A.サスより下にあるパーツを交換すると、サスの動きが向上します
バネ下が軽くなりハンドリングが向上……、カスタムバイクなどでよく目にするけれど、そもそもバネ下ってどこのこと? なんで軽くするの?
バネ下とは、サスペンションより下にあるパーツ類のことです。ホイールやタイヤ、それにブレーキディスクやキャリパー、リヤではスイングアームも含まれます。 このバネ下部分を軽くすると何が変わるのでかといえば、路面追従性の向上、それに尽きます。
サスペンションは、路面の凹凸に対し忙しく上下動しています。大きな凹みにサスが伸びたと思えば、次の瞬間には小さな突起が連続したり、しかもその動きの中にも凹みを含んでいたりと、すべてに追従するのは無理と思えるほどその動きは複雑です。
だから可能なかぎり、路面の凹凸に対しタイヤを含んだホイールがなぞるように追従する動きであることが重要になってきます。
2020年のMotoGPを戦ったYAMAHA YZR-M1。マグネシウム鍛造ホイール、モノブロックキャリパー、カーボンディスクという最強の軽量パッケージ。ボトムケースも極限まで肉抜きされているのがわかる。ちなみにMotoGPマシンはフロントフォークのアウターチューブもカーボンだ
バネ下を軽くするほど、ジャイロ効果(その場に留まろうとする力)が軽減
しかし走っているホイールとタイヤは、当然のことながら回転しています。そこにはジャイロ効果という回転ゴマと同じ原理で発生する慣性力によって、その場から動きにくい頑固な安定力が生じています。これは路面追従性を妨げます。悪くすると路面の凹凸を飛び越え、次の凸部分に衝突して実際の凹凸より大きな衝撃をライダーに伝えてくることもあるほどです。
だからバネ下はできる限り軽くしたいのです。軽くすればジャイロ効果が低減し、サスペンションの負担が減ることが想像つくと思います。
バネ下パーツのいちばん外側にあるタイヤは、軽量化を優先しシンプルな構造や軽量な素材、加えてしなやかな追従性が可能な設計をしています。最新タイヤは10年前とは比べ物にならないほど軽量化されています。リプレイスホイールは、鋳造から鍛造に製法が変わりましたね。これにより各部を肉薄にすることが可能になりました。また、外周に近い部分ほど、妨げになるジャイロ効果を生むので、リム部分を軽くする工夫も見られます。最近ではカーボンホイールも手に入るようになっています。
また、見落としてならないのがブレーキディスク。径が大きいほど同じ回転でもパッドとの接触速度が高いという理屈はおわかりだと思います。しかし大径になるほど例のジャイロ効果が大きくなってしまう……そこで大径ながらパッドの当たる面積を横に延ばすことで、ディスクの周方向の幅を狭める設計が施されるようになってきました。
モトサロンがカスタムしたBMW S1000RR。極薄タイプのスポークが特調のロトボックス製カーボンホイールを装着。ホイールだけでなく外装もフルカーボンで圧巻
バネ下を軽くすると、ノーマルサスでも動きが見違える
バネ下を軽量化すると、サスペンションの路面追従性が大きく変わります。超軽量ホイールに交換すると、価格が何倍もする高性能なサスペンションに換装したかのような効果もあります。ブレーキも良く効くようになったのを体験できるでしょう。もちろんさらに高価なサスペンションを装着すると、タイヤはグリップ性能でさらに優位な状態になるワケで、その違いは異次元ともいうべき差にまで拡がります。
機能パーツのカスタムは、安全性やパフォーマンス向上に直結します。高価でも思わずニンマリ、我々が繰り返しお奨めするワケがおわかりいただけたでしょうか?