入りハンドルを押さえてしまう。タイトなコーナー、そして探るように乗っていると、超高速域も想定しているサスペンションは当然動かない。

それでも好印象だったのはスロットル開け始めの反応で、ここは徹底して開けやすさをつくり込んでいる。ただし、「ロード」モードでも少し大きめにスロットルを開けると怒涛の加速を披露。トラクションコントロールも早めから介入するが、結構大きく前輪を揺らしながら加速していく。
そして誰もが走り出したら感じられるアップ&ダウン対応のオートシフターは、低中速を繋いで走るような走りでも抜群に使いやすい。

身体とタイヤが暖まってきた。少しずつ使うギヤを下げ、高回転を使ってみよう。

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アップ&ダウン対応のオートシフターは秀逸。低中速を繋ぐようなシチュエーションでも機能。ツーリングなどでもかなりライダーを助けてくれるに違いない

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サスペンションは前後SHOWA製。もちろんフルアジャスタブル。タイヤなどにもよるが、超高速サーキットでない限り少し柔らかめにセットする方が良いかもしれない

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10R初のTFTメーターを採用。キーをオンにするとリバーマークが出現。メーター画面もシチュエーションに合わせて選べる

しっかり荷重をかけ、しっかりスロットルを開けていく

ピットインしてモードを「スポーツ」に変更してみた。スロットル開け始めのピックアップが良くなったが、基本的に開けやすい特性はそのままだ。ただしこのコースだとなかなかトラクションをかけられるコーナーがなく、ペースをあげるとインフィールドは1速になってしまう。

最終コーナーを1速で脱出し、トラクションコントロールを効かせながら、ストレートはオートシフターを使いながらスロットル全開のまま3速までシフトアップ。ウィリーする気配はなく、前輪が揺れだすが、電子制御式のステアリングダンパーがよく機能するため、スロットルは全開のまま。

1コーナーは、220km/hくらいからブレーキングして1速までギヤを落とす。10Rのオートシフターは何も考えずにペダルを踏み下ろせば、まさに理想的ともいえるシフトダウンを見せてくれる。

だからライダーはブレーキングとリーンのタイミングだけに集中できるのだ。シフトダウンの回転合わせをしなくていいというだけで、こんなにも進入のアプローチが楽になるのだ。

1コーナーを曲がってからはメリハリのある走りを求められる。止める、曲げる、加速するという操作を意識して明確に行う。でないと今回のコースだと10Rのサスペンションは動いてくれない。10Rが想定している速度レンジよりもかなり低いため仕方ないだろう。

ただそれができると10Rはきちんと応えてくれる。でも、少しでも難しいとか、手に負えない不安を感じたらサスペンションを柔らかめにして走り出した方がいいだろう。もちろんそれに応えてくれるフルアジャスタブルのサスペンションが装着されている。

それからもうひとつ。公道ならこのタイヤで十分だが。サーキットを少し頑張って楽しみたいなら、やはりタイヤはもうワンランク上のハイグリップタイヤがオススメだ。その方が10Rって凄い! を感じやすい。

どんなシチュエーションで200psオーバーのスーパースポーツを楽しみたいか……。その用途に合わせて各部をアジャストすることで、10Rを少し身近に感じることができるはずだ。

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KRTの他にブラックを基調にしたカラーも用意。229万9,000円

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加速では後輪に荷重。前輪荷重がなくなってきたら上半身を伏せる。スーパースポーツに乗る時はバイクの上で休んでいる暇はない。バイクと戦いながら、会話しながらその戦闘力を引き出していく

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ストエレートエンドは3速全開からフルブレーキングして、1速までシフトダウン。シフトダウンは乱暴に言ってしまうとシフトペダルを踏み込めばOK。もちろんスロットルの回転合わせも必要ない

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様々な電子制御を自分に合わせ込んでいくのも楽しい作業。スーパースポーツは、電子制御、タイヤ、サスペンションなど、自分に合わせるためのツールを駆使して楽しみたい。

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SPEC

Specifications
KAWASAKI Ninja ZX-10R/ZX-10RR
エンジン
水冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量
998cc
ボア×ストローク
76×55mm
圧縮比
13対1
最高出力
10R=203ps(ラムエア加圧時213.1ps)/13,200rpm
10RR=204ps(ラムエア加圧時214.1ps)/14,000rpm
最大トルク
10R=115Nm(11.7kgf-m)/11,400rpm
10RR=112Nm (11.4kgf-m)/11,700rpm
フレーム
アルミツインスパー
装備重量
207kg
キャスター/トレール
25°/105mm
サスペンション
F=テレスコピックφ43mm倒立
R=スイングアームモノショック
ブレーキ
F=φ330mmダブル R=φ220mm
タイヤサイズ
F=120/70-17 R=190/55-17
全長/全幅/全高
2,085/750/1,185mm
軸間距離
1,450mm
シート高
835mm
燃料タンク容量
17L
価格
229万9,000円(10R)、328万9,000円(10RR)