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このバイクに注目
SUZUKI
XF4 / XF425 / XF5
1991 TokyoMotorShow model

1991年東京モーターショーにスズキは3種の「2駆」を展示していた!【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

砂漠やオフロードの踏破をテーマに開発していたドリームバイクの途中経過報告!

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1991年の第29回東京モーターショーに、スズキは3種の「2駆」もしくは2WD、つまり前後輪とも駆動する試作バイクを参考展示していた。
そもそもスズキは、モーターショーで夢のバイクを積極的に展示してきたメーカーだ。
それもカタチだけのデザイン習作ではなく、実際に走らせている段階の試作車を、その未来指向に富んだデザインでライダーに「夢を見せてくれる」のが基本姿勢。
この1991年でも、XF4と呼ばれるレジャーバイクと、さらに砂浜のビーチで遊ぶイメージのXF425、そしてモトクロッサーのXF5と、それぞれ走行テストを重ねているのが伝わる試作モデルだ。
先ずは気になるのが前輪の駆動方法。
XF4では、フロントのサスペンションをアールズフォーク・タイプで構成、エンジンの出力を車体左側からの画像(2WDと表記)にあるエンジンヘッドへ向かうユニットに、後輪駆動とのバランスを自動でコントロールするシステムを介し、エンジン上部からアールズフォークのアッパーへ設けたシャフトとをチェーン駆動、そして左側にアールズ基部のスイングアーム・ピボットまで真下に向けチェーン駆動、そこから前輪まで前方向にチェーン駆動と、かなり複雑な構造となっている。
海外での特許(意匠)申請イラストでは、舵角への対応はアールズのアッパーでジョイント対応しているようで、あまり深くハンドルを切るのは難しそう。
釣りざおケースを装備しているように、渓流近くの獣道でもトコトコと踏み入って行ける「2駆」というワケだ。
エンジンは2ストローク125cc、全長1,980mm、全幅760mm、全高1,070mmで車重120kgでオートマチック無段変速と発表されていた。

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XF425のほうは「2駆」の基本構成をXF4にほぼ共通するが、ショックユニットの取付など段差の大きな場所より砂浜のような平滑な条件へ対応した構成。
ご覧のように遊びゴコロ満点のデザインで「アグリーダック」みにくいアヒルの子とニックネームがつけられ、ファンキーな雰囲気をさらに盛り上げていた。

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そしてXF5は、説明するまでもなく純粋にオフローダーとしての性能向上を「2駆」がどこまで拡げられるかの可能性を探るプロトタイプ。
こちらの前輪駆動は、フロントフォークに沿ったチェーン駆動。
長いサスペンションストロークとの干渉を解決するまでには至ってないようだが、前輪も駆動できれば瓦礫の上など進行方向や旋回性能など、よりポテンシャルが高められるとの理想を追い求めている。
しかし「2駆」の実用化が容易くないのは、これだけ長い二輪車の歴史でまだ製品化されてない事実が明確に物語っている。
ズバリ、前輪は4輪と違ってハンドルを切って進路を変えていくのではなく、後輪の傾きで車体が旋回するのを前輪は外周をなぞるように追従する原理だからで、この前後輪のバランスを阻害せず、あくまでも補助的に前輪も駆動してみようという試みだからだ。
そうした試作は世界中で散見されてきたがどれも小さな研究レベルで、大メーカーが取り組むモノには見えにくくなっていた。
それを承知で苦しむ覚悟をみせつつ、こうして夢をみせてくれるスズキの姿勢はファンにとってまたとない嬉しい希望の光でもある。

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実はもっと前の1985年、第26回東京モーターショーでスズキのブースに真っ白な「未来バイク」が展示されていた。
しかしDOHCのカムシャフトを前後連結した2気筒で3本にまとめたり、ハブセンターステアの前輪操舵、さらには油圧を多用するなど「未知の領域」だらけ。
それでも実用化されていない部分は従来構成にしつつ、まずは走らせてその動画をファンに見せるというのがスズキの姿勢だった。
このファルコラスティコと呼ばれるドリームバイクは、1987年の東京モーターショーにNUDAと名づけられその進化バージョンとして展示されていた。
ところが見落としがちだったが、この試作モデルで海外申請していた特許(意匠)イラストをみると、何と前輪もシャフト駆動する「2駆」。
このXF4系の前から、スズキは機会ある毎に「2駆」にチャレンジしようとしていたのだ。
バイクファンならば、モーターショーではこうした「夢」を見せて欲しいと願うのは当然のこと。
ぜひとも各メーカーに期待したいところだ。