オイルのレベルチェックを忘れずに
いま市販されているスポーツバイクには、ほぼ必ずエンジンオイルのレベル確認用に透明なチェック窓があり、不足していないかすぐわかるようになっている。
とはいえ、まだ買ったばかりだしとか、大事な愛車のため3,000km毎や3ヶ月毎と頻繁に交換しているし、といった理由で気にもしていないライダーが多い。
ましてやドゥカティが最新ムルティストラーダの「V4グランツーリスモ」エンジンで、オイル交換は15,000km毎または2年毎で良いと発表するなど、性能だけでなくメンテナンスの間隔を長期に設定できるデリケートな気遣いが必要ない時代、オイル量のチェックなど気にしないで良いはずと思いがち。
しかし、たとえ新車でまっさらなエンジンであろうと、オイルが僅かずつ減っていることはお忘れなく。
むしろ馴らし運転期間のほうが、回転を抑えているのにオイル消費量が多かったりもするのだ。
ブローバイガス、オイル上がり、オイル下がりは避けられない
エンジンオイルは密閉されたエンジン内部にあるはず、それがなぜ減っていくのか、まずはそこから説明しよう。
意外に知られていないのが、ブローバイガスで高温に晒されることによる影響。エンジンは燃焼室の燃焼爆発で生じる排気ガスが、排気のタイミングで排気バルブが開けばマフラーへ放出されるが、燃焼直後にはピストンとシリンダーにある僅かな隙間からクランクケースにも漏れている。このとてつもない高温の排気ガスがエンジン内部でエンジンオイルにも触れるわけで、排気ガス中の僅かなカーボンと共にエンジンオイルが黒くなる原因のひとつでもある。
そしてこのブローバイガスは、環境汚染とならないようエンジンから出た通路でエアクリーナーへ導かれ、吸気と共に燃焼室へ送られ再燃焼される仕組みになっている。
このエンジン内部から還流されるとき、高温に晒されたエンジンオイが若干量だが気化(霧化)して吸気へと運ばれているため、条件によるとはいうものの燃焼して消費されているのだ。
新しいエンジンだったら、ブローバイガスが抜けるピストンとシリンダーの隙間が小さく、そもそも少ないのではと思うかも知れないが、まだ馴染んでいない新品の時期ほど、隙間が一定でないため圧力差を生じやすくブローバイガスが抜けやすかったりしている。
また新車の馴らし運転中なので、エンジンの回転も低めなので心配ないというのも要注意。真夏の渋滞で長時間アイドリングしていると、エンジンの熱は走行中より上昇するため、ブローバイガスでもっていかれるオイルも増えるからだ。
もちろん空冷エンジンはこのクリアランス(隙間)が水冷より大きく、ブローバイガスによる消費も多いのが想像できると思う。もちろん慣らし運転期間は頻繁にオイル量のチェックが必要だが、馴染んでしまえばクリアランスはあっても圧力差の均衡がとれて、むしろオイル消費量が抑えられる傾向にある。
あとはシリンダー壁面に僅かに残るオイル被膜が燃焼で消費されたり、吸排のバルブが吸気と排気の通路に出るバルブガイド部分をシールしている箇所からも若干のオイルが吸気や排気で消費されている。
ただエンジンが長年の使用で老朽化してくると、ピストンの往復でエンジンオイルがシリンダー壁面を抜けるようになって白煙を吐くオイル上がり、同様にバルブガイド部分からカムまわりを潤滑しているオイルが垂れてくるオイル下がりでも、マフラーから青白い煙が出るなどダメージとしては深刻な状態だ。
オイルの滲みをみつけたらすぐ修理を!
また旧車など老朽したバイクだと、一定時間以上を停めておくと下にオイルが垂れて滲みになっている場合がある。これはエンジンの接合面にあるパッキングの素材が、長期間の圧着で硬化して密閉できなくなるからで、ゴムのOリングなども劣化してシール能力がなくなるため、こうしたオイル漏れはオイル消費だけでなく走行中に後輪が踏んで転倒などの事故にも繋がるため、とにかく早めの修理が必要だ。
まずはオイル量のチェックを怠らない、これはタイヤの空気圧チェックと共に、ツーリングへ出掛ける前に必ず履行するよう習慣づけておきたい。