ハイグリップタイヤが安心して使えるのは、
意外なほど期間が短いのを意識しておこう!
もう2ヶ月もすればバイクシーズンがやってくる。
今年は慣れてきたのでワインディングに何度も走りに行きたい、サーキットも走ってみたい、と思いを巡らせているライダーへタイヤについてアドバイス。
自分はまだまだ不慣れで下手くそだから、一番グリップする高いタイヤを奮発しようと思っていたら、それは勘違いともいえるリスキーな考え方かも知れないのだ。
サーキットなどパフォーマンスを発揮できる環境での性能を追求したグレードが、ハイグリップタイヤとして最もハイエンドなモデルをイメージするだろう。
しかしこのハイグリップな性能を、安心して使えるのは気温がおよそ20℃を超える条件下。東京の平均気温をチェックすると、5月から10月までの5ヶ月間だ。
ゴムは暖まると柔軟性が高まり、路面をグリップしやすい。ただちょっとでも冷たい路面に触れると瞬く間にその柔らかさを失う。
そういう意味では、朝晩の気温や路面が日陰で温度上昇していない条件まで含めると、実際にはもっと短くなる。
グリップ性能はソフトなコンパウンドだけじゃない、
カーカス構造が路面追従性を格段にアップ!
タイヤのグリップ力を左右するのは、路面に接するトレッド面のゴム質、コンパウンドの柔らかさが一般的にイメージされてきた。
確かにそれは大きな比率を占めるが、最近の開発はタイヤの内部構造であるカーカスの繊維構成にまで注力しているのだ。
たとえばピレリの最新ディアブロⅣでは、従来のディアブロIIIと比較すると、ラジアル(放射状)側のカーカスで繊維を減衰力を高めた太いものとして、その並ぶ間隔を拡げている。
それはタイヤのトレッドが路面に押し付けられた状態で、その凹む面積の拡大と路面追従性を狙ってのこと。
いうまでもなくカーカスの反発力を弱めればトレッドは大きく凹む。しかしトレッドの表面は大きく湾曲した球面でもある。
この球面を大きく凹ませると、バスケットボールから空気を思いきり抜いてしまった状態のように、内側へ向かって逆の球面となる凹み方を生じ、むしろ路面との面圧が安定しなくなる。
そこで繊維の間隔を拡げ、大きく凹んだとき、その繊維間が縮むことで球面を平面化しやすくして、安定した路面追従性を確保できるというわけだ。
もちろんこの繊維はレーヨンやリヨセルのように、振動を伝えにくい減衰力もある高コストな繊維を使う必要がある。
乗れる季節と、リスクを避ける側の性能を考えて
価格が高ければと決めつけず賢い選択を!
Diablo RossoⅣ Corsa
Diablo RossoⅣ
たとえ条件の良いサーキット走行でも、様々な変化があっても何も心配せずハイグリップタイヤに身を任せるのは、5月下旬から10月上旬まで。
もちろん雨が降ったりすれば路面温度が下がるので、たとえ夏場でもピレリでいえばRossoⅣ CorsaよりRossoⅣのほうが安心だ。
ハイグリップタイヤは、実は相応に気遣いが必要なデリケートさがある。しかし条件がハマったときにみせる、グイグイ曲がれる醍醐味が格別なのはいうまでもない。
値段の高いハイグリップタイヤにしたから安心、というのは勘違いであるのをお忘れなく!