50レプリカのフルサイズからミニバイクレースを経てデフォルメフルサイズへ!

VR46カラーのTZR50……実はヨーロッパで1997年から2012年まで生産されていたイタリアのミナレリ製エンジンで、現地の2スト規制に合致(モペッド)した50ccは2.7PS(2kW)という仕様。
R1のルックスで前後17インチ、いわゆる原チャリ風なスケールではなくヤマハファンなら思わず身を乗り出しそうなフォルム。僅かに輸入されたがほぼ知られていない存在だ。
それはともかく、1990年にリリースされたTZR50は、50ccの車体サイズがフルサイズ仕様で初のフルカウルだった。前輪16インチに後輪17インチで前後ディスクブレーキを装備、自主規制上限の7.2PSのパワーと存在感ある仕様。



これを1993年にオフ系市販レーサーのYZ80からエンジンを移植、1軸バランサー駆動でクランクリードバルブ吸入、さらにはキック始動を廃しセルフスターターのみとなったTZR50Rの車名でモデルチェンジ。
実用性と本格派レプリカのスタイルもあって人気を呼び、1997年の最終仕様まで継続されていた。
エンジンは40mm×39.7mmのボア×ストロークで、7.2PS/10,000rpmと活気のあるトルキーな特性へチューン。
6速ミッションと乾燥で84kgの車重も相俟って、ツインチューブをバックボーンにアンダーループを加えたダブルクレードルとフレームも本格的。1,250mmのホイールベースのコーナリングも安定した走りで定評があった。



そのフルサイズモデルと併行して、1986年のYSR50で流行った前後12インチのデフォルメ・ミニレーサーも、TZR50のリリースで1994年に前後12インチの小径モデルにもエンジンを共有したTZM50Rが登場。
ホンダ勢が圧勝をはじめた状況を何とかしたかったヤマハは、TZR50Rでエンジンをランクアップしたのも、このミニバイクレースで優位となる開発意図が込められていたのだ。
世界チャンピオンに輝いた原田選手のレプリカ・カラーも限定で用意され注目を集めていた。



そうした日本だけの熱い闘いも1997年には終焉を迎えたが、実はこの残り火が何とヨーロッパへ飛び火したのだ。
冒頭のタイトル画像は、世界GP出場50周年を記念したペイントで、VR46(バレンティーノ・ロッシ選手)からお馴染みヤマハ純正にフランス・ヤマハのカラーリングまで様々が5年にわたり展開された。
2スト規制で僅か2.7PSだが、タンデム可能な前後17インチホイール、1,341mmのホイールベースに装備で128kgの車重が主なスペック。




ヤマハのYSRに触発され、ホンダが同じ12インチホイールの水冷2ストNSR50を1987年にリリース、後にヤマハも水冷化してTZM50Rで対抗して盛り上がった50ccレプリカ・ミニバイクの歴史と共に、熱い闘いが繰り広げられたこのカテゴリーに、多くの思い出を残したライダーにとって忘れられない50レプリカに違いない。