A.エンジンの小型化やタイヤなどの進化が可能にしました
'80年代のバイクブームに興味を持ちはじめた
世代にとって、スーパースポーツのフレームは
太いアルミツインチューブタイプでした。
でも最近のスーパースポーツのメインフレームは
ずいぶん細くなっているように見えます。
パワーは上がっているのになぜ?
主にふたつの理由があります!
確かに近年のスーパースポーツは、以前に比べ全体的に見えるフレームの面積が少なくなっています。その理由のひとつは、剛性など要求される強度が、解析技術の進化で必要最小限の形状に設計できているからです。
フレームはもちろん強度を必要としますが、もう一方でコンパクトでありながら軽量であることも求められます。その場合、大きな荷重を受けるステアリングヘッドとスイングアームのピボット近辺の強度を確保して、これを結ぶ構成部分を短く直線的もしくはトライアングル形状など、捩り強度の高いカタチを解析することで必要最小限の大きさにデザインできるワケです。
さらにコーナリングで曲がりやすいよう、前輪と後輪との距離を短くするショートホイールベース化と、加速時に後輪が路面を蹴りやすいようアンチスクワット効果を高速時でも得られるロングスイングアーム化を狙うため、エンジンは前後長を短縮したカタチが求められます。
つまりステアリングヘッドとスイングアームのピボットまでの距離も短縮されますよネ。そうなればなるほど、フレームの構成メンバーはコンパクトになるため、見た目の太さなどを必要としません。これが最新のフレームが、以前より華奢に見えている主な理由です。
そして'80年代からのバイクファンの方にはぜひ知っておいていただきたいもうひとつの理由があります。
荷重がかかるステアリングヘッドとスイングアームピボットを直線的に結ぶことで、高い剛性を確保しながらシンプルな構造のフレームとしてツインスパータイプは登場した。近年はエンジンを剛性メンバーとして積極的に使い、同時にエンジン自体のコンパクト化が進んだことにより、フレームも必要最低限の設計となった。もちろん、メーカーによってその形状も様々にある。写真はスズキGSX-R1000R(タイトルカットはBMW S1000RR)
ラジアルタイヤの劇的な進化も後押し
それはタイヤの進化です。ご存じのように'80年代後半から、タイヤはラジアル化が始まり、いま大型バイクのほとんどがラジアルです。しかもラジアルタイヤは依然として毎年進化を遂げ、構造は益々シンプルに軽量化も進んでいます。
これがフレーム強度とどう関係にあるかといえば、路面からの揺れというか車体を揺さぶる応力を、相当な割合で吸収減衰しているからです。
まず以前のバイアスタイヤで考えてみましょう。タイヤはクロスプライといって角度をつけた帯状の繊維が内部構造の強度を確保していました。これが傾いたりタイヤの中央以外からの衝撃を受けると、タイヤを装着しているホイールのリムとの距離で近いほうが遠いほうへ押し戻す反力を生じます。これがスイングアームを捻るチカラとなり、車体を揺することに繋がります。
ところがラジアル構造は、路面と接しているトレッドに回転方向に沿ったベルト状の繊維と、90度直交したホイールのリムからリムへと結ぶ繊維とで構成されています。このため舗装路面からの衝撃やグリップによるデフ(凹み)をトレッドで吸収するだけでなく、短いサイドウォールが大きく撓んで動きを減衰してしまうため、直立状態はもちろん、傾いた状態でも、路面からの応力がバイアス構造のように車体を揺するチカラとしてほとんど作用しないのです。
そうなると、車体の強度は比較にならないほど必要がなくなります。初期はそうはいっても完全なラジアル化が果たせず、まだ揺れに対する強度を必要としていましたが、この10年間ほどでどんなバイクでも超高速域で安定して走れるまでに進化しました。これがそもそもフレーム強度の要求度を根本的に覆してしまったのです。
もはやフレームレス? のバイクも
エンジンそのものを剛性メンバーとして使うことで、フレームの軽量、コンパクト化が進んでいる。その最たる例が、ドゥカティのパニガーレシリーズ(写真はスーパーレッジェーラV4)。写真にように、見慣れた一般的なメインフレームがなく、ステアリングヘッド付近にあるエアクリーナーボックスを兼ねたモノコックフレームとサブフレームのみ。もはやフレームレスといっても過言ではない車体構成となっている