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スロットルの遊び調整に学ぶ、怖々探らずに操作できる感覚【ライドナレッジ110】

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Shutterstock,DUCATI

スロットルの遊びは小さ過ぎると神経質で危険でもあるが
遊びが少し大きくても気にならないのはナゼ?

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高度なスポーツモデルでは、ワイヤー式だと開ける(上)側と閉める(下)側の両方ともアジャスターが装着されている。因みになぜスプリングで戻るスロットルに閉じ側の操作するのかといえば、高回転の吸気が超高速で冷却され凍りついて加速しっぱなしになるのを防ぐためだ

スロットルを捻って(開けて)から実際にエンジンが加速をはじめるまでの時間的なズレ(遅れとかラグ)、いわゆるスロットルを引っ張るワイヤーの引きシロ、その遊びの量が実はとても大事だ。

このスロットルの遊び、2~6mmなどとメーカーが指定しているが、正直2mmでは少ない。
ましてや遊びゼロに近い、全閉からちょっとでも捻るとスロットルが開いてしまう少なさは、回転が高くなるとレスポンスが過敏で、キャリアのないライダーには怖さが募るだけ。
路面が荒れていて、車体が揺れただけでスロットル操作に影響するようでは、キャリアがあっても乗りにくい。

お奨めの遊びは5mm程度。あまりに大き過ぎるのも良くないが、意外に気にならなかったりする……そこにはスロットル操作と人間の感性が”曖昧”だからこそのコツがあるからだ。

ところで最新のバイクでは実際のスロットルワイヤー(ケーブル)がない、電気信号で電子制御するスロットルバイワイヤーと呼ばれる方式も増えつつあるが、意味としては同じなので気にせず読み進めて頂きたい。

スロットルは徐々にスムーズな捻り方していない、
だいたい3段階くらいの大雑把に操作している

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スロットルは、そもそもスムーズに捻ることができないのを意識されたことがあるだろうか。
極端に表現すると、ギシッ、ギシッ、ギシッ、と捻る操作が段階的になる。
ハンドルという筒の上にスロットル・グリップの筒が被っていて、線や面で接してどうしても擦れる動作で途中の滑らかな動きとなりにくい。

操作するライダーのほうも、ハンドルをホールドしつつ、なのでやんわりスムーズは無理。カクッ、カクッと1/3、2/3の次が全開、もしくは1/4、1/2半開、それから全開と3段階、多くても4段階で中間的な位置でやんわりジワ~ッと次第に開けていくことはしていない。
そう、そもそもスロットル操作は大雑把なのだ。

そこに遊びがゼロに近かったり極端に小さいと、レスポンスが敏感だったりした経験から、怖々開けるハメに陥る。
その警戒心を薄める効果が、スロットルの遊びをやや多めに設定すると得られる。試しにアジャスターで遊びを5mmかもうちょっとある状態にしてみると、エンジンのレスポンスが鈍く嫌な感じになる人もいるかも知れないが、走ってみるとラフな操作で神経質にならない感性に気づくと思う。
これを確認してから次のお試しに進んでみよう。

実はスロットルはエンジン出力の調整を間接的にしかコントロールできず、
エンジンの回転域次第で鋭くも鈍くもできるのをまず理解しよう

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スロットル開度とエンジン回転域との関係は、ご存じとは思うものの一度整理しておこう。
たとえば大型バイクで2~3,000rpmの低回転域では、いきなり全開にしても突然ウイリーして飛び出すことは200パーセントあり得ず、モタモタと加速するまでタイムラグがあり、ジワ~ッとゆっくり徐々に加速がはじまる。

逆に6,000rpm以上だと、スロットル開度が数ミリと小さくてもギュ~ンッと勢い良く加速するし、8,000rpmとかだと瞬間に猛然とダッシュというかワープに近い状態と化す。怖い思いをするので、お試しになる必要はないが、容易に想像できると思う。

スロットルがどこを開け閉めしているかご存じだろうか?
キャブレターだとスロットルバルブのボディか、吸気通路でマニホールドの開口部を円盤で開け閉めするバタフライ。
インジェクションでもマニホールドの円盤バタフライで、いずれにしても吸気量をコントロールするという、右手が積極的に燃料を増やしたりするのではなく、吸気の吸い込む負圧に導かれて燃料との混合気を増加させる、間接的な仕組みを操作しているのだ。

この吸気通路の開け閉め、全閉から開けるとき吸い込む流速は回転が低ければ遅く、レスポンスは必然的に鈍い。
逆に回転が高ければ、ちょっと開けても流速が高く鋭いレスポンスとなり、そのままパワーカーブに沿った特性となる。
但し、ちょっと専門的になるが、中間的な回転域で狭い箇所を通過するので全閉からだと一瞬レスポンスがリーン(薄い)バーン(燃焼)で鋭いが、その後に開けると流速が下がるため鈍くなるという、扱いにくさが4気筒などにあるが、ここも繰り返し特性が瞬時に変わるのに慣れてしまい、一定以上の開度を最初から与えたほうが、鋭過ぎず鈍くもない、ちょうど良いつながり方へコントロールできたりする。

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この警戒して探りながら少しずつ開けるのをやめ、ある程度までガバッと捻ってしまう操作は、パワフルな大型バイクを必要以上に警戒する縛りから開放するので、操作が意外に段階的だったり大雑把であることを確認しておくのは大切なステップアップとなる。

さらにエンジンの単なるレスポンスの鋭い鈍いだけでなく、実はトラクションのきっかけアクションにも繋がってくるのだ。
エンジン→ドライブスプロケット→ドライブチェーン→スイングアームがアンチスクワットで路面方向へ押し付けられる、という一連の駆動力を伝達するプロセスで「ジワッ」と押す作用となって効果が大きくなる、という結果へ結びつけるトルクの増大する特性こそ、タイヤにとってジワッと撓んでグリップしやすい状態を整え、トラクションによる効率の高い旋回加速となる。

そうしたリスクを増やすのではなく、楽しめる醍醐味を味わうためのステップとして、スロットル操作の良い意味での曖昧さ、大雑把な感性を徐々に身につけていくのが上達への足がかりとなる。
スロットルの遊び、まずは5mmに調整してみよう!