時代と共に変わってきた
メーカーのイメージカラー
バイクメーカーには、その名を聞けば思い浮かぶ代表的なイメージカラーがある。しかしヤマハは「イメージカラーといえば?」と聞かれて思い浮かぶカラーが、人や年代によって大きく異なる。
海外で発表されたXSR900は’80年代に世界GPで人気だったフランスヤマハのゴロワーズカラーを纏った。そうかと思えば真新しいXSR700は、長年GPマシンの純正カラーだった白と赤。こちらはそれこそ’60年代から受け継がれているカラーリングで、お馴染みのファン層はグッと広い。加えて過去に何度も登場している、マニアはヤマハのインターカラーと呼ぶ黄色に黒のストロボ・ストライプも、いくつかの機種でペイントされてきた。
ヤマハXSR700
1964年にそれ以前の純白のカウルと赤タンクを白に赤ストライプに変え、250ccでホンダから世界タイトルを奪取したRD56
’70年代のYZRワークスマシンは、赤いストライプにブルーや黒のピンストライプもアクセントとして加えていた
ヤマハ・インターカラーを纏ったYZRワークスマシン。アメリカのレースでは、ヤマハのマシンを印象づけるために派手な黄色×黒のカラー、さらにデザイン性とインパクトを際立たせるために四角いブロックをチェーンのように並べた「チェーンブロック」のグラフィックを採用した。このカラーリングでケニー・ロバーツが、1973年、1974年とAMAグランドナショナルシリーズを連覇したことから、全世界でヤマハマシンの存在感が一気に増すことに
フランスヤマハ(ソノートヤマハ)はスポンサーである煙草のゴロワーズがブルーツートンだったこともあり、フレンチブルーも含めたブルー系で世界GPやパリダカールまで、チャンレンジするフランス人をアピールし続けた。ライダーのクリスチャン・サロンのリーンウイズ気味のライディングも人気だった
変わってないのがホンダのトリコロールと、
カワサキのライムグリーン
1960年代に世界GPを席巻したホンダを象徴していたカラーはシルバー。1959年にマン島TTに初挑戦した「RC142」や、1972年に発売された初の市販2ストロークモトクロッサー「エルシノアCR250M」など先駆けマシンに採用されてきた。
現在も続くホンダマシンの代名詞的カラー「トリコロール」が登場したのは1976年。’60年代に世界GPを撤退し、1970年のデイトナ優勝を最後に2輪レースから遠ざかっていたホンダは、ヨーロッパでのみ耐久レースを中心に維持、特にフランスルマン24時間の優勝など王者の地位を築いた貢献度を称えるように、出場マシンのRCB1000にはフランス国旗をオーバーラップさせた「トリコロール」を採用した。
以来、何かにつけこの「トリコロール」が踏襲され、最新CBR系はこの3色をオリジナルとして定着している
ホンダのレース復帰を待ち望んでくれたフランスへの感謝を込めて、1976年にヨーロッパ耐久選手権に参加するため開発されたRCB1000には「トリコロール」を採用した
現在もCBRスーパースポーツ系には、すべてトリコロールが標準として用意されている
そしてカワサキといえば真っ先に頭に浮かぶのが「ライムグリーン」だろう。’60年代までカワサキレーサーのイメージカラーは、エンジ色に近い赤と白のツートンだった。後発だったカワサキは世界GPでは日本3メーカーに後塵を拝していたが、全米AMAレースへ先んじて挑戦を開始し、1969年のデイトナ200マイル出場マシンからこのライムグリーンにチェンジ。大型バイクへの参入で先行していた日本メーカーを追い抜くため、あり得ないハイパフォーマンスと、アメリカでは不吉なイメージのあるライムグリーンで、より一層のインパクトを狙ったからだ。
サムライA1(250cc)で成功を収め、マッハIIIからZ1 へと大型バイクで攻勢をかけるため、1969年にイメージチェンジで危ういイメージのライムグリーンを纏うことで挑戦したカワサキ
1968年の最後の世界GPマシン、125ccのKA2は2軸V型4気筒で多段の14速ミッション、パワーバンドは18,000rpmに僅か800rpmしかなかった……
スズキは一貫してブルーを守ってきたが
オフロードや耐久レースではイエローも
最後にスズキだが、現在のMotoGP参戦マシンがメタリックブルーとシルバーを基調としているように、基本的にはずっと青系がメインカラー。しかし’80年代に世界GPと耐久レースでは煙草スポンサーのHBカラーでイエローを纏ったが、ブルーのストライプでアイデンティティは守り通していた。他方モトクロッサーに関しては、ヤマハの黄×黒のインターカラーよりもっと先に黄色をメインカラーとして採用しており、2022年モデルのRM-Zシリーズでも、伝統の黄色を基調に青をポイント使いとしたカラーリングを採用している。
ホンダとヤマハに続き早くから世界GPの50cc、125ccで活躍が目立ったスズキは、ブルーとシルバーのツートンで統一されてきた。現在もMotoGPチームは(画像は2020年)このスズキ純正カラーを纏う
他方オフロードではイエローをイメージカラーで統一。後にヤマハがインターカラーで同色になったが、そのアイデンティティは守り抜き、現在はブルーも主力カラーとなっている
世界GPの500ccRGΓと耐久レーサーGS1000は、煙草スポンサーのHBカラーとなり、イエロー基調にブルーストライプを加えていた