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このバイクに注目
YAMAHA
GTS1000/ GTS1000A
1993~1998model

GTS1000に未来を託し10年以上諦めなかったハブステア!【このバイクに注目】

1989年の画期的なモルフォ展示から4年で新たなフラッグシップをリリース!

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スポーツバイクのフロントサスペンションは、一部の例外を除いてほぼテレスコピックフォークという、2本の円筒が伸縮する構造ばかり。
車体が傾くと旋回方向へ追従しながらスムーズに曲がれる仕組みで、シンプルでコストもかからない利便性で広く採用されてきた。
ただ高性能化で、超高速からの減速Gなど大きな負荷が加わると、円筒が伸縮する際にインナーとアウターの嵌合部分(お互い嵌まっている長さ)に撓む(たわむ)応力がかり、衝撃吸収する動きを止めてしまうほど妨げる
これは前輪の路面追従性を著しく損ない、安定性を欠き転倒のリスクもある。
この減速Gに耐える面と、衝撃を吸収する面とを切り離そうとする、ひとつの手段がハブ(センター)ステアという方式。
日本の4メーカーもレースでの新規開拓やモーターショーでの試作展示などに何度も見られた方式だが、構造がやや複雑なことのあって、実用化は海外の小メーカーや工房に限られていた。
そんな中、ヤマハは1993年にGTS1000A(ABS装備モデルにはAが付加される) の市販車をリリース、世界から注目を浴びたのだ。

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ヤマハはこのハブステア実用化には、以前から相応にステップを踏む時間をかけていたのだ。
先ず1986年にアメリカのRADDと呼ばれる片支持スイングアーム方式(MC2)と提携、これをベースにデザイン習作でもある「モルフォ」を1989年の東京モーターショーへ参考展示、未来的な様相に多くの関心を集めていた。
南米に生息する「美しい」を意味するモルフォ蝶。その神秘的なブルーに染められた神秘的なマシンは、ハブステアの仕組みだけでなくライディングポジションを前傾からアップライトへツーリング途中でも変えられる仕掛けを装備。
ハンドルの高さや前後位置が連動して可変で、さらにはグリップの角度も調整ができて、シートの高さや前後、それにステップまわりも変えられる凝った仕様でヤマハの未来バイクへの意欲を感じさせていた。
ただ1990年が近づくにつれ、大型バイクは単に最速を競うのではなく、ライダーそれぞれの嗜好でメーカーやカテゴリーを好みで選択する傾向となり、ヤマハも長距離ツーリングをより快適により豪華に、そして個性的に走りたい層へ向け、このハブステアとを結びつけ、実用化する目途をつけ開発に集中していった。

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そして1992年のIFMAケルンショーに、ヤマハはGTS1000の車名で片持ちアームのツーリングスポーツをリリース。
基本構造は、エンジンを両側から挟むアルミシャシー(そのカタチがΩの文字に似ていることからオメガ・シェイプ・シャシーとも呼ぶ)の前後両端に、スイングアームが両方へ伸びるフォルムで、フロントまわりはRADDをほぼ踏襲、前輪のハブ内でキングピンとを結ぶロアアームと目立たないアッパーリンクとで、若干のキャスターアングルをテレスコとの違和感をなくすため変化させる設定としてある。
ライダーからの舵角操作にダイレクト感を与えるアップライトアームに擬似ステアリング軸を設け、通常のテレスコから乗り換えを容易くしたり、減速Gで微妙にノーズダイブ傾向を与えてあるなど、馴染みやすさへの配慮が大きい。
エンジンはFZ1000をベースに、DOHC5バルブの1,002cc。100.6ps/9,000rpmで最大トルクは10.8kgm/6,500rpmと強大だ。
乾燥重量は246kgと、装備や車体ボリュームから想像するより軽量に収まっていた。

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果たしてエンジンからシャシーまで、全体に低い位置にまとまる低重心からくる絶大な安定感と、減速Gにも変化が僅かで少しの傾きで進路が変わる新感覚もあって、予想したよりは受け容れられる兆しで、とりわけタンデムのような荷重が大きく増えても、車体の挙動が変わらず軽快さも保たれるメリットはツーリングのヘビーユーザーには大好評。
ただオメガ・シェイプ・シャシーより上部に位置する、カウルやスクリーンなど内側から支えるパイピングを含め、停車時や微速で上部がユラつく感触があり、意外な違和感として評価にブレーキをかけていたネガ要因も少なからず売れ行きに影響を与えていたようだ。

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しかしながら、先ずはツーリングモデルとしてのフラッグシップ的な位置づけを得られたようで、賛否両論ありながらも1998年までグラフィック変更程度で継続生産されていた。
ただ特異なカテゴリーとして扱わられる他バイクとの溝は、時間が経過しても埋まることはなく、個性を重んじるライダーばかりでもないことから継続を断念することになってしまった。
最近ではカワサキから、イタリアのビモータとの提携で、TESI H2が両側2本アームのセンターハブ方式で登場、並外れた安定感の高評価を得るなど、こうした構成も徐々に進化を遂げている。
ヤマハにもそうしたチャレンジを、諦めずに続けてもらいたいと願うばかりだ。