Z900RS CAFEのグリーンのボディにゴールドのオーリンズが映える。倒立フォークを正立化、モノサスを2本サス化しているが、そのスタイルに違和感はない。むしろZらしくてカッコいい
Zらしさを取り戻すため、正立フォーク&2本サス化。パワーは3割増しを実現!
Z900RS&Z900RS CAFEをパワーアップしたいというオーナーはかなりのマニアなのだと思う。実際インジェクション化され、電気が複雑になった最新バイクのチューニングはそれなりにハードルが高いのも事実で、そんなマニアックなオーダーに応えられるショップもそう多くない。しかし、MSセーリングは、ZRX1200DAEGにスーパーチャージャーを搭載したりとそのあたりのチューニングに長けるショップ。 このZ900RS CAFEのチューニング内容の凄さは、こちらのグラフを見ていただくと一目瞭然!
STDは97.75ps。ケイファクトリーのフルエキと燃調セットで約110psになるが、圧縮比アップとレブリミット引き上げで127.02psを発揮!パワーはノーマル比+30psを実現している
繊細で耐久性の高い、エンジンチューンの内容を見てみよう
エンジンはシリンダーベース(クランクケース側の接合面)を0.8mm面研して圧縮比をアップ。カムシャフトやバルブスプリングをZ900用に交換して高回転に対応。燃調はサブコンのラピッドバイクでセットしている。
こういった純正部品を流用するチューニングは、MSセーリングが得意とするメニューだ。ZRX1200時代もZZR1200のパーツを流用しながらチューニングを進めてきた。これは耐久性や組みやすさを重視した結果。そもそもどの純正パーツが使えるかの検証からスタートするため、MSセーリングの長年のノウハウが生きる。
エンジンの外観に大きな変化はないが、そのフィーリングは別物。アンダーガードはマジカルレーシング製、コアガードはモトコルセのチタン製、ポイントカバーはドレミコレクション製
エンジンはとにかくレスポンスに優れ、タコメーターの針が忙しく、元気良く踊る。5,000〜6,000rpmあたりまでは、いかにも圧縮比の上がったフィーリングでノーマルの1.5倍くらいの勢いで加速していく。そこに扱いやすさはなく、高回転でもストレスなく吹けていく。
並列4気筒ならではのスムーズさとレスポンスのよさ、それが強調されている印象だ。
正立フォーク&2本サスが見せる、軽快ハンドリング
車体もこれだけ手が入っていると、セットアップが大変そうだが、むしろノーマルよりも軽く、扱いやすいハンドリングに驚かされた。前後サスペンションは、よく動く設定。さらにオーリンズならではの初期作動性の高さと、高荷重時の安心感がスポーティな走りを実現。高性能サスペンションならではの上質な乗り味も見せてくれる。
また今回はタイヤにミシュラン製のパワーカップエヴォを履いていたが、スポーツハイグリップ特有の運動性を引き出しやすかったのも好印象。
ノーマル比+30psのエンジンも、セットアップされたこの車体だったからよりスロットルを大きく開けられたのかもしれない。
Z900RSのノーマルに与えられた“倒立フォーク×モノショック”は、ネオクラシックの姿と現代的なハンドリングを生む上でのメーカーの選択。Zをいま風に解釈するとあの姿になるのもよくわかる。しかし往年の“Zらしさ”を好むなら、MSセーリングが仕上げた“正立フォーク×2本ショック”こんなスタイルを目指すのもありだろう。
しかし、ここまで手を入れるのは実は大変なこと。パーツを購入して組み付ければカタチにはなるが、違和感なく走らせるのは本当に難しい。セットアップには大きなノウハウが必要なため、きちんとしたショップに相談するのが得策だ。
オーリンズ製の正立フロントフォークにブレンボキャリパーをラジアルマウント。トリプルツリーやキャリパーサポートはケイファクトリー製。タイヤはミシュランのパワーカップエヴォ。フロントフェンダーはマジカルレーシング製。2本ショックに対応するスイングアーム、サスペンション上部の受けなどもケイファクトリー製だ
ビキニカウルはCAFEのノーマル。ハンドルはマジカルレーシング製のカーボンで、カーボンミラーも同社製。ミラーやハンドルの軽量化はハンドリングにも貢献
アルミ削り出しのステップはケイファクトリー製。アップハンドル化した際のポジションも決めやすい
Z900RS CAFEのフロントフォークを倒立から正立へ、リヤサスを1本から2本へ。時代には逆光しているが、Z900RS CAFEにはよく似合う。随所に装着されるカーボンパーツはマジカルレーシング製だ
雑誌RIDE HI NO.8
RIDE HI NO.8では、2022年に50周年を迎える『KAWASAKI Z1』に試乗!