デザイナーの「夢」をエンジニアたちが具現化しようと開発!


1999年、東京モーターショーにヤマハは「鼓動」をテーマにコンセプトモデルMT-01を展示。
アメリカ向けクルーザーに搭載した1,600ccVツインをベースに、ヤマハのデザインを創設時のYA-1から手がけてきたGKデザインの習作……と誰もが遠回しに眺めていた。
このいかにもコンセプトモデル然とした異彩が、何と2004年のインターモト・ミュンヘンに2005年からの製品として出品され、世界中を唖然とさせたのだ。


1999年のXV1600 Road Star Warriorや2002年のXV1700PCに搭載されていた空冷48度Vツインエンジンをベースに、吸気・排気系及びクランク系等を新設計、トルク特性・パフォーマンスを大幅に向上させたほぼ新設計のOHVを搭載。
シリンダー当たり4バルブ・2プラグ、メッキシリンダー、鍛造ピストン、ペントルーフ型燃焼室によって、97×113mmのボア・ストロークで1,670cc、8.36:1の圧縮比から、思いきり低回転域の4,750rpmで最高出力66.3kW(90PS)、3,750rpmで最大トルク150.1Nm(15.3kgf)というスペック。

右側に見える太いプッシュロッド・トンネルの中には、吸排それぞれの細く長いプッシュロッドがあり、ヘッドにあるロッカーアームを駆動する、見紛うことなきOHV機構。
DOHCやSOHCの日本製エンジンで育ったライダーたちの心をときめかせた。



まさにエンジンに跨がるような車体構成に、タコメーターが5,500rpmからレッドゾーンという異次元の別世界は、想像の届かないほどの異彩を放っていた。
潤滑はドライサンプ方式。エンジン左前に見えるマス集中を兼ねた別体のアルミ製ダイキャストオイルタンクが、前方配置の効果で放熱効果を高め油温低下に貢献。
エンジンに対し超コンパクトなアルミ製フレームは、ヤマハ独自の“CFアルミダイキャスト技術”を投入、溶接レスの左右2分割ボルトオン構造で、ヘッドパイプ部とリヤピボット部のみをボルト連結するシンプル設計が特徴。
エンジンの搭載はヘッド懸架4ヵ所と左右クランクケース4ヵ所の合計8ヵ所リジットとし、エンジンを車体強度・剛性メンバーとしている。

さらにスイングアームは高次元の操縦安定性を引き出すために逆トラス形状アルミ製リヤアーム(アルミ金型鋳造の2分割溶接構造)を採用、低圧鋳造アルミ部材を相互に溶接してボックス構造を形成し、優れた剛性強度バランスを確保している。
またピボットシャフト締め付け方式は、通常のリヤアーム外側からフレームを掴む構造ではなく、内側から(1)フレーム、(2)リヤアーム、(3)フートレストブラケットの順で締め付ける構造を採用するなど、締め付けトルクの最適化による最適剛性バランスをの実現など、従来の方式を改革する手法を随所に採り入れた意欲作でもあった。因みに車重は240kg。




“ソウルビートVツインスポーツ”をコンセプトとし先端技術を随所に織込み開発したMT-01は、国内向けには注文生産という受注方式でリリース。
そのためベースのブラックが基調だったが、海外向けにはカラーリングのバリエーションでライダーの嗜好で選べる自由度の違いがあった。


2007年にはMT-01をさらにカスタムした先鋭的コンセプトモデルも発表。
また2006年モデルでは、ヤマハのレースカラーである赤白のグラフィックで、スポーツ性を強調したMT-01Sが発売された。
こうして海外では様々なバリエーションを展開。国内ではあまりの異彩に一般ユーザーから敬遠され、存在そのものが忘れられたような関心の低さだったが、海外向けのその生産は2012年まで続き、並行輸入で国内の数少ないファンへ届けられた関係で、いまでは中古車として希少な存在となっている。



