XAXISが目指したスーパースポーツをレーストラックからストリートへ!
2001年の第35回東京モーターショーで、ホンダは2輪ブースにXAXIS(ザクシス)を試作車として参考出品した。
XAXISのコンセプトは、「アダルト層のユーザーに、造形美とハイテクノロジーを融合した独特のスポーツスタイルを提供する」ことを目的に、HRA(ホンダ・リサーチ・オブ・アメリ力)が製作したコンセプトモデルとの説明があった。
4灯プロジェクターヘッドライトをコンパクトにまとめたフロントカウル、ラジエーターをピルトインしたテールカウル、アンダーカウルを兼ねたマフラーなど、機能美を追求した斬新なスタイリングだ。
エンジンはツインチューブ・フレームの形状と1,000ccVツインとくれば、1997年にリリースしたVTR1000Fがベースであるのは一目瞭然。
VTR1000Fと同様にピポットレスで、スイングアームは片持ち式だが、何とフロントのサスペンションも存在感の大きな片持ち式を採用している。
その前輪のフロントブレーキにはリムに装着したディスクプレートと2個のキャリパーにより、強力な制動力を発揮するホンダでは初の試みがみられる。
コンセプトが狙ったスーバースポーツモデルを所有する喜びと操る歓びを具現化したと結ばれていた。
NAS(New American Sport)で発想の転換を提唱!
なぜこのタイミングに、しかもアメリカホンダのR&Dでデザインされたプロポーザルモデルが展示されたかについては、アメリカでスーパースポーツが置かれた状況から説明する必要がある。
東京モーターショーではXAXISと名付けられたこのバイク、もとは1999年の冬にHRAでスタートした、NAS(New American Sport)というコンセプトバイクのプロジェクト。
日常の製品化のための業務に追われている状況に対し、デザイナーやエンジニアが異なるスタンスで向き合おうというもので、きっかけはレーストラック(サーキット)でのパフォーマンスを最高峰とする価値観への疑問符だった。
頂点に君臨するスポーツバイクは、レースで開発されたエンジニアリングで構築され、その競争力の高さがそのまま評価となり販売成績に直結する……これはホンダにとって動かし難い事実。
しかしデザイナーをはじめ開発陣は、レースで勝つためのパフォーマンスは、実際の一般公道でユーザーが愉しむパフォーマンスと一致するとは限らない、そう思い続けてきた。
モータースポーツ好きのアメリカでも、レーストラック(サーキット)で走行を楽しむ層は極く一部に限られる。
スポーツバイクファンは、バイクの露出したメカニズムに魅かれ、外観を強調することでライダーの感情的な愛着を強化する全体の構成やデザインを優先すべきと結論づけたのだ。
そのため近未来、実現可能とユーザーがイメージできる範囲の技術革新を設定、これを所有したときにワクワクできるデザインを追求していったのだ。
それを象徴するのが、1本の太いサスペンションと片支持のフロントフォーク。カーボンファイバーとアルミで構成され、モノサスにはステアリング・ダンパーも内蔵される構想。
前方に口を開けたふたつのエア吸気ダクトは、片方がエンジン吸気でもういっぽうがリヤのラジエーターへ導くというモノ。
すべてがいかにも先進的な雰囲気を漂わせているが、NASチームはどれも非現実的なメカニズムはなく、数年で実用化できる内容に留めているのだ。
果たして東京モーターショーでの評判は、同じタイミングで展示していたモトGPマシンのRC211Vと比較されてしまい、憧れたり欲しくなる魅力として映らなかったようだ。
しかしクルマでいえば、スーパーカーのような誰の目にも豪華でスポーティ、そして憧れを抱くスーパースポーツのフォルムが、レーシングマシンに追随するカタチに準じていなければならないということはないはず。
実際にレーシングマシンとは結びつかない、フラッグシップの存在がその後に確立している。
そうした経緯も経たいま、このXAXISのフォルムに、もし製品化されたらかなりの興味を持てると思えるファンもいるのではないだろうか。