ride-knowledge_114_main.jpg
ピックアップ

画期的だったホンダのインボードディスクブレーキ【ライドナレッジ114】

初のディスクブレーキを装備したCB750フォア、
狙った性能を妨げたのはステンレス製ディスク……

ride-knowledge_114_01

CB750Four 1969年

スポーツバイクのブレーキといえばディスクブレーキが当たり前。これを世界で初めて量産バイクに装備したのが、1969年のCB750フォアだった。
初の200km/hが可能なドリームバイクに、ホンダはそれまでのドラムブレーキではオーバーヒートすることから、まだレースでも使われはじめたばかりのディスクブレーキの採用を決定したのだ。
しかしまだノウハウが積まれていないディスクブレーキには、大きな問題があった。
最大の難関はディスクの材質。最も効くのは鋳鉄製であるのはわかっていたが、少しでも濡れると真っ赤な錆がついてしまい、最高峰の高価なフラッグシップには似つかわしくない。
そこで錆びないステンレス製としたのだが、材質として硬くパッドとの相性も難しく思うような特性が得られなかったのだ。

開発された鋳鉄ディスクが使えるインボードブレーキ、
独自の機構をアピールするブーメランコムスターの新デザイン!

ride-knowledge_114_02

CBX400F 1981年

ride-knowledge_114_03

1980年代にHY戦争へと発展したホンダの大攻勢。その斬込み隊長的な役割を担ったCBX400FとVT250Fには、これまで見たことのない画期的なブレーキが装着されていた。
それがインボード・ベンチレーテッドディスクブレーキ。
ホイールハブの内部に、ブレーキディスクがハブ外側でマウントされ、内周側からキャリパーが挟むという画期的な構成だ。

最大のメリットはディスクが内蔵されるため、鋳鉄製でも錆など気にせずに済むこと。
ただ外に露出していないため、冷却で不利にならないようディスクローター本体を、スーパーカーや超GTでしか使われない通気孔を鋳込んだベンチレーテッドディスクとしたり、前方からのエアインテークやハブ外周の排出口など、その凝り方が半端ないハイメカニズムとなっていた。
しかも、400ccクラス用にキャリパーをマウントするプレートとフォークのボトムケースをトルクロッドで結び、TRACと呼ばれるブレーキがかかるとアンチノーズダイブ機能が働き圧縮側ダンパーを強める構造も付加されていた。

そしてホンダ独自のコムスターホイールも、インボード・ベンチレーテッドディスクブレーキと一体デザインされた、ブーメランタイプのスポーツコムスターホイールとなり、他にはないオリジナリティの強さをアピールする、いかにもホンダらしいパッケージとなったのだ。

その後にディスクブレーキも材質など著しく進化、
シンプルな構成が優位となりインボードは消えていった

ride-knowledge_114_04
ride-knowledge_114_05

VT250F 1982年

ride-knowledge_114_06

VF400F 1982年

ride-knowledge_114_07

CBX550F 1982年

ride-knowledge_114_08

MVX250F 1983年

伝説のバイクCB400フォアで人気の並んだエキゾーストを、1本クロスさせたXの取り回しが魅力のCBX400Fから採用されたインボード・ベンチレーテッドディスクブレーキ。
続いて2ストロークヤマハRZ250に4ストローク超高回転V型2気筒で対抗したVT250Fでも採用され、V型4気筒のVF400F、GPマシンNS500のレプリカとして登場した2スト3気筒のMVX250Fでも採用、そしてCBX400Fを拡大したCBX550Fではインボードディスクを2対組み込むなどのバリエーションも派生していった。

とはいえ、一気に多くのバイクで採用されていったディスクブレーキは、材質も鋳鉄並みに摩擦係数が優れた感性に馴染みやすい特性も得られるようになり、ホンダでも複雑な構成で重量も嵩張るためシンプルなディスクローターとキャリパーの組み合わせに置き換えられていくこととなった。

しかし、どのメーカーもトライしないような新しいメカニズムにチャレンジするホンダならではのこの姿勢に、世界中のファンが魅了されていたのは間違いのない事実。
そうしたホンダらしさに期待する声がいま大きくなりつつある。