yamaha_morpho_gt1000_20240311_main.jpg
このバイクに注目
YAMAHA
MORPHO / GT1000
1989 Tokyo Motor Show model/ 1993

ヤマハMORPHOが辿った夢の境界線!?【このバイクに注目】

1989年の東京モーターショーに斬新なコンセプトのモルフォを展示!

yamaha_morpho_gt1000_20240311_01

南米に生息する「美しい」を意味するモルフォ蝶。その神秘的なブルーに染められた謎のマシンが、1989年の第28回東京モーターショーのヤマハ・ブースに展示された。

ライダーを新しい世界へ羽ばたかせる意味合いを込めたこのコンセプト・モデルには、ライディングポジションを前傾からアップライトへツーリング途中でも変えられる仕掛けを装備。
ハンドルの高さや前後位置が連動して可変で、さらにはグリップの角度も調整ができる。
加えてシートの高さや前後、それにステップまわりも変えられるという凝った仕様だ。

yamaha_morpho_gt1000_20240311_02
yamaha_morpho_gt1000_20240311_03

ただメカ好きなバイクファンには、前輪が片持ちでリーディング・アームと、通常のテレスコピック方式のフロント・フォークでないことが注目を浴びた。
1986年にRADDのMC2という、この方式の試作バイクへヤマハも関わっていたので、いよいよ開発へ本腰を入れたと期待感も高まったのだ。

しかしこのデザイン、いま見ても斬新で所有欲をそそるフォルム。ドリームバイクでも、どこか現実的な感性が伝わり、どうせショーモデル……という気持ちにさせないところが素晴らしい。

yamaha_morpho_gt1000_20240311_04

翌1990年にモルフォIIを展示、新しい感覚で繋いでみせたものの……

yamaha_morpho_gt1000_20240311_05

続いて翌年の東京モーターショーに、このモルフォをII(2)として、カラフルで曲面も鮮やかなボディを纏って展示された。

yamaha_morpho_gt1000_20240311_06
yamaha_morpho_gt1000_20240311_07
yamaha_morpho_gt1000_20240311_08

400ccクラスを前提にしたコンパクトさだったが、可変ライディング・ポジションの仕組みは影を潜め、とくにテクノロジー的な提案もなく、官能的なデザイン・アピールが却ってリアリティを失わせ、テレスコピック・フォークの短所を補う革新的なフロント・サスペンションへ進化するだろうという期待感も薄れ気味。
あのサスペンションは、どうやら実用化する気はないらしい……そう思わせた2年後、ファンは愕然とさせられたのだ。

オメガフレームに片持ちフロントサス、GTS1000のリリースで実用化へのチャレンジが続いていたのを立証!

yamaha_morpho_gt1000_20240311_09

1992年のIFMAケルンショーに、ヤマハはGTS1000の車名で片持ちアームのツーリングスポーツをリリース。
長距離ツーリングで、減速で前のめりしにくい安定したハンドリングに、オメガ・フレームで従来のバイクとは比較にならない超低重心という全く新しい車体構成だ。

yamaha_morpho_gt1000_20240311_10

エンジンはFZ1000をベースに、DOHC5バルブの1,002cc。100.6ps/9,000rpmで最大トルクは10.8kgm/6,500rpmと強大だ。
エンジンを両側から挟むようなオメガ形状のメインフレームに、前後ともにスイングアームが伸びる特異なレイアウト。
乾燥重量は246kgと、装備や車体ボリュームから想像するより軽量に収まっていた。

yamaha_morpho_gt1000_20240311_11
yamaha_morpho_gt1000_20240311_12
yamaha_morpho_gt1000_20240311_13

最大の特徴である片持ちフロントサスは、前輪のハブの中に操舵メカニズムを組み込むハブセンターとは異なる方式で、やや重量は嵩むがハンドルと操舵系はダイレクトに繋がっている構成。

yamaha_morpho_gt1000_20240311_14
yamaha_morpho_gt1000_20240311_15

しかしながら、先ずはツーリングモデルからの採用で、徐々に他カテゴリーへと波及するだろうといった期待には応えることなく、革新的なフロントサスは残念ながら封印されてしまった。
確かに前輪のグリップ感に乏しい感触なのと、ここまで超低重心となるとリーンの動きがライダーから下のほうで起きている違和感もあり、なかなか馴染めないという評価が少なくなかった。

しかしハブセンター・ステアは地道に熟成が続けられていて、違和感もなくメリットを感じられるレベルへと育っている。
ヤマハにもそうしたチャレンジを、ぜひ諦めずに続けてもらいたい。