ユーロ5対応のNEWスピードツインは、クラシックとスポーツを高レベルで両立
トライアンフのモダンクラシックカテゴリーは、代表的なボンネビルを軸にスクランブラーやカフェスタイルのスラクストンなど、その名の通り、往年の英国車をオマージュしたスタイルが基本だ。
スピードツインのエンジンは、もちろん伝統のバーチカルツイン(リヤの車高が上がり前下がりの姿勢のため、正確にはエンジンが前傾しているのでバーチカル=直立ではないが……)を搭載するが、ディテールがそのスタイルにまるでマッチしていない……。
駐車してあったスピードツインを見たRIDE HIプロデューサーの根本も「凄いタイヤ履いてるなぁ〜」と唖然。タイヤは市販車でもっともグリップが高いといってもよいサーキットでもバンバン走れるメッツラー製のレーステックRR K3で、そのトレッドを見れば驚くほど溝が少ないことがわかるだろう。
もちろん違和感のあるディテールはタイヤだけではない。ブレーキキャリパーはブレンボ製モノブロックのM50で、マスターシリンダーはセミラジアルタイプ。スイングアームは剛性と軽さを両立したアルミ極太パイプで、フロントフォークは倒立タイプとなっている。
他にも一見クラシカルなダブルクレードルフレームは一部をアルミとすることで軽量化を徹底。ボンネビルT120と比較すると車両重量は、20kgも軽く仕上げられている。
1,200ccとは思えないほど車体が細く、ハンドリングも軽い。市街地では「レイン」&「ロード」モードがオススメ
ユーロ5対応エンジンは、7,250rpmで100psを発揮!
スポーツ性の追求は車体や足周りだけではない。1,200ccのエンジンはクラシカルな外観からは想像がつかないほどのレスポンスを披露。エンジンをかけた瞬間、「お! 元気だなぁ」と思わせる歯切れの良いエキゾーストノートを轟かせる。
さらにユーロ5規制に対応しつつ、前モデルから3psアップを実現。7,250rpmで100psを発揮する。出力向上だけでなくミッドレンジでの出力特性を追求し、最大トルクは前モデルより500rpm低い4,250rpmで112Nmを発揮。さらにクランクシャフトの軽量化やオルタネーターの変更により、前モデルよりも慣性を17%も削減している。
ちなみにボンネボルの最大出力は80ps/6,550rpm、最大トルクは105Nm/3,500rpmだからまったくキャラクターが異なることがわかる。
そして、実際に走り出すと、スピードツインのエンジンは驚くほどリニアにレスポンスするのだ。
エンジンはユーロ5に対応させると同時にパワーもアップ。トルク特性も大幅に変更している
大きなフィンを持つため空冷にも見えるが、もちろん水冷。エンジン前面に大きなラジエターを装備するがその存在感は低い
スロットルボディもきちんとデザイン。クラシカルなルックスに溶け込ませている。こういったディテールが趣味性を高める
伝統の継承
実は、スピードツインの車名は近年のものではない。
130年以上の歴史を持つトライアンフは、1937年に並列2気筒エンジンの元祖ともいえるOHV 500ccを搭載した5Tスピードツインを発表。まだまだシングルエンジンが全盛の時代に名匠エドワード・ターナーが製作したそれは、その後約50年間基本構造を変えずに支持された。
海外メーカーは同じ形式のエンジンを育み続けるが、トライアンフのバーチカルツインエンジンの原点はここにあり、市販車のみならず、様々なレースでも活躍した。
そんな名車の名を冠するのがこのスピードツインなのである。
メーターはアナルグ式の2眼タイプで、視認性は抜群。回転数や速度など欲しい情報だけが目に飛び込んでくるのがよい。エンジンのモードやギヤポジションも見やすい
クラシカルなスタイルには低番の丸型ヘッドライトが安心感のあるスタイルを約束。テールライトはLED
クラシックの枠を飛び越えたスポーティなキャラクター
跨るとスピードツインは驚くほどスリムだ。そしてアップハンドルにしては前傾しているし、シートも高く腰高だ。1,200ccとは思えないほど軽快で、ハンドリングも馴染みやすい。市街地でも6速/2,000rpmで巡航が可能で、低中速がとても扱いやすい。
車体が細すぎてホールド感がないところに若干違和感を感じるが、どんなシチュエーションでも軽さが際立つ。
エンジンの出力特性は「レイン」「ロード」「スポーツ」の3種類のモードから選ぶことが可能。その差は明確で市街地で「スポーツ」モードだと、ツキが良すぎて気を使うほど。「ロード」「レイン」は扱いやすさを重視し、ツインならではの鼓動感を楽しめる。スロットルを開けるたびに気持ち良さを教えてくれ、加速するのが楽しくなってくる。
市街地で「スポーツ」モードも試したが、270度クランクとは思えないほどのレスポンスを披露。クラシックスタイルによく似合うアナログ式のタコメーターが元気良く跳ね上がる。
モダンなシーンにも違和感なく溶け込む。ここでは高いスポーツ性を想像させないが、そんな独特のオーラが良い
ハンドルは立ち上がりの少ないバータイプ。ステップはかなり後退しており、ネイキッドにしては、ポジションはかなり前傾。リヤサスはオーソドックスな2本ショックだが、その全長はかなり長い
ブレンボのモノブロックキャリパーであるM50をマルゾッキ製の倒立フォークにラジアルマウント。足周りだけを見るとモダンクラシックな雰囲気は皆無
タイヤはメッツラーのレーステックRR K3。夏はそれほど気を使う必要はないが、それ以外の季節は温度依存の高いタイヤのためタイヤが温まるまでは「レイン」や「ロード」モードできちんとタイヤを温めたい
フロントブレーキのマスターシリンダーは、セミラジアルタイプ。マフラーは左右2本出しで、ノーマルとは思えない歯切れの良いサウンドを奏でる。スイングアームは軽量化と理想的な剛性を追求したアルミ製
リヤタイヤは160サイズ。クラシックバイクにしては太いが、近年のビッグバイクにしては細くて、これも軽快さに貢献。郊外のワインディングでちょっと荷重を増やしてみてもしっかり応えてくれるのはメッツラー製のレーステックK3のおかげだ。
向き変えの瞬間にスピードツインはイン側に向かってグイグイと曲がっていく。セルフステアに合わせて身体を追従させていく際のライダーのアクションは、まさにスポーツバイクそのもの。コーナリングではクラシカルなスタイルのイメージが完全に消えてしまうほどだ。
クラシカルな外観からは想像できないほどスポーティなスピードツイン。そのギャップを楽しみたいライダーにオススメしたい。
郊外に飛び出しコーナリングを楽しむ。かなりの高荷重も可能で、ライダーの操作にきちんと応えてくれる感覚はとてもダイナミックで、スポーツバイクのそれと変わらない
金属の質感や造形を大切にしたディテールが朝日に映える。どんな角度からでも絵になるし、磨いていても手触りが良い
「バイクに乗りたい!」そう思った瞬間に飛び出せる気軽さもスピードツインの魅力。重さや大きさ、速さやポジションが様々なシーンで心地よい
New Speed Twin– Global Reveal
SPEC
- 総排気量
- 1200cc
- ボア×ストローク
- 97.6×80mm
- 圧縮比
- 12.1対1
- 最高出力
- 74kW 100ps/7,250rpm
- 最大トルク
- 112Nm/4,250rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- ダブルクレードル
- 車両重量
- 217kg
- キャスター/トレール
- 22.3°/91.5mm
- サスペンション
- F=テレスコピックφ43mm倒立
R=スイングアーム+ツインショック - ブレーキ
- F=φ320mmダブル R=φ220mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=160/60ZR17
- 全幅/全高
- 780/1,095mm
- 軸間距離
- 1,415mm
- シート高
- 809mm
- 燃料タンク容量
- 14L
- 価格
- 168万6,000円~