空冷XJ400のジェントルさと真逆の水冷ハイパーと足回りまで気鋭のフル装備！
1980年、ヤマハは空冷DOHC4気筒のXJ400で、4スト・メジャースポーツ初のベストセラーに輝いた。
しかしこの状況にライバルが続々と新機種を投入、とりわけ強力な刺客となったのが1981年にホンダがリリースしたCBX400F。
これに対抗してヤマハが1983年に投入したのが、ヤマハで水冷を表す"Z"を加えたXJ400Zだ。
エンジンは完全な新設計、54.0mm×43.6.mmの399ccは55PS/11,500rpmと3.5kgm/10.000rpmと、クラス最強のスペックを表示。
点火カットが働く13,000rpmまで許容する超高回転型で、0-400mを12.8secで駆け抜ける750ccに肉迫する俊足ぶりでトップスピードも196km/hを誇った
このハイパーのためシリンダー壁の4隅に4バルブの逃げが削り込まれた、まさにレーシングエンジン並みの仕様。
それでもピーキーではなく、3,000rpmからでも加速をはじめるトルクの持ち主で、全域でフラットな特性という扱いやすさだ。
XJ400譲りの背面ジェネレーターで、エンジン幅は437mmとナロウに仕上がる。
そして水冷化でメカニズムが増えても、マグネシウム合金パーツなどで空冷と変わらない重量に収めていた。
また車体から足回りも、XJシリーズや2ストのRDやRZでハンドリングのヤマハと謳われた安定性ベースを踏襲、ダブルクレードルのフレームに込めたアライメントや、お得意のリバウンド・スロトークが深い設定に加え、ニューリンク式のリヤサスはコグドベルトでイニシャル・プリロードを外からリモート可変できるマニアックな方式を採用。
さらにフロントフォークには、圧縮側の減衰力が位置依存で変化するバリアブル・ダンパーが組み込まれ、深く沈むほど加圧に応じてンパーが強まる。
2スト系で伸び側に位置依存を組み込んでいたヤマハが、4ストではエンジンブレーキを含むフロント荷重の増加への対応をはかる、まだヤマハでのワークスマシンでしか採用していない高機能、それほどまでにこだわったハンドリングだったのだ。
しかしこうした機能は、一般ユーザーにメリットを伝えるには難しさを伴う。
そこで専門誌の広告で、シリンダー側にバルブリセス（逃げ）を削り込んでいることや、サスペンションの複雑な機構について広告ページで何カ月か連続で展開していたのだ。
またメインのXJ400Z-Sのミニカウルを取り去った純粋なネイキッドのXJ400Zは、グラフィックをXJ750〜900系に倣うなど、雰囲気を僅か柔らかな感性で包むという違いがあった。
果たして走れば速さを確実に立証できるパフォーマンスだったが、フラットなエンジン特性と穏やかな過渡特性にまとまるハンドリングは刺激的でなく、ヤマハが狙ったセンセーショナルなアグレッシブさは伝わらず、ジェントルなXJ系を継承したモデルと誤解されていたようで、ヤマハが期待したような販売に勢いがつくことはなかった。
そこで起死回生をはかり、翌1984年にはヨーロッパで人気のフルカウルに近い仕様でXJ400Z-Eを投入、カラーリングとグラフィックも2スト系に近づけたものの、それが功を奏することはなかった。
時代はレーサーレプリカ的な方向へ加速していて、こうしたツーリング・イメージは国内マーケットの反応はほぼない状態になってしまった。
とはいえヤマハも1984年に爆発的なヒットを飛ばしたレプリカルックのFZ400Rがデビュー、これを短期に誕生させられたのもXJ400Zの開発実績あってのことだった。
いずれにしてもXJ400ZやXJ400ZSは短命に終わったため、まず見かけることのない希少車となっている。
