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2気筒は270°が主流!【ライドナレッジ037】

2気筒の楽しさを引きだすには Part1|RIDE LECTURE 033|RIDE HI

いつの間にか不等間隔爆発ばかり

270°とか不等間隔爆発とか、最近よく聞いたり見たりするこの専門用語、メカに強くないファンには何のことやらかも知れない。しかし最新のエンジンは、この270°とか不等間隔爆発がいわばトレンド。それは他と何が違ってどんなメリットがあるのか、この機会にわかりやすくカンタンに説明してみよう。

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スポーツバイクのエンジンには、2気筒とか3気筒に4気筒と様々な種類がある。ただ今回のテーマである不等間隔爆発を説明するのに、わかりやすさからまず2気筒についてだけでハナシを進めていこう。
その2気筒も、並列2気筒、水平対向2気筒、V型2気筒などピストンが往復するシリンダー(気筒)の配置で色々なカタチをしている。
その中で最もオーソドックスな構成が並列2気筒だ。たとえばカワサキのW800は、吸気・圧縮・爆発・排気の4行程をクランクシャフト2回転でひとつのサイクルとしている。そして振動や駆動をスムーズにするため、ふたつの単気筒エンジンを左右で交互に爆発となる組み合わせで合体させているのだ。

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次にお見せしているのがドゥカティのスクランブラーで、ふたつのシリンダーが並ばずに90°のV字の角度で配置されている。これがV型エンジンと呼ばれるカタチで、ドゥカティは90°で前シリンダーが水平に近いことからLツインとも呼ばれている。最大の特徴は単気筒のクランクにピストンをふたつ組み込んでいることだ。これでスリムなエンジン幅とできる。ただこの角度だと振動は偶力で打ち消されるが、爆発のタイミングがかなり不揃いになってしまう。 ところがこの爆発間隔が狭いタイミングと暫く爆発がない広い間隔とが、後輪が路面を蹴るグリップ力を増大させるのだ。
それはMotoGPのようなロードレースから、パリダカールの砂漠地帯までその差が明確で、何とバランスの良かった並列2気筒をクランクピンの位置を敢えてズラし、90°Lツインと同じ不等間隔爆発に設定するバイクが激増、いまやこの270°位相の2気筒が主流になってきた。

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高めの回転域でスロットル開度を小さく微妙に操作するのは昔の乗り方!

この爆発間隔が広さが路面を蹴る効果で脚光を浴びたのが1990年代へ入ってから。クランク位相で後輪が路面を力強く蹴るのが実感できることから、エンジン特性も当然もっと回転の低い、つまり爆発間隔が広い領域が重視されるようになってきた。
それは2気筒のみならず、4気筒でも工夫されるようになり、最新のレーシングマシンからロードスポーツまで不等間隔爆発のエンジンだらけになっている。ということでそのメリットをうまく利用するためにも、コーナーが多い箇所ではエンジン回転を下げスロットルを大きめに捻って、後輪を路面に押しつけながら曲がっていく乗り方を身につけたい。いきなりスリップするリスクも減り、トラクションの醍醐味を味わえるこの新しい走り方を、愛車から引きだしていないライダーがまだまだ圧倒的多数なのだ。