カジュアルから逞しさを与え250シングルを骨太に!

250ccのシングル・スポーツといえば、車検もなく維持コストも低いメリットから中心的な存在と思いがち。
しかし実際には高コストな4気筒スーパースポーツや、2ストのレプリカなど、'80年代を中心にパフォーマンス勝負の戦場となっていた時期が長く、シングル・スポーツはマイノリティな存在であり続けた。
ただそれでもメーカーのエンジニアは、250シングル・スポーツの大きな可能性を信じチャレンジを重ねてきた歴史がある。
その典型のひとつがヤマハSRX250。1984年にカジュアル且つ楽しめるスポーツとして、そのイメージから新しさをアピールする戦略でリリースされた。
ところが期待されたほどの人気にはならず、カウル装着モデルを含め鮮やかなグラフィック展開も試みられたものの、自然消滅的な流れに陥っていた。
そんな忘れかけた頃、1990年にデザインを大幅に変えたSRX250が再投入されたのだ。

折りしもヤマハのSRX400/600の個性派シングル路線も、レプリカたちに目が慣れてきたファンへ躍動的な刷新感をアピールしようと、デザインを3次曲面を多用した躍動的なイメージへとモデルチェンジすることとなった。
その渦中にあってSRX250も同じ感性のデザインへと変更、外装だけでなくエンジンにも手を入れ、前後を17インチホイールの最新仕様にリフレッシュしての再チャレンだった。



そもそもエンジンのベースはオフロードモデルのXT250T。DOHCの4バルブは単気筒ながらツインキャブレターの装着が特徴で、YIDSと呼ばれる4バルブの吸気側ふたつのポートそれぞれに、吸気圧でダイアフラムによるベンチュリー開閉と、スロットルグリップでダイレクトにピストンの開閉をする異なるタイプを連装。
低回転側でラフな操作を許容する面と、高回転域で必要な混合気を積極的に送り込む特性とを併せ持つエンジンとしている。
エンジン下に大容量のチャンバーを設けるマフラー容量の効果もあって、32PS/10,000rpmと250シングルでは当時の最強を誇っていたが、1990年モデル(形式名3WP)からは28PS/9,000rpmとスペック表示をかなり抑えることとなった。


この変更はカムプロフィールをよりパワーを得る側へ変更しつつ、ふたつのキャブレター口径をやや小さくすることで、タウンユースなど実用域でスロットルレスポンスとトルクを力強く呼び出せる特性へとチューン、走りは確実に強化されていたのだ。
さらにクランクシャフトのカウンターウェイトや1軸バランサーのウェイトも見直し、振動を抑えることでよりスムーズなだけでなく、ピックアップの気持ち良さも備えた熟成がはからるというフルモデルチェンジに近い手の入れようだった。


そして何より前後とも17インチ化されたことで、ハンドリングも落ち着きのある安心感が加わり、122kg(乾燥)の軽量さによる軽快感と共に走りを楽しめる面も大幅に向上していた。
ブレーキもφ267とディスクのローター径をアップ、ドラムだったリヤブレーキもディスク化され本格的なスポーツバイクとしての装備へとグレードアップしていた。
しかしここまでエンジニアが思いを込め走りも高く評価さてたが、メジャーとしての求心力が急激に高まっていた4気筒ネイキッドの前に掻き消されてしまったのだ。
資質の高い優れたシングルだっただけに、惜しまれる存在のひとつとして忘れ難いモデルではある。