img_article_detail_01

最近のマフラーはなぜどんどん短くなっているのですか?【教えてネモケン023】

oshiete-nemoken_023_main.jpg

A.前後左右のピッチングの動きを最小限に抑えられるからです

私がバイクに熱中していた頃のスーパースポーツは、シートカウルの下にサイレンサーがあるタイプが主流でした。
しかし、最近のバイクはエンジンの下から短いサイレンサーが出ているものが大半です。
マフラーが短くても長かった頃のように性能を出せる技術ができたということなのでしょうか?

バイクの重心バランスに大きく影響するマフラーの位置

確かに最新のスーパースポーツは、エンジン下から斜め横へサイレンサーが顔を出すスタイルが主流になっていますよネ。
20年ほど前はシートカウル下にサイレンサーを収めるスタイル、さらにもっと前は後輪の両側へ跳ね上がっていたり、4into1のように1本マフラーに集合したタイプも高性能の象徴でした。
それ以前の初期の4気筒、CB750FourやZ1などは誇らしげに4本のマフラーを見せていましたね。

基本的に排気系は長さと容量が必要です。しかし集合させるようになってから、クルマのマフラーと同じ途中に中で仕切板を設け、この部屋の中で迷路のように蛇行させることで、長さと容量を確保できるようになりました。
それを超コンパクトになったエンジンの下に置いたのが最新の仕様です。
しかし、最後のサイレンサー部分をどこに配置するか、これまでの歴史にスーパースポーツの車体設計が何を優先してきたかを垣間見ることができます。

ご存じのシートカウル下に収めたスタイルは、ドゥカティの916が最初でした。設計したイタリアの天才、マッシモ・タンブリーニ氏は、カジバの2ストロークGPマシン設計で学んだ結果だと説明していましたが、マフラーのカタチから違う4ストロークでまさかこの方法を採り入れるとは誰も想像していませんでした。
当時は車体の両側へ振り分けて後ろへ向かって跳ね上げるカタチのサイレンサーが主流でしたが、GPマシンは左右へバンクする車体の動きに対し、左右へ張り出したサイレンサーを車体の中心に配置する進化を遂げていました。

oshiete-nemoken_023_01

求めるものに合わせたレイアウトのマフラー

排気系は長さと容量が必要なだけでなく、大物パーツであるために、その配置はマシンの動きに大きな影響を与える。各時代でさまざまなトレンドが生まれたが、'90年代のスーパースポーツで世界的インパクトを与えたのがドゥカティ916だった。この後スズキ以外の国産メーカーがこのスタイルを追従した

かつては受け入れられなかった形状が最先端に

その後、さらに左右だけでなく前後のピッチングモーションまで慣性力の影響を最小に抑えるため、車体の重心つまり中心近くにすべてを集めるようにマフラー形状はさらに進化、エンジンがコンパクトになった経緯もあって、サイレンサーまでエンジン下に収めてしまう、排気出口だけが顔を出すいまのカタチに落ち着いています。
でもこれって以前にヤマハのVmaxやSRX400/600とかですでに採用されていたカタチですよネ。SRXはマフラーがカッコ悪い……なんていう人もいたのを覚えています。
それがいまやネイキッドでさえ、このサイレンサー出口だけが見えるデザインが主流になりつつあります。
こうしたデザインと機能の融合は、先進すぎても受け容れられなかったり……そういった視点でみると、また面白かったりしますネ。

oshiete-nemoken_023_02

'69年に登場したCB750Fourは4気筒をアピールする4本出しを採用。まだ、集合させる概念はなく、各気筒から1本ずつマフラーが出ていた

oshiete-nemoken_023_03

'85年のヤマハ・SRX400/600には、車体のセンターにサイレンサーを配置する現代風のマフラーが装着されていた

oshiete-nemoken_023_04

前後ピッチングを考慮し、車体中心に重量物を集める

MotoGPマシンは現在もシート下にマフラーを配置するモデルもあるが、それはサイレンサー自体が猛烈にコンパクトで軽いため、運動性に影響が出ないから。市販車のマフラーは重たいためなるべく車体の中心に集め、マスを集中。コンパクトな設計を目指す。こうすることで前後左右のピッチングの慣性力の影響を最小に抑えることができるのだ