高回転域の逞しいパワーフィーリング、
さらに低回転域の力強い「蹴る」醍醐味がアップ!
英国トライアンフのミドルネイキッド、ストリートトリプルの誕生は2007年に遡る。3気筒675ccのDaytonaエンジンをベースに、デビュー時から昆虫の目玉をイメージさせる丸形ヘッドライトをデュアルに並べるデザインがトレードマークになっていた。
以来、改良を重ね2017年には排気量を現在の765ccまで拡大、2019年から世界タイトルを争うMoto2の公式エンジンとなり全チームへ供給、さらに進化を繰り返してきている。
そうした熟成を経て登場した2023年モデルのStreet Tripleは、ピークパワーを123PSから130PSへアップ、電子制御も最新世代へ刷新しつつ、車体まわりでも前後サスペンションのグレードアップを果たすなど、熟成レベルがかなり高く、いちばんの「旬」を迎えているという印象が強い。
とりわけコーナリングの低い回転域からトラクションを使った旋回加速で、思いきり力強くなったトルクが功を奏し、グイグイと曲がれていく醍醐味が心酔モノ。
リヤタイヤがベッタリと潰され、接地面圧が安定して車体を曲げていくフィーリングは、安心感と躍動感でライダーに操り甲斐を大きく感じさせてくれる。
スロットル開度も、とくに低回転だと唐突に飛び出さない良い意味でのジンワリ反応する穏やかさを伴うため、スキルを重ね自信へと導くのに時間がかからない。
リスクなく醍醐味が味わえるバイクとして、幅広いライダーを楽しませることだろう。
操作性を高めた気遣い、サスペンションのグレードアップ、
エンジンモードもわかりやすい具体性の高さが嬉しい!
2023年Street Triple の良さは、動力性能はもとよりハンドリングを支える前後サスペンションのグレードアップ、さらにはブレーキの操作性まで細かいところへ及んでいる。
SHOWA製フロントフォークは、減速時の沈み込みと減衰特性に路面追従性を維持できる範囲が奥深くまで確保されているのと、リヤサスのオーリンズ製ショックユニットの大きな動きを小さな衝撃吸収が妨げない複合的な性能がさすがという他ない。
とくにリヤまわりのトラクションが効果を発揮しているとき、ライダーがお尻で感じられる路面を蹴るダイレクト感がたまらない。
またブレンボのMCSラジアルマスターシリンダーの、ピストンを加圧する初期にレバー比が絶妙に変化して、強力かつジワッと効いてフォークへの負担軽減できているバランス設定が素晴らしい。
手のサイズに合わせられるレバー位置調整に、ピストンの入力位置のサイズ調整と、両側のアジャスターが大人向けバイクの本気度を漂わせる。
因みにクラッチレバーも、この両側でアジャストできる。
シート高はハンドリング特性をやや鋭いレスポンスを得るため高めに設定となったが、ローシート仕様にサスペンションのマウントを下げるローダウン仕様もあるため、160cmあたりでも足つきに不安はない筈。
さらにライディングモードのセレクトもわかりやすい設定で、微妙すぎてキャリアが浅いと差がわかりにくかった従来と違い、ビギナーでも色々試して自分なりの設定をみつける気になれる具体性の高さも大きな魅力だろう。
「旬」を迎えた完成度の高さは、多くのライダーに良き先生となるはず
何といっても2007年から16年にもなろうという進化を重ねた実績なくして、ここまで痒いところへ手が届いた完成度の高さは得られない。 この「旬」を迎えたという表現が相応しい完成度は、トライアンフ・ファンとか3気筒ファンという範囲を超えたレベルで、迷ったらこのバイクといえるリファレンス的な存在だ。
とくに200PSや300km/hと、途方もないエネルギーへと辿りついてしまったリッターマシンに対し、765ccをミドルクラスと呼ぶのかはともかく、操る面白さや醍醐味を満喫できるパフォーマンス・レベルの大切さをあらためて思い知らされる傑作マシンであるのは間違いない。
機会があれば試乗なさって、低回転域でスロットルをグイッと捻ってみることだ。新しさとは何なのか、その進化の健全性をぜひ知っておいて頂きたいと思う。
SPEC
- 最大トルク
- 80Nm/9,500rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- アルミビーム・ツインスパー
- 車両重量
- 188kg
- タイヤサイズ
- F=120/70-ZR17 R=180/55-ZR17
- 全長/全幅/全高
- 2,050/790/1,065mm
- 燃料タンク容量
- 15L
- 価格
- 149万5,000円(税込み)