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チェーンの張り過ぎに注意!【ライドナレッジ038】

Photos:
本田技研工業,藤原 らんか

ピンと張ったら弊害だらけ!

ふと気がついたら愛車のドライブチェーンがダラリと垂れ下がっている。そういえば気にしないで1年以上も乗ってたんで……と、工具でそこそこ張りがでるまでチェーン調整をしていたら、それってかなりアウトな状態。なのでこれを読んだらすぐチェーンの真ん中あたりで20~30mm遊びがあるくらいまで緩める必要がある。
ただやみくもにチェーンを張るのはご法度!
一番の不都合はリヤサスペンションが必要なストロークが妨げられ、途中で沈むことができない状態へ陥ってしまうこと。
サスが衝撃に対して沈まないと、ショックはすべてタイヤが吸収しなくてはならず、突起物が大きいとホイールのリム部分を曲げてしまい、チューブレス・タイヤだと一瞬でエアが抜けて突然の転倒!てなことになりかねない。
またこの状態が続くと、エンジン側のドライブ・スプロケット駆動軸のベアリングに大きな負荷が加わり痛めてしまいかねないのと、同様にリヤホイールのアクスル(車軸)のベアリングにも要らぬストレスがかかって耐摩耗性の寿命を縮めてしまう可能性がある。

エッ、リヤサスのストロークでスイングアームが扇状に動くと、ドライブチェーンの張りというか遊びが変わってしまうなんて知らなかった……という方も少なくないはず。
じつはリヤサスが縮むほど、ほんとんどのバイクはドライブチェーンが張ってくる。
とくにパワフルなスーパースポーツや、サスストロークが長いオフ系やアドベンチャー系ほどこの傾向は強い。

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駆動力が加わるとタイヤを押し付ける方向へ応力が働く(加速でリヤは沈まない!)

愛車のスイングアーム付け根のピボット付近をよく見ると、チェーンがスイングアーム上面と擦るため樹脂製のスライダーが装着されているのに気づくはずだ。
なぜこんなスライダーが必要なのか……その前に、もしもエンジンの駆動力でチェーンが張って、それがスイングアームをサスが縮む方向へスイングさせたらどうなるか、タイヤは路面から離れる方へ引っ張られコーナリング中であればスロットルを開けた途端リヤが滑ってしまうことに。
そうならないように、エンジン側ドライブスプロケット~スイングアームのピボット軸~後輪のドリブンスプロケットとの3点間の位置関係を、スイングアーム・ピボットが高くなるよう設定しているのだ。
これで駆動力が加わったとき、後輪のアクスルシャフト(車軸)が距離の近いほう、つまり下側へ応力が働くというワケだ。
気がつかれたかも知れないが、かなり多くのライダーが加速するとリヤサスは加速Gで沈むと思い込んでいる。じつはそれだとカーブで加速できないアライメントになってしまう。
スロットルを開けると、どのバイクもジワッとテールリフトしようとしているのだ。
この駆動力が路面を効率よく蹴って、安定して曲がっていける能力をトラクションと呼び、バイクのかなり重要な基本機能となっていることもお忘れなく。
それはともかく、チェーンの真ん中付近で20~30mmの遊び、そしてリヤサスを上から強く押し付けてストロークさせたとき、チェーンがピンと張っていないかをチェックしておこう。

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