ビンテージに革新テクノロジーのW650から30年近く牙城を守るカワサキの男気!

カワサキにはいまも伝説的に語り継がれる650のW1(ダブワンと呼ばれた)という、OHVでバーチカル(直立)ツインのヒット作があった。
もとは1960年、業績不振に陥っていた「目黒製作所」(東急目黒線の目黒駅からひとつ目の不動前駅にあったのでメグロがブランド名)と業務提携、1964年に吸収合併した後に、性能と耐久性を高めた500ccのK1を発売、これをベースに対米モデルとしてW1を開発したのがそもそものはじまり。



そんなルーツを知る社内から、1990年代半ばにかつてのダブワンこと624ccOHVのW1(最終型はW3だった)に後継機種が欲しいとの声があがった。
しかしレトロな雰囲気だけを狙うのはNG、トラディショナルでも技術的なリスクと取り組む「本気度」が必須との縛りを課すのがカワサキ流。
そこで選ばれたのはバーチカル(直立)ツインのSOHCだったが、OHCを駆動するのを一般的なチェーンでもコグドベルトでもなく、90°駆動方向を変換するベベル(傘歯)ギヤ駆動としたのだ。
このカムシャフトのベベル駆動、レースで旧くから使われたカムギヤトレーンの一種で、ギヤの噛み合う隙間(バックラッシュ)を限りなく小さくできるものの超緻密な加工技術が必要で、当時はドイツにしか加工機械メーカーがなく、年間3,000台分ほどしか加工できないため、元をとるのに10年かかるリスクを抱えていた。

1999年にリリースされたW650はその10年を軽く突破、2010年にはW800へと進化を遂げた。
W650では72mm×83mmのロングストローク675ccで360°クランク、1軸バランサー駆動で、48PS/6,5000rpmと5.5kgm/5,000rpmだったのをボア径を4mm拡大、773ccとなり排気ガス規制の対応でキャブレターから燃料噴射に変更、48PS/6,5000rpmとパワーは同一ながら6.3kgm/2,500rpmと極端な低回転域で最大トルクを発生するチューンとなった。
フレームは変わらずダブルクレードルで、前輪19インチに後輪18インチと、街中やワインディングでも速度の低いヘアピンでも安定性が高いハンドリング。
車重は乾燥で5kg増の216kgで、変わらないホイールベース設定1,465mmと相俟って、落ち着いた走りに中速域の立ち上がり加速で粘りと力量感が楽しめた。



そしてまた10年が経過、根強いファンに支えられ様々なグラフィックを纏う多様なマイナーチェンジの後に、遂に2021年にそのルーツたる「メグロ」のブランドを冠した「K3」の発表となった。
メグロとしてカワサキが生産していた1965年モデルが「K2」だったのを56年後に継いだ次モデルというわけだ。
やはり'60年代の真っ黒が常識だった頃の佇まいは、独得な落ち着きと信頼感を放ち、こうした雰囲気に惹かれる層に受け容れられ順調な推移をみせている。


こうしてW650から30年近くも継続生産されているバーチカルツインは、オートバイの普遍的な魅力を伝え続ける貴重な存在だ。
そこには開発当初の、ベベル駆動のOHCという課せられたハードルにチャレンジした熱量があったからこその部分があるのは間違いない。


1980年代からのバイクブームに青春を謳歌した年齢層も、さすがにリッタークラスのビッグバイクは荷が重くなってきた。
それでも乗り続けたい男ゴコロにとって、こうした頑なに男気を貫くカワサキの姿勢は、ある種の頼りがいに近いモノが漂ってくる。



