4ストローク2気筒の3作目はパフォーマンス最優先で鋭さを求めた!


1970年、ヤマハは初の4ストロークエンジンを搭載したトラディショナルなバーチカル(直立)650ccツインのXS-1で、世界のビッグバイクマーケットに挑戦を開始した。
続いて1972年に前傾ツインのTX750を頂点クラスの豪華スポーツとして投入、世界で人気が集中していた4気筒のホンダCB750フォアとは趣を異にする大人のスポーツをアピール。
ただはじめた4ストローク化が、パフォーマンス競争を避けていたイメージが強く、最新の技術力で勝負する姿勢を見せつけようと、1973年にDOHCで気筒あたり4バルブの高回転型ツインの投入を決断した。

ボア73mm×ストローク59.6mmといかにも高回転型ショートストロークの498ccは、48PS/8,500rpmと4.5kgm/6,500rpmのツインらしい中速域を意識させるスペック。
しかし実際にはそのポテンシャルが9,000rpmまでブン回して2スト・350ミドルクラスを振り切る、刺激的なキャラクターにチューンされていた。
初のDOHCの駆動は2気筒間のセンターではなく、右側に設けたコンパクトな通路で、燃焼室には吸気2本と排気も2本のバルブで構成する気筒あたり4バルブで合計8バルブをDOHCのカムが直接駆動、当時は4バルブはまだレース用の高次元な仕様で一般的ではなく、ハイメカの最先端を謳うひとつ。
そしてクランクは180°位相で、左右のピストンが交互に往復するため、動的バランスが良く高回転向きの設定で開発されていた。


ただ世界はナナハンへの人気が集中する状況が続き、日本では免許制度で400ccを越えると大型免許が必要となり、500ccクラスを購入しようという層は皆無に近かった。
さらに750ccを超えるビッグバイクの流れが生まれ、ミドルクラスも500ccではなく600~650ccが欧米でのメジャーな需要へとその構図が変わっていく節目に差し掛かっていた。


そこでヤマハはTX500のデザインを、1976年から400ccクラスに近いフォルムへとモデルチェンジ、型式名も仕向け地での事情によってXS500やGX500とそれぞれのシリーズの新たなラインナップへ組み込む車名としていた。
間もなく1980年に4気筒のXJシリーズが登場することになるが、欧米ではそれまでの間を繋ぐスタンダードな機種として、若い層を中心に手堅い存在だったのだ。

こうして輝いた時代はなかったTX500だったが、ミドルのスポーツ性とトラディショナルの融合がほど良いバランスで、飽きのこないデザインからいま見ても新鮮さを失わない秀逸さを感じさせる。
こうした創成期の先ず普遍性を大切に、そこへ新しさやスポーツ性を加える手堅い手法は、あらためていま求められているオートバイらしさに通じるモノがあるのかも知れない。



