女性ライダーで手が小さく、握力もありません。お奨めの人差し指と中指を使ったブレーキレバーの2本がけだと力が入りにくく感じます。
A.人差し指と中指でブレーキレバーを上から押し付けるようにして、指の腹を滑らせる感じでレバーを引き込んでいくのがコツです。
女性ライダーは手が小さく握力もないので、人差し指と中指の2本がけだと届きにくく力が入らないとおっしゃる方は少なくありません。
先ずこの2本がけでないと、絶対にダメというものでもないことを、はじめにお伝えしておきます。いわゆる運転考査で規準となっている4本がけでも良く、どんな方法でもジワッと入力したり、リリースもスムーズにできたりはします。
ただ、なぜRIDE HIでは2本がけを推奨しているかといえば、このほうがブレーキ操作だけでなく全てにメリットが多いからです。そして2本で操作する前提で、ブレーキレバーの形状やグリップラバーとの位置関係が構築されているのも知っておくべきでしょう。
実は70年代まで、ブレーキレバーは中指・薬指・小指の3本で引くのが前提でした。それがアメリカのスーパークロスといって、スタジアムの中に飛んだり跳ねたりの大きなギャップを設営するインドア・モトクロスが始まると、ブレーキがディスクになったタイミングもあって、ドッグレッグ・レバー(犬の後ろ足のカタチ)という極端に小さなブレーキレバーを装着するようになったのです。上下左右に大きくハンドルが振られる中、外側の中指に薬指と小指側でハンドルをホールドして、軽くフロントブレーキをかける速度調整には、人差し指1本でも容易く操作できるよう、マスターシリンダーからレバー基部を遠くするという工夫があったからです。
ロードレースもタイヤのグリップが向上して、ハンドルが振られるロデオ乗りに近い場面が増え、間もなくこのドッグレッグ・レバー採り入れられるようになりました。但しモトクロスのように指1本用の小さなレバーではなく、人差し指と中指の2本を前提とした、若干コンパクトな形状として定着していきました。
つまり左右のハンドルホールドは、薬指と小指側でグリップラバーを掴むのが前提というワケです。なぜ外側の指でハンドルをホールドしたほうが良いかは、停車した状態で前輪を誰かに強く振ってもらえばわかります。両肩に揺れが伝わりにくく、神経を尖らす感じにもなりません。これは大きく振れる対策だけではなく、長時間ツーリングしたときにも手の平の親指の付け根が痛くなることもなく、全てに優位なのでぜひ身に付けましょう。
さらにこの外指2本ホールドは、ココを支点にブレーキレバー入力ができるメリットがあります。外側3本でブレーキレバーを握ると、親指の付け根が支点になりますよネ。この状態だと、実は親指と3本指で両側からつまむような入力になります。つまり支点がないのです。たとえばクルマでいうと踵をフロアから離してブレーキペダルを踏むとどうなるでしょう。いきなり強く効いてしまい、微妙な操作ができません。
試しに指3本でかけたレバーを誰かに解放する側に引っ張ってもらってください。微妙な入力コントロールができないことを思い知らされます。外側2本ホールドで同じように誰かに引っ張ってもらうと、意外なほど途中で緩めたり強めたりの強弱コントロールをしやすいのがわかります。
そして肝心のレバーが遠いという点ですが、レバーを引く前に人差し指と中指の第一関節が曲がって届く、その位置関係がほぼベストです。それでは入力しようにも力が入らない……そう思われがちですがそこは勘違いしやすいところ。握力測定を思い出してください。第二関節が曲がった位置関係では、握りやすくはあっても実は力が入らなかったのをご存じでしょう。
コツは人差し指と中指で、ブレーキレバーを上から押し付けるようにして、指の腹を滑らせる感じでレバーを引き込んでいくことです。慣れるまで、このとき右腕の肘が少し上がっても構いません。親指の付け根を支点にしてはいないか、そこもチェックしつつ試してみてください。
そして手のサイズがどうにも小さいという場合は、行きつけのバイク・ショップでレバーの形状などを加工してもらっても良いでしょう。これは誰々の個人流ではなく、そうした操作方法を前提にしたレバー設定なのですから。
- Words:
- 根本 健
- Photos:
- 藤原 らんか