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最新タイヤほどコンパウンドが柔らかくないってホントですか?【教えてネモケン092】

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東京モーターサイクルショー2022で「出張版!教えてネモケン-タイヤ相談室」は、どんな解説と質疑応答だったのか、ぜひリポートしてください!

A. DIABRO ROSSO Ⅳは、前の世代でセンターに使っていたコンパウンドに近い素材をバンクで使うショルダーに使うほど著しい進化をしています

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画像は夏から販売されるROSSO Ⅳ CORSA とハイグリップ仕様。ベースのROSSO Ⅳと同じデザインパターンに見えるが、よく見るとグルーブ(トレッドの溝)が途切れたパターン違いなのがわかる

グリップ性能を高めているのに温度要らずのマジック!

スーパーバイク世界選手権のタイヤ供給メーカーを務めるピレリは、レースのイメージから想像しにくいツーリングシーンなど、実用性を重視するコンセプトの製品が多いのをご存じかと思います。
開発の時点から、たとえばハイグリップほど暖まらないと性能を発揮できない常識を覆そうとチャレンジしてきた実績で、バイクメーカーからの信頼も厚くOEM(生産ラインでの装着)タイヤとして採用される例が増えています。とりわけテスト部隊の開発力が抜きん出ていて、電子制御によるサスペンションやABSなどのノウハウからメーカーにとって開発時間の助けになるのだそうです。
そんなピレリのスーパースポーツ用主力製品、DIABRO ROSSOがⅣと呼ばれる第4世代となり、課題である温度依存でさらに画期的といえる大きな一歩を踏み出したのです。折りしも東京モーターサイクルショーへ出展することにしていたので、この衝撃的ともいえる技術革新をぜひ皆さんへお伝えしようと出張!教えてネモケン-タイヤ相談室を開講しました。

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黄色いラジアル(放射状)カーカス(繊維による構造体)がROSSO Ⅳ。従来は赤で示したカーカスのように繊維の間隔は詰まっていたが、Ⅳでは一本を減衰力を高めた太いレーヨン(振動が伝搬しにくい)として間隔も空けることで路面追従性と吸収性能の両立を一段とアップ、その結果トレッドのコンパウンドが温度をそれほど必要とせずグリップ性能が得られて、耐摩耗性も高い特性へと置き換えることができている

まずROSSO Ⅳはカーカスから見直すという、タイヤメーカーにとって最も開発から生産コストまで手間のかかる手法で、大胆な改革に手をつけています。 ご覧の中心部からみると、放射状の外周を巻いているスチールベルトに90°で直交した縦方向にたわみやすいカーカスを、従来になかった繊維の並びにしたのです。もともと振動を伝えにくく減衰特性に優れたかなり高価なレーヨン製コードを使っていましたが、今回は何とその一本一本を太くして、お互いの間隔を空けるという繊維構成としたのです。
これにはトレッドが路面に接する面積が大きくなったとき、面圧を広範囲で均一にできるメリットが込められています。
タイヤのトレッドは、もちろん平面ではなく丸い球面ですよね。これはある程度まで凹んでも、面圧が一定の平面状に近い凹み方に収まりますが、さらに大きく広く凹むと中央が逆の内側へ凸形状に変形してしまいます。
これを防ぐのが繊維間の間隔というわけです。ラジアル方向の繊維の間には柔らかいゴムによって繋げられていて、これが大きく凹んだときお互い空いていた間隔が詰まることで、内側へ凸形状に変形するのを未然に防げます。
つまり、これまで以上に広範囲に凹んでも面圧が均一で、繊維の特性から吸収力や減衰特性に優れる特性が得られるというワケです。

この画期的な路面追従性と安定したグリップを前提に、トレッドのコンパウンドに温度依存を下げても以前より性能の高いタイヤとできるため、DIABROのROSSO Ⅳは従来のセンターに採用してきた耐摩耗性の高いコンパウンドに近い素材を、何と最もグリップを優先するバンク角の深いショルダー部分に使うことができたのです。しかも偏平率でトレッドが両サイドで伸びるプロファイルでは、ショルダー専用コンパウンドを設定して、3種類のコンパウンドによる耐摩耗性とエンドグリップ向上の両立をはかっています。
因みにトレッド外周にあるスチールベルトについても、元々荷札用などで見るような繊維に近い極細の針金を縒って糸状にする凝った構成だったのを、ROSSO Ⅳからその3本縒りを3本束ねて間隔と張力を変え、トレッドが面圧変化や路面状況で跳ねるような振動でもすぐに収まる、いわば懐の深い特性へと進化させたというのです。
既に走り出した途端、従来のフィーリングと明確に収まりの良さで違いがわかると評判で、近々試乗リポートもお届けする予定です。

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ROSSO Ⅳにも従来のⅢと同様によりハイグリップなCORSAが用意されて、夏ごろにローンチ予定という。ただⅣはCORSAでなくてもⅢCORSAと肩を並べる性能と噂されているので、一般的な使用では冬場のリスクを考えるとCORSAの必要性は低い気がする

ライフについての質問が圧倒的に多い!

DIABRO ROSSO Ⅳの解説の他、質疑にもお応えしたのですが、そのほとんどがライフ、つまり交換時期のアドバイスに集中していました。
メーカーの立場だと言いにくい部分でもあるので、現況を詳しく知る側でのあくまで私見とお断りして、1シーズン履くとたとえトレッドのグルーブ(溝)が充分に残っていても性能は80パーセントを切り、2シーズンだと50パーセント、3シーズンではそれをかなり下回るので交換すべきとお伝えしました。
何せタイヤの主な素材は合成ゴム(一部に弾力で繋ぎに優位な天然ゴムを含む例も)なので、大気中のオゾンに冒されてしまう宿命にあるため、完全に外気を遮断しないかぎり走行距離に関係なく劣化が進んでしまう、いわば食材のような生モノと理解されたほうが良いと思います。
もちろんコストはかかりますが、これだけ進化が著しいタイヤなので、少なくとも2シーズンで刷新されたほうが安全なだけでなく、楽しみもアップできるのは間違いありません。

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協力/ ピレリジャパン
Words:根本 健 Photos:ピレリジャパン,RIDE HI 編集部