自分のミスではないアクシデントで運命を分ける空気圧!
タイヤの空気圧は大事……わかっちゃいるけど、つい面倒でチェックが疎かになりがち。
しかし脅かすワケではないけれど、実は空気圧が適正に保たれていないと、しなくても良い転倒や怪我などしかねない、そこまで重要な役割を担っていることを、この機会にぜひ再認識しておこう!
サーキットでタイムアタックしたり、峠をガンガン攻めたりするライダーには、空気圧は確かにパフォーマンスの鍵を握る大事な要素かも知れない。
しかし街乗りやツーリングも先を急がないアベレージなら、空気圧なんて極端なコトいうと入ってりゃイイじゃん的にしか思ってないのが正直なトコロだろう。
だが、路地からいきなり軽トラックが飛び出してきて急ブレーキ!とか、予期せぬアクシデントはどれだけ自分が気をつけていても、何かしら運慶的な遭遇はあるもの。
そんなとき空気圧が適正であれば助かったものを、スリップしたり止まれなかったり……
滅多に転倒なんてしないから、ヘルメットは被らなくても大丈夫とはならないのと、タイヤの空気圧はいわば同じレベル。転ばぬ先の杖を、普段からアタマに入れているか否かはジョーダン抜きに大事なのはいうまでもない。
低すぎることの多い空気圧、
でもまだ大丈夫と思いがち!
空気圧で問題になるのは、徐々に抜けていくのでチェックせず、放置で低すぎたまま走っているケース。
ココで載せている画像のタイヤは、すべて適正圧。エッ、なのにこんなに凹んでいるの?と思われたかも知れない。
最新のラジアルタイヤは、カーカスという内部の繊維構造がしなやかで、こうした変形をしながら適度な荷重に耐える強さというか剛性もあってシッカリ踏ん張れる、魔法のような仕事をしてくれる。
ただ勘違いしやすいのが、凹んだほうが接地面積が増えてグリップできる……空気圧は低めでも、良いほうに働くワケで多少低いままでも問題ないはず、そう思いがち。
しかし低いにも限度がある。イチバン最悪なのが0.5kgf/㎠以下。これだと路面の穴にウッカリ突っ込んで落ちたり、何かの段差にぶつかるように乗り越えようとしたときなど、タイヤが簡単に潰れて衝撃を吸収できず、ホイールのリムを曲げてしまう可能性がある。
ほとんどがチューブレスタイヤなので、この瞬間に空気圧はゼロになる。
前輪なら100パーセント転倒、後輪でも左右に大きく振れるかタイヤが絡まってライダーが放り出される。
そこまで低すぎることはさすがになさそう……ラジアル構造だと違和感なしに走ってしまうので、そうともいえない。プロでないと気づかないのだ。
ではフツーに空気圧が低いと、どんな不都合が生じるのかを整理していこう。
空気圧が低い、そうなるとタイヤが凹む、それは路面に接しているトレッドの接地面積が増える。
ところが低すぎると、トレッドはボールのように球面をしているので、凹みすぎると内側へ向かって逆の球面が生じてしまう。空気の抜けたバスケットボールを想像すればわかるはず。
これは凹んだ面積が多く見えるけれど、中央部分が路面から浮き気味で、実質的に接地面積は減ってしまう。
それだけではない。空気圧が低過ぎると、反発力が弱すぎて凸凹な表面に路面追従できないため、グリップできずススーッと簡単に滑ってしまう。
サスペンションと同じで、適度に追従(上下に動きながら)吸収や減衰を繰り返していないと機能しないのだ。
低い空気圧だと細かいピッチ、とくに大きなウネリの中に小さな上下動も含まれる振動状態に追いつけず、何ともだらしなく滑りはじめる。
どんなに柔らかいコンパウンドでも、踏ん張ってくれないカーカス構造では路面へ押し付ける圧力も弱く、路面を掴む粘着力など発揮できない。
1ヶ月で20%も空気圧が下がることも!
それではどのくらいが低めの許容範囲なのだろうか。
1kgf/㎠(およそ100kPa)くらいあれば、抵抗は大きいけれど何とか通常の回転には耐えられる。ただ高速では危険だと思ったほうが良い。
大型バイクだと、1.6kgを下回ると腰がなくグリップ落ちると考えておこう。
もちろん、それぞれ車種によって指定圧があり、チェーンケースなどに記載されているのでこれに従うこと。
そしてこの空気圧、どこも問題なくてもチューブレスのシール性に限度があるため、1ヶ月に10%ほど抜けていくのがフツーだ。
条件によっては1週間で10%、1ヶ月で20%下がることもある。
とくに前輪は細いのでエアボリュームが少なく、抜けていくピッチも速いので小まめにチェックしたい。
というワケで、愛車の傍らにはエアポンプとエアゲージを常備したいところ。
携帯に便利なペンシルタイプなど、ツーリングの出先でもチェックできるよう持ち歩いたほうが安心だ。