10月1日、川崎重工業からモーターサイクル、
オフロード四輪車、芝刈り機エンジンなど
パワーエンジンのグループを分社化した
カワサキモータース株式会社が創立された
巨大グループでの吟味を経ずに、楽しんじゃえに突っ走る勢いに期待!
10月1日に川崎重工業から分社化され、創設となったカワサキモータース株式会社。川崎重工業の中では唯一のコンシューマービジネスであったモーターサイクル、オフロード四輪車、ターフビジネスの一環としての芝刈り機エンジンなど、パワーエンジンのグループを分離することで、鉄道や航空機に造船など大規模事業に必須な意思決定の吟味を待たず、時代に合った戦略戦術の展開を可能にする狙いがあるという。
カワサキといえばバイクファンならKawasakiの英文字やロゴを思い浮かべるだろうが、一般的には身近なところでいえば通勤電車の車内にバイクと同じロゴを見つけたり、新幹線の主要メーカーであったり、オリンピックでお馴染みのブルーインパルスが使用している機体T4も川崎重工業製、以前は造船や製鉄業もグループを形成していた一大コングロマリットカンパニーなのだ。
当然ながらこれらの事業は、開発や熟成まで何年という時間をかけ吟味をしていくものばかり。モーターサイクルも技術開発の積み重ねという意味では長期的な視野も必須だが、基本はカルチャー的な要因も含む商品でもあることから、時代に合った対応が益々重要になりつつある。
そうした事業の特性の違いが、同一の経営傘下では足を引っ張りかねない……それよりは経営を切り離し、コンシューマーの嗜好に添ったビジネス展開が望ましいとの判断による分社化が検討され決定が下されたのだ。
基本はこれまでの流れと変わらず……とはいえ期待される解き放たれた勢い!
今回、この分社化を機に発表されたNewモデルがあるわけではない。公式発表の中にイタリアはビモータ社とのさらなるコラボ事業への期待や、台湾のキムコと提携しているオフロード四輪事業の生産リソース活用の継続に触れたのに加え、メキシコ工場への投資で活況を呈しているオフロード四輪車ビジネスの拡大など、現在の分社での合計売上高4,100億円(営業利益6.1%)を、2030年には1兆円(営業利益8%以上)まで成長させる宣言など、事業規模や将来性のアピールを主な目的とした記者発表だった。
ではバイクファンとしては、何が期待できるのだろうか? 事業としての将来性へのアピールの一環として、社長会見の会場には開発中のハイブリッドマシン、電気100パーセントのEVマシン、さらには水素エンジンへの開発途上としてスーパーチャージドで直噴の4気筒エンジンも展示され、具体的な可能性への途上にあるのが実感として伝わってきたが、どれも1~2年で商品化されることはない。まずは2025年までに10機種を目標にしていて、カーボンニュートラルは2035年が目処だという。
こうした社会的な取り組みはさておき、我々が直感的にさらなる期待に胸を膨らませることができるのは、たとえば近年のスーパーチャージや250cc4気筒スーパースポーツなど、他が市場規模やコストにリスクを考えると手を出さないジャンルの機種を開発してくる、そもそもの独自性がさらなる先鋭化を遂げるだろう予感にほかならない。
我が道を行くカワサキ、次なる目を奪われる衝撃が具体的になる日は近そうだ。
代表取締役社長執行役員の伊藤浩氏から、様々なビジョンに触れながら事業計画が発表された。ただもっとも嬉しそうに語ったのは「楽しんじゃえ宣言」関連。期待できそうな勢いを感じさせる
楽しんじゃえ宣言。マシンが楽しいだけじゃダメ。ライダーが楽しいだけじゃダメ。開発する人も、生産する人も、接客する人も、メンテナンスする人も、経理の人も、カワサキに関わるぜんぶの人が楽しくなくっちゃ。そう、これは社内向けのスローガンなのだ!この勢いは面白そうなバイクが期待できる
開発途上のハイブリッドマシンが展示された。街中はモーター、高速道路はガソリンエンジン、ワインディングは両方を使うイメージ。車格やパワーは600ccクラスを想定している仕様とのこと
こちらも開発途上の実験段階にあるEV(100%モーター駆動)マシン。クラッチの膨らみなどに見える後部の構成は、いまは駆動系まで現状の内燃機関と共通した構成だからという。この車輌も600ccクラスを想定している