2019年の10月に開催されたテイスト・オブ・ツクバにゼッケン31番のRG500Γが走行した。ライダーはもちろん原田哲也さん。元WGP250ccチャンピオンである。バイクを制作したのは、大阪でカーボンパーツなどのボディワークを得意とするマジカルレーシングだ。今回はそんな原田さんのRG500Γレーサーがブラッシュアップされたので紹介しよう!
日本一盛り上がるイベントレース、テイスト・オブ・ツクバ(TOT)に原田哲也さんが参戦したのは2019年のこと。
「バイクの楽しさを多くの人に伝えたい」「バイク業界を盛り上げたい」そこには原田さんのそんな気持ちがあった。
原田さんは、もて耐、耐久茶屋など250ccのレースでマジカルレーシング代表の蛭田さんと意気投合。
原田さんも「蛭田さんと同じクラスに出たい!」となりZERO-1クラスに賞典外(本来国際ライダーは参戦できない)で参戦となった。
マシンは蛭田さんも長年TOTに参戦し続けているスズキのRG500Γ。もちろん原田さんが現役後、2スト/500ccに乗るのは初めてのこと。
もちろん原田さんは勝つことを目的にしていない。仲間と楽しむこと、そして筑波にいるお客さんとも楽しむことが目的だ。
原田さんの現役時代は、とても神経質そうに見えた。レース前も後もサーキットでは話しかけられないオーラがあった。逆に世界選手権ではそんなオーラを出していないと、やっていけないのだろう。でも今は楽しむことが目的だから、予選直前でもお客さんと写真を撮るし、サインにも応える。ピリピリしたオーラはどこにもない。
マジカルレーシングのピットには終日笑い声が響く。そしてその雰囲気を作り出しているのは原田さんなのである。その根底には「バイクが好き』という気持ちがあるのがよくわかる。
でもレースだからセットアップはどこまでも真剣だ。サスペンションは決勝直前まで試行錯誤し、アジャストする。
そしてそのセッティングや方向性は蛭田さんのRG500Γに反映される。原田さんはどこまでも乗りやすさを追求していくから蛭田さんのRG500Γもどんどん完成度が高まっていく。
元世界GPチャンピオンのセットアップは、決して尖ってなく、どちらかというと自由度の高いセットなのだ。
次回、原田さんのTOTの参戦は未定。2021年5月は他のイベントと、11月は鈴鹿8耐と重なってしまっているので、2022年の参戦に期待したい!
水冷2ストローク、スクエア4ロータリーディスクバルブのエンジン。1mmオーバーサイズピストンが入る他は基本的にノーマル。エアボックスは新規作成しているが、キャブレターもノーマルだ
フロントフォークはヤマハYZF-R6用のKYB製がベース。リヤショックはWPのダンパーボディにアイバッハのスプリングを組み込む。ともに44ハイネスサスペンションの高志保さんがセットアップした
アルミ削り出しのパーツはケイファクトリーが制作。R6用のKYBフォークに合わせてトップブリッジ&アンダーブラケットも作成
ステップもケイファクトリー製の専用品
スチール巻きのチャンバー、チタン製サイレンサーもケイファクトリー製
スイングアームはノーマルをベースに、アクスル部を高剛性なアルミビレットに改造。スプロケットはサンスター、チェーンはDID。ホイールはマジカルレーシングが取り扱うBST製のカーボン
ブレーキディスクはユタカ技研にオーダーした専用品。原田さんのGP時代の仲間が制作。現代のMoto2スペックで武装する
カーボン製レーシングスタンドはパドックで大人気。小指でも持てるほど軽い。ウエットカーボンだが蛭田さんの職人技によって強度と軽さを両立している
外装などのカーボンパーツはすべて蛭田さんが制作。キャリパー冷却用ダクトは、テストを重ねCBR1000RR-R用などを製品化。カーボンホイールはBSTカーボンでF:350-17、R:450-17。シートはサブフレームを持たないモノコック構造。後2気筒のチャンバーステーも兼ねている
マジカルレーシング
FRP製のレーシングカウルをはじめ、カーボン製のエクステリアなど、日本を代表するボディワークのブランド。ウエットカーボンならではの細やかな造形と、強度と軽さを両立し、美しい仕上げとリーズナブルな価格も魅力。超軽量カーボンホイール「BST」のオフィシャルサプライヤーを務め、グループにはサスペンションチューニングショップ「44ハイネス」も所属。バイクパーツ以外では宅配用のデリボックスやパラリンピック選手用の機材も製作する