タンデムツーリングするには、
ライダーに腕前が必要という高いハードルが……
旅は道連れ、行く先々の景色や食事を誰かと共有できれば楽しさは倍増する。
オートバイの解放感を満喫しながらのタンデムツーリング。
いつかしたいと思ってはみても、考えてしまうのは後ろに人を乗せられる技量というか、ライダーに自信がないと後ろに乗る人に不安が伝わるし……と躊躇しがちでなかなか実行しにくい。
いちばんの不安は、後ろに人を乗せると、オートバイの操作が重く鈍くなり、思うように操れないこと。
後ろに重量が増えるためフロントが軽くなり、街中の右左折からワインディングのカーブまで、曲がれるかどうかの不安がつきまとう緊張で、ライダーが疲れ果ててしまいそうだ。
二輪免許取得後、1年はタンデムできないが、キャリアを積めばタンデムする余裕ができるというものでもない。
そうした心配を完璧に覆すのが、BMWボクサー。
左右へシリンダーが突き出た水平対向のエンジンが、そもそもヤジロベエ効果でバランスをとってくれるのと、クランクシャフトより上に重く大きなモノが何もない、明確な低重心である違いが大きく、低速でもフラつかない。この安心感がタンデムしてもライダーに不安を与えないのだ。
しかもロール運動、つまり車体を傾けるリーンで、タンデムライダーの体重が加わっても重くならず、軽々と狙った走行ラインで走れる。
このライダーを不安に陥らせない決定的な違いは、ボクサーを知らない人には想像もつかないはず。
ボクサーという特殊なレイアウトがもたらす別世界がそこにあるのだ。
むしろタンデムしているほうが、
安定感とグリップ感が楽しいといえるほど!
BMWボクサーにはGSというアドベンチャー系の発端となったカテゴリーがあるのはご存じの通り。
そもそも砂漠を高速で突っ走る、パリダカール・ラリーでの活躍から生まれたジャンルだ。
鈍重でノンビリと旅するノスタルジックなイメージだった'80年代に、パリダカで人々を驚かせたボクサーは、実は第二次大戦のアフリカ戦線で戦車の先行偵察の軍用バイクとして大活躍をみせていた。
砂漠の砂地を高速で突っ走れるフットワークは、アメリカ陸軍もハーレーダビッドソンに水平対向のBMWコピーバイクを造らせたほど。
もっといえば、100年前の1923年にBMW初の量産車、R32が水平対向で縦置きクランクでシャフトドライブと、既に現在のレイアウトと同じ構成で、舗装路もなかった時代に誰よりも速く安心して走れると大好評で、瞬く間に成功を収めたというルーツがある。
それがいまだに多くのファンの心を掴み、ツーリングバイクというとBMWボクサー、しかもタンデムしているシーンが圧倒的に多いのがヨーロッパやアメリカだ。
それもそのはず、BMWはタンデムでの走行テストを、どんなシーンでも対応できるよう繰り返している。
2人ともリーンアウトだったり、極端なライディングも試す他では考えられない徹底ぶりだ。
R nineTでもボクサーの強みは変わらない
そんなボクサーも、OHVからSOHC、さらにはDOHCや水冷化と世代を進化させてきた。
その結果、最新世代はタンデムでの自由度がさらに高まり、快適さはオーナーでなければ語れないほど素晴らしいレベルにある。
ただ少し前のトラディショナルな雰囲気を醸す空冷世代も併行して残されている。
そのR nineTも、実はタンデムのしやすさを受け継いでいるのだ。
RIDE HIのYouTube、RIDE LECTUREシリーズ #046では、タンデムの経験が全くない女性ライダーが、ラクラクと走らせてしまえる容易さに驚く様子も収録されている。
タンデムが目的で購入するのもアリといえるこの圧倒的なポテンシャルの違い。
バイクライフの楽しさを拡げる可能性として、検討してみる価値は大きいと断言できる!