img_article_detail_01

Q.ブレーキと前のめりの恐怖はセットじゃないのですか?【教えてネモケン140】

oshiete-nemoken_140_20230818_main.jpg

バイクキャリアのある仲間から、強くブレーキをかけられないのは危険回避もできないので、まずは前のめりを怖がらずにかける練習が絶対に必要!と力説されました。怖さの克服は自信がありません。前のめりの少ないブレーキとかあるのでしょうか?

A. 強くブレーキすれば直感的につんのめるって思いがちですよね?確かにバイクやライダーの重さが減速Gで前輪へのしかかります。でもあんなにカンタンにつんのめらないブレーキのかけ方はあるので、ライディングに自信をつけたり何より安全のためにぜひ習得してください。

どうしてブレーキレバーへ触った瞬間に前のめりするのか?

oshiete-nemoken_140_20230818_01

ビギナーでなくても、このブレーキの前のめりが苦手というか、どこか怖くて強くブレーキングできないライダーの多さは半端ありません。
でも危険回避の基本は減速。とっさの飛び出しなど自分の身を守るために急ブレーキは必要な非常手段です。

とはいえ、かけたこともないチカラいっぱいのブレーキ操作などヤル気も起きず、運を天にまかせてそのまま衝突……その結果、バイクは危険だからもう乗らない、そんな展開は避けたいモノ。

ということで、この機会に強くブレーキをかけられるライダーになってください。
それにはまず、なぜブレーキをかけると前のめりするのか、そこからノウハウに繋げていきましょう。

オートバイにはフロントフォークとリヤサスの、ふたつの伸び縮みするサスペンションが装着されています。
このふたつのサスペンションに装着されているバネが、驚くほど強さ、つまり硬さが違うのです。
イラストは典型的なビッグバイクのネイキッドスポーツの例で、バネの強さはフロントがリヤの1/3かもっと差があったりします。

なぜそれほど違うのかというと、駆動している後輪と違って前輪は空転しているだけ。
車体を傾けて旋回するときは、前輪は後輪が曲がっていこうとする軌跡を邪魔しないよう、いわば支え棒のような役割をします。
ここで大事なのは路面追従性。小さな凹凸に前輪が追従できないと、支え棒を失った車体はカンタンにスリップダウンしてしまいます。

このためフロントフォームのバネは、柔らかいスプリングを予め締めつけて車重を支える反発力を与えつつ、その柔らかさで小さな凹凸にも小刻みに上下動して前輪がスリップしないよう機能しているのです。

レバー遊びを無意識のうちに乱暴に引いていた!

oshiete-nemoken_140_20230818_02

そんなに柔らかいフロントフォーク、ちょっとしたきかっけですぐ沈んでしまうだけでなく、荷重で釣り合うストローク位置を瞬く間に通り越してしまいがちです。
この勢いあまって深く沈んでしまうのが、前のめりの主な原因。

あなたは強くブレーキをかけるつもりもないので、やんわりと優しくブレーキレバーを握っていますよネ。
でもいきなりという感じで前のめりがはじまります。
これはベテランライダーも同じで、経験からハードにブレーキをかけられるので、強力なブレーキほどレバーに触った瞬間からサクッと前のめりすると思い込んでいます。

ところがこの一気に前のめりがはじまる原因は、レバーの遊びが勢い良く油圧ピストンのアタマを叩き、そのショックで瞬間ブレーキが効いてしまうことで、いきなりの前のめり、勢い良く沈んでしまう現象となっているのです。
ディスクに熱が残っていたりなど、厳密なコトに触れると様々あるのですが、ここは説明をわかりやすくするためカンタンな理屈通りにハナシを進めていきます。

レバー操作をデリケートにするために支点をつくる

oshiete-nemoken_140_20230818_03

このレバー遊びに勢いをつけずキャンセルする入力と、デリケートなレバー操作入力のコントロールがしやすいコツから覚えていきましょう。
まずレバー操作には支点が必要です。クルマを運転される方がほとんどだと思いますが、踵をフロアから浮かしてペダルを踏んだら、キュッと強くかかってしまい途中のジワッとデリケートな入力コントロールができませんよネ。

実は大半のライダーが意識せずに親指のつけ根を支点にしています。ここを支点に2~4本の指とで握っていると思いますが、実は親指にかかっている引くチカラは支点にできません。
いわば親指と数本の指とで挟むような動きで入力管理をしようとしているのです。
親指のつけ根なので動かないため支点にできそうですが、親指の先と人差し指で挟むように操作するとチカラの加減ができないのがわかると思います。

そこで手の平の外側2本、小指と薬指のつけ根を支点にグリップをホールドします。
レバー操作では握るというより上からグリップラバーを押す感じだと都合が良いはず。

そしてこの外側を支点にしてレバーを引いた状態で、誰かにレバーをちょっとだけ逆へ引っ張って動きを重くしてもらってください。
ワシ掴みの操作と外側支点の操作だと、どこからピストン入力の位置でどこが遊びかなど、僅かな手応え(指応え)に明確な違いがあるのを感じられます。

レバーを上から押し気味にして指を滑り込ませる、
遊びをキャンセルした箇所からレバーを引き込む!

oshiete-nemoken_140_20230818_04

そしていよいよブレーキレバー操作です。
まずレバーを上から少し下方向へ押し気味にして、指を滑り込ませる動きでレバーを引き込みはじめます。
これで意識せずともレバー遊びが勢い良くキャンセルされることがなくなります。

次に引き込みはじめた指に、ピストン入力の感触が伝わるので、そこから慣れるまでは手首全体を返す感じで、グイッとレバーを引き込んでください。
このとき外側支点を押し続け、指とのリーチがあまり変わらず下方向へたぐりよせる感じだと、入力の強まり方がレバーは既にほとんどストロークしない状態でのコントロールがしやすくなります。

レバーは少し遠めにセットしたほうが入力コントロールがしやすく、
実は握りにくい気がするだけで入力も強くできる!

oshiete-nemoken_140_20230818_05

そしてこれは慣れるまで、ちょっと時間がかかるかも知れませんが、ブレーキレバーはやや遠め、第二間接がまだ曲がりはじめているか否かのリーチにセットしましょう。
そんなに遠かったらチカラが入らない!と思われそうですが、体力測定の握力計を思い出してください。第二関節が90°まで曲がった「握りやすい」位置だと、まるでチカラが入らなかったと思います。

握りやすいのと入力を強くできるか否かは明確に違います。おわかりのように、入力管理のデリケートさも含めブレーキレバーが近いのはダメです!

これに慣れながらブレーキングを、前後に他の交通がない場所で確かめながら試してみましょう。
前のめり……まるでしてないかのように感じます。
そしてフロントフォークが深く沈んでいないので、危険なボトム防止の強いダンパーが働く範囲にないことから、フォークは細かな路面の状態にデリケートに追従、そのグリップの違いが減速Gをあまり感じないのに、サクッと思ったより手前で停車してしまえる制動力の差になります。

リヤブレーキの制動効果が大きいことを知るべき、
そして前のめりが減ってブレーキングの安定も増す!

oshiete-nemoken_140_20230818_06

そして忘れてならないのがリヤブレーキ!
効かない、ABSがすぐ働いてしまう等々、思い込みで使わなくなっているライダーの何の多いこと。
あってもなくても大差ない……いえいえとんでもありません。

まずつま先でブレーキペダルを踏みつけると、ほぼ100パーセント土踏まずが浮き気味になります。
これは支点のない状態。これではペダルのストロークで、どこが遊びでどこからピストン入力が強まるかなど、わかるはずもありません。

試しにステップにブーツの踵を載せてみてください。クルマと同じペダル感覚で、遊びやピストンの反発位置も明確に伝わります。
ただ下方向へ角度が深くなり過ぎて、日常では操作しにくいので、この感触を掴んでおいて土踏まずを浮かないよう軽く踏みつけ、ペダル操作をするとかなりコントローラブルになります。
支点をさらに明確にしてホールドを強めるのに、足首内側の踝(くるぶし)を車体側へ押し付けてみてください。人によってはこの効果が大きいケースもあります。

ということで、リヤブレーキを使うと驚くほど制動距離が短くなります。
そしてリヤブレーキは、制動の反トルクで後輪がリヤサスを縮める方向、つまり後ろが姿勢的に沈みます。
いうまでもなく、これは前のめりを抑えてくれます。

ということで、これらのコツを参考に怖くない強めのブレーキができるライダーへ、なるべく早くステップアップしておきましょう。
RIDE HIのYouTubeでライドレクチャーが、正解を確認なさるのにわかりやすいのと、バイクギャザリングではビギナーコースでこのブレーキ操作を含め手取り足取りのレクチャー実践もしています。

Photos:
藤原 らんか,Shutterstock