ちょうどイイを捜すスズキならではの海外ユーザーに寄り添うマインド
スズキは1990年代後半に主にヨーロッパ、とりわけドイツのマーケットでライトなツーリングモデルの需要が増えていることに着眼。
たとえばBMWのF650がマーケットシェアを伸ばしていて、ヨーロッパをはじめ海外でのスタンダードなスポーツモデルのベースになると睨んだのだ。
そこでミドルクラスのDR650をベースに、よりオンロードツアラーとしてキャリアを装備する機能やミニカウルをマウントするデザインを構築、1996年に発表して翌1997年からマーケットへ投入したのだ。
果たしてXF650はFreewindと、解放感を誘う愛称も与えられ、新しさのアピールに成功し、ヨーロッパメーカーが先行していたライトなツーリングモデルとして順調なスタートを切った。
ライトなツーリングモデルのスタンダードに位置する
DR650ベースの単気筒エンジンは、ボア100mm×ストローク82mmの644cc。
最大出力は35kw(48hp)/7,000rpm、最大トルクが52Nm(5.3kgm)/5,500rpmと、扱いやすさに注力した設定。
車重はキャリアの浅いライダー意識して、乾燥で162kgと軽量に収めている。
足回りは前輪19インチで後輪は17インチの、タウンスピードで穏やかなハンドリングを前提とした設定。
そしてバイク雑誌の広告も、休暇をアウトドアで明るく過ごす健康的なイメージをアピールするなど、ニーズの拡大に積極姿勢をみせながら、このカテゴリーの将来に自信を深めていった。
ヨーロッパで定番の牙城を築き、V-Stromへと繋ぐ
そうした戦略の効果もあって、XF650 Freewindはオンロードツーリングモデルとして定着した。
車体色も明るい爽やかなカラーリングを纏い、親しみやすく乗りやすいと評判の旅バイクとしての人気を確立していった。
この勢いにスズキは、それこそドイツを中心に、もっと遠くへとヘビーなツーリングを楽しむ方向へエスカレートするライダーたちに向け、今度はVツインの旅バイクをリリースしたのだ。
このV-Stromはその後、アドベンチャー系デザインへと姿を変えていくのだが、日本メーカーがここまでユーザーに寄り添い、ニーズを的確に捉えた例は稀で、スズキ・ブランドへの信頼感が高まったのはいうまでもない。
日本国内向けには展開されなかったカテゴリーだが、今後のバイクライフを考えるとき、こうしたツーリングモデルの評価もぜひ気にしておきたい。