フィリップ・スタルクがアプリリアMoto6.5をデザインした
デザイナー発のバイクとしてあまりにも有名なKATANA。
同様に1995年、アプリリアから登場したMOTO 6.5 も、フランス生まれの建築家でデザイナーでもあるフィリップ・スタルクが手がけた作品だった。
フィリップ・スタルク(Philippe Starck 1949年~)といえば、日本では浅草のアサヒビール本社横にある不思議な金色のモニュメントが有名だ。
このモニュメントは「聖火台の炎」。彼はこのように複雑な3次曲面を駆使したデザインが多く、建築にはじまり家具から食器まで多岐にわたる道具を手がけてきた。
中でも世界的に知れ渡っているのが、レモン絞り器『Juicy Salif(ジューシーサリフ)』。微妙な曲線を描く長く伸びた脚がオリジナリティの強さをアピールしている。
そんな彼が実はバイク好き。習作として曲面で構成されたバイク・デザインも発表されていたが、アプリリアの650シングルのデザインでは、そうした強烈な他にない奇抜な個性をアピールせず、意外なほどバイクらしいフォルムにまとめられていた。
バイク好きらしい現実的なデザインだった
1995年に登場したMOTO 6.5は、アプリリアの水冷DOHC5バルブ単気筒で、ボア100mm×ストローク82.7mmの649cc。
フロント18インチ、リヤ17インチでホイールベースが1,460mmという、いまでいうややアドベンチャー系的な構成だった。
大きくカバーされた燃料タンク(容量は16L)が広い面積で滑らかな曲面を描き、よくみるとラジエーターを囲む造形もデリケートな曲面構成。
パイプフレームの弧を描くカーブや、スイングアームの断面にも角を丸めたデザインが使われるなど、細部にまで統一性を感じさせるのはさすがだ。
ただカテゴリーとして明確な位置づけを感じさせないあたりが原因なのか、とくに人気もでないまま短期間で生産も終了してしまった。
しかしご覧のように、いま見ても魅力的なフォルムで、そのクリエイティビティとバイク好きが伝わる感性の良さが際立っている。