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タイヤが減ると滑りやすい原理を知って、新品への交換タイミングを逃さない!【ライドナレッジ185】

減り具合は溝が浅くなることで認識、でもウエット時に気をつければまだイケると思うのは重大なリスクに蓋をしたも同然!

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まだまだ寒い日が続くものの、時おり春の陽射しにいよいよツーリングの季節が近いと感じさせる季節。
そんなあちこちへ出かける夢を思い浮かべながら、気になるのが愛車のタイヤ……。
去年イイ感じで乗れるようになって、頑張って出かけているうちにタイヤの溝がかなり減ってきたのを確認していた。
でもリヤタイヤの真ん中にある溝は浅くなってきたけれど、滑ったら危ないカーブで接地する両側はまだ充分に深いのでもう少しはイケるだろう、そんな感じだったらこの記事の解説をシッカリ掴んでおいて欲しい。

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まずタイヤのトレッドにあるグルーブと呼ばれる溝は、雨が降ったウエット路面で水はけを良くして、水幕によるスリップを抑える役割があるのはご存じのとおり。
その溝がタイヤの摩耗で浅くなったり溝がなくなってしまうまで減ると、ウエット路面ではスリップして危険きわまりないのはもちろん、ドライ路面でもスリップしやすくなるのをご存じだろうか?
タイヤには内部にカーカス構造といって、ゴムの裏に繊維が巻かれ内側に空気を充塡するとこの繊維が膨らみを抑えることで、簡単には凹まない空気圧を保つワケだ。
この空気圧、これがバネとなって走行する路面の凸凹へ追従してグリップ。
ただ荷重がしょっちゅう変わるオートバイでは、タイヤが路面に接地するトレッドの柔軟性がグリップ性能を左右する。
このトレッドの柔軟性は、よくいわれるコンパウンドと呼ばれるゴム質で決まると思われがちだが、路面の僅かな凸凹など接地を安定させるのに、このグルーブ(溝)が功を奏するのだ。
グルーブはまずトレッドの厚みに変化をもたらす。溝が刻まれている部分はトレッドゴムが薄く変形しやすい。また溝の縁が折れ込んだりと、さらに柔軟性を助ける。

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つまり溝が浅くなると、そうした柔軟性が低下して追従性が損なわれるわけだ。
さらに溝が浅くなっていくと、今度はトレッドが振動して路面の凸凹の頂点だけ触れていく、つまり大きくスリップする事態に陥るのだ。
トレッドの表面を覆うゴムと、その裏側で構造を支える繊維層との距離は、オートバイのように大きくない荷重でも柔軟でいられるよう意外なほど薄くなっている。
つまりトレッドのゴム層が薄くなると、小さな衝撃を吸収する層がなくなり繊維層の動きが追従性を決めることになり、その動きのピッチが小刻みだと吸収の動きでリカバーできず単に振動するだけに陥りやすい。
これが一気にスリップダウンする大きな要因のひとつなのだ。

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ということで、このトレッドのグルーブには一部底上げをしたスリップサインが仕込まれている。
専門的にはTWI(トtレッド・ウエア・インジケーター)と呼ばれ、接地するトレッドとサイドウォールとの境目あたりに△マークと共に表示されている場合もあって、その位置からトレッド中央側に目を移すと凡そ1.6mmほどの小さく膨らんだ部分が溝の中にある。
これが接地すると溝が浅くなって追従性が劣化していますよ、というサインとなるのだ。
実はこのスリップサインが接地するようになると、ここから劇的にグリップしなくなるというのを知っておくべきだろう。

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そもそもこのカーカス(繊維)層の材質も、高性能なタイヤには繊維そのものが振動しにくく伝搬も抑える素材が使われている。
その典型がレーヨンで、繊維そのものに減衰特性があり振動で一気にスリップダウンしない「しなやか」さをもたらしていたりする。
他にも最新素材でこうした本質的な次元で性能を保つのがハイエンドな製品で、海外ではこの素材表記をサイドウォールなどに義務づづけている。

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ということで、スリップサインの接地は「目安」というより「危険信号」そのもの。
万一のコトが起きたら、そこで惜しんだコストが後悔の嵐となるのは間違いない。
そして交換するときは、前輪がまだ溝があるからと惜しんだりせず必ず前後セットで交換しよう。
実はタイヤのゴム質は、空気中のオゾンで内部まで破壊される率が高いという宿命を負っているからだ。
走行距離や残っている溝の深さに関わらず、無条件に安心できるのは1年、安全性で許容できるのが2年、これを超えたらスリップサインが出ているのと変わらないと思って間違いない。
これが前後セットで交換をいわれる理由なので、安心安全のために是非履行されるのをお忘れなく!