A.人間の感性に馴染みやすい“乗りやすさ”も条件のひとつ
私は好きになったバイクが一番だと思っていますが、
いろいろなバイクに乗り、その善し悪しを知り尽くしている
ネモケンさんの良いバイクの条件とはどんなものなのでしょうか?
このバイク格好いい! だから欲しくなるし乗りたくなる! 大事なことですよね。そのバイクを手にしたときの満足感はたまらないですよね。ボクだって、同じように無理してまで購入した経験が何度もあります。
とはいってもキャリアを積み重ねると、やがて自分の走りに合ったバイクが欲しくなるものです。さらには、それまで味わったことのない感性を持つバイクに触れてみたくなる……。そんな皆さんに向けて、走るとどんなバイクなのか、その情報をしっかりお伝えするのが我々の役目だと思ってインプレッションを書き続けてきました。
感情移入することも大事なことだと思っていて、乗ってすぐに感じる興奮であったり、乗り込むうちにわかってくるポテンシャルについても意識して触れています。
バイクの善し悪しについては、こればかりは乗る人の好みなので、ボクが判断するものではないと思っています。バイクは、キャリアが異なる多くのライダーを対象に開発されています。だから基本的に悪いバイクは存在しないと考えています。
でも良いバイクの基準を知りたいといとのことなので、ボクにとって優れたバイクといえる条件のようなものをいくつか挙げていきましょう。
趣味のものだからこその評価軸
まず乗りやすいこと。言葉でいうのは簡単ですが、実はこれがなかなか難しい。この乗りやすさを得るには人間の感性に馴染みやすい特性であることが必要不可欠です。様々な動作に唐突さがなく、乗り手に信頼される安定感がなければなりません。
わかりやすくいえば、怖さを感じることなく、意識しなくても自然に慣れてしまえるバイクが、乗りやすいと評価できることになります。
次に重視するのが個性とか醍醐味です。これは乗りやすいという評価と一線を画す要素で、要するにいわゆるクセのあるバイクでも、その他との違いが楽しめる、もしくは乗り込んでいくうちに馴染んできて、そこをコントロールするのに醍醐味を感じるという種類の評価です。
いうまでもなく、バイクは趣味の乗り物です。多くの人たちに人気のあるメジャーなものより、マイノリティなバイクに魅力を感じる人が少なくありません。とくに海外メーカーには、モノづくりの発想で効率とコストを優先していないバイクが数多くあります。
たとえばエンジン型式など、効率が良くて現在の主流だから……という理由で選択することはありません。時代が味方しない状況下にあっても、創生期のオリジナリティを大事にし、なんとか工夫して生き残らせようとするチャレンジに溢れています。
そして今や電子制御など、デバイスが進化したことで、以前ほどのネガティブな面が出なくなっています。そのために個性としての面白さが浮き彫りになり、メジャーなバイクと肩を並べる人気を得ていますよネ。
他のバイクでは得られない魅力がある
乗りやすさに加え、バイクが持つ個性も欠かせない要素だ。たとえば他のバイクにはない、独自の機構を持ち、高い完成度でまとめられている……たとえクセがあったとしても、乗りこなす楽しさがあれば良い。バイクは趣味のものなのだから
「乗って楽しい!」バイクに出逢えるとうれしい!
微妙な言い回しになりますが、スポーツバイクの場合だとパフォーマンスを発揮するシーンを優先した結果、ビギナーには扱いにくい面が生じてしまうのを、あえて妥協しないメーカーもあります。
たとえば足着き性。両足がやっと着くようなシート高のバイクは、乗りはじめの段階ではとても乗りやすいとはいえません。しかし、このシート位置がリーンするときの運動性やトラクションで路面を蹴るときの効率を大きく左右します。停車時や低速域での取り回しを犠牲にしても本質のほうを大切にしている……開発側の意図や実際の効果を検証できれば、もちろんマイナス評価をすることはありません。
また時代とともにタイヤの進化もあり、ライダーの乗り方やライディングポジションの前提も変化しています。どういう乗り方をすればそのバイクが持っている良さがわかるのか、その領域を探すことも欠かせません。
バイクは生活実用品ではありません。趣味の領域として、誰にとっても悪くないものではなく、少数でも誰かにとって良いほうが評価すべきポイントだと考えています。
ただ、そこを細かく検証しますけれど、乗って「楽しい!」がダイレクトに伝わるバイクに出逢えたときがもっとも嬉しいですネ。惚れっぽいだけなのかもしれませんが、この世界では「楽しい!」がいちばんだと考えているのでご容赦を!!
個性的なバイクが多い外国車の強さと面白さ
長い歴史を持つ海外メーカーの場合、オリジナリティの高い、独自のエンジン型式を守り続けていることが多い。それがメーカーの個性となり、近年の電子制御技術の進化が加わったことで、より多くのライダーが楽しめるものになっている
- Words:
- 根本 健
- Photos:
- 真弓悟史,折原弘之,長谷川 徹