未体験のリスクを怖れないカワサキだから貫いた独創の塊

2000年に登場したカワサキのZX-12Rは、HAYABUSAに300km/hオーバーの最速の座を奪われたのに対抗、フラッグシップとして君臨してきたカワサキがその意地をみせるため執念に燃えたマシンだった。
しかもトップパフォーマンスを具現化するために、他にはないテクノロジーで圧倒する個性をアピールしなくてはならない命題を負っていた。



そして世界を驚かせたエンジン幅しかないアルミのモノコックフレームという独創のレイアウトがデビュー。
エンジンも車体を構成する強度メンバーとして新たに設計され、エンジンの両側を湾曲して包む込む、いわゆるツインチューブではなく、エンジン上部にバックボーンを配したアルミのモノコック構造として、車幅をZX-9Rの730mmよりナロウな725mm、フレームそのものもZZ-R1100より12kgの軽量化で車重を僅か210kgに抑えることに成功していた。
さらにリヤタイヤは、最大幅が200/50でZR17のウルトラワイドなサイズ。
そして航空機メーカーならではの、継ぎ目を完璧にフラッシュサーフェース化したカウルと、両サイドにダウンフォースを意識した小さなフィンと、320km/hを前提にしたフォルムが目を引く。


新設計されたエンジンは、巨大なボア径の83.0mm×55.4mmで1,199ccから178PS/10,500rpmとまさに当時の最強。
しかも最大トルクは13.6kgm/7,500rpmと、凄まじい力量を中速域から発揮するまさに化け物エンジンだ。
カウル先端に顔を出す吸気圧を高めるラムエアダクトはフレーム内のエアボックスを経由、吸気のみならずエンジン冷却へも誘導され、倒立フォークのボトムケースには超高速時の安定性と冷却も兼ねたフィンが備わるなど、これまでにない配慮がみられた。
ホイールベースは1,440mmで、1200ccのフラッグシップとは思えない短さ。コーナリング・パフォーマンスでレプリカ系に負けないロードホールディングの、どんなシチュエーションでも闘える仕様が込められていた。



果たしてそのパフォーマンスは、Ninja900から1000RXの次元を遥かに凌ぎ、ZZR1100を経験したライダーにも想像を絶するレベルにあった。
5,000rpmも回せば、200サイズのリヤタイヤがたまらずブラックマークを路面に擦り付ける強大トルクで、高回転域まで引っ張れば瞬く間に200km/hを超えグングンと加速する地上最強マシンを体感させるモンスターだった。



ただこの超軽量で超コンパクトな車体構成と、ウルトラハイパーなパワーソースとの組み合わせは、相対的に高剛性というよりビクともしない頑固な車体といった傾向が強く、いわゆる従順でしなやかなハンドリングとはならず、乗り手にとって手強い関係のマシンという印象を与えていた。
軽量でエンジンの両側にフレームのない運動性で、リーンのアクションは鋭いものの、ピタッと路面に押し付けられてからのグリップは強大で安定していたが、そこまでの過渡特性が腕に自信のあるライダー向けという難しさを伴う。
このため、やはりフラッグシップとレプリカは統合せず、それぞれの走りとライダーの傾向に合わせた特性としたほうが良いとの結論を得て、ZZR1200→ZZR1400へと進化を辿っていくことになった。



